平均律・純正律・どっちでもない第3の方法?_説明編_その3

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サックス四重奏でハモ研 on J.S.Bach その3

連載の第3回目です。

ハモり続けたい。演奏中ずっと。
平均律で調律された楽器はハモれません。
ちょっとズラすとハモれるポイントがあります。
管弦楽器や声楽ならハモれます。

純正律って調律法で演奏すれば、なんとなくハモれる気がしますが、実際はそんなこたない。

その調律には、どうにもハモれない和音も沢山含まれます。
曲中で転調すると転調先次第では壊滅的に気持悪くなったりもします。

じゃぁ、どうせいっちゅうんじゃい?

方法を模索し実証実験を重ねてます。
バッハのコラールを題材にサックス四重奏で。

今回最初にあげた動画はバッハの賛美歌集の6曲目。
リモート録音の四重奏で、
平均律 vs 純正律 vs「第3の方法」の聴き比べ。

 動画中譜面の静止画を本編お尻に付けときます。
 興味ある方は御覧くださいませ。

「第3の方法」
なぜそんなことになるのかを説明するのが本シリーズ。
ジワジワと核心に迫ってまいります。

さて、
前回は「レ~ラ・レ~ファ問題」とトリアエズな解決法に触れました。
今回は「歯抜けな2つの音程を特定する」がテーマです。

「歯抜けな2音」?…なんのことを言ってるかピンと来ない方は、ぜひ前回・前々回を御覧くださいませ↓

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見つけたい2音とは…

歯抜けな2音とは、純正律の長短音階には登場しない「C#/Db と F#/Gb」のことです。
それらの高さを特定しないと 12半音階が完成せず、その2音が必要な時に不便ですから確からしい音程を見つけたいものです。

 ※本稿ではあくまでも C をトーナルセンターとして説明を進めるので「C#/Db・F#/Gb」を対象音としますが、あらゆるキーに説明を一般化するなら「#Ⅰ/bⅡ・#Ⅳ/bⅤ」あるいは移動ド的に言えば「ド♯/レ♭・ファ♯/ソ♭」が対象音です。以降の説明は便宜上「ハ調に於いてのC#/Db・F#/Gb」として読み進めてくださいませ。

なぜ歯抜けなのか

歯抜けな2音の音程特定に進む前にちょいとオサライ。
なぜ、その2音が「見つけたい歯抜けな音」となったかを整理します。

※詳しくは本シリーズ「その2」を御参照ください。ここでは簡潔に…

・基音C を基に完全5度上の G と完全5度下の F の音高は、
自然倍音列の早期_第2&3次_に登場する音程から純正音高が確定されます。

・それらをルートとした純正音程(倍音列の早期に登場する音程)での長三和音・短三和音から、
D, E, B, A, Eb, Bb, Ab の純正音高も確定します。
その導きだしに使う長3度音程は倍音列の第4&5次に在る音程に、
短3度音程は第5&6次に依拠します。

・そこまでに登場しないのが C#/Db と F#/Gb というわけ。

その2音の高さは、そこまでに確定された諸音との協和的音程関係から導き出されるが、どの音との協和関係を基にするかで結果の数値は変わります。

つまり答は1つではない。
複数ある可能性を今回は連ねて聴き比べようというわけです。

実際の演奏では楽曲の前後関係により、どの方法を選ぶのが最適かが変わります。
前後の和声に用いられた音高と「繋がりの違和感」が無いような選択が求められます。

前後に「共通音」がある時や、ある声部に完全音程での旋律的動きがある時などに違和感は感じやすいので、選択の手がかりになります。
なので、
複数の可能性について根拠を理解し整理しておくと佳い選択に繋がるでしょう。

では、不確かな2音の置き場探しの旅を始めましょう♪

C# あるいは F# を含む三和音

そこでまず、C# あるいは F# を含む三和音で、
それぞれ他の2音は Cメイジャーのダイアトニックであるようなもの
を観察します。

「ダイアトニックであるような」とは、、、

本連載はずっと「C」をトーナルセンター
 (=調の中心音=和声や音階のピッチ関係が依って立つ倍音列の基音)
として話を進めてます。
そこで
とりあえず 純正律の Cメイジャー に含まれる音高を「確かな音程」と仮定し、
それを2つ含む三和音なら、純正律のCメイジャーの「ほぼその中に居る」と言えるでしょう。
その上で「もう一つの音」として C# ないし F# の音程を特定しよう、
と進めてみます。

ちなみに
「メイジャーの音階にダイアトニック」
とは
「臨時記号が付いてない」とも言えます、調号が正しく付けられてる限りは。

※「ダイアトニック」
という言葉の意味をギリシャ語の語源から説明しようとすると、それだけで1ページ書けちゃいます。
それは別の機会に譲るとしてここでは、
「ある音楽がその時点で依って立つ軸となる音階の各音に一致してること」
を「ダイアトニックである」と呼ぶことにします。
機能和声的価値観では、いわゆる長音階(=旋律的長音階・ドレミファソラシド)と一致することのみをダイアトニックと呼ぶ歴史的用法が主ですが、それだと現在の様々な現象を説明するのに余りに不便なので、意味合いを拡張して使うことにします。

さて、

ここでは減三和音・増三和音は考慮対象にしません。
基音と5音が 完全5度 となる長短三和音なら、
その2音の音程(=2音間の距離)は倍音列の仕組によって確定的ですが、
減増三和音の場合は、
基音と5度音の音程の確かな拠り所を倍音列には求められず、
甚だ不確か(=可能性が多岐に亘る)ですから。

では具体的な例を見てみましょう。

※ 数値の単位はセント。小数点以下は四捨五入。小数点以下を扱うと筆者のオツムがパンクするので。


純正律どおりの ラ -16 と ミ -14 を基準として純正な長3度を配置すると ド♯ は -30 になります。
かなり低いですね。

純正律の レ +4 を基準とすると、その純正長3度上 ファ♯は -10。
自然倍音列に登場する ファ♯とは言い難い -49 よりは遙かに実用的ですね。

純正な完全5度のラ +6 も少し明るめな高さで実用性は良好です。
というかむしろ、下属和音に於ける純正の -16 よりも普通に聞こえます。
すぐ下の ソ +2 との長2度の関係も旋律的にベターです。
ちゃんと全音に聞こえるので。

+6 の ラ を基準に純正な長三和音を組んでみました。
-8 のド♯は -30 のと比べると実用性高いですね。
+8 のミは前後関係次第では高く感じるでしょう。

純正律どおりの ラ -16 を基準に Dメイジャーの長三和音を組みました。
ファ♯ も レ もだいぶ低くなります。
ですがこの -18 の レ は前後関係次第で ラ -16 が大切な場面では覚えておくべきピッチ操作となりそうです。

純正律の シ -12 レ +4 を基準に短3和音を組みました。
 ②に登場するのと同じ  ファ♯ -10 が得られます。
これと②を組み合わせると Bm7という四和音ができます。
ラとシの長2度が平均律よりも 18セント狭いですが、さほど気にならず実用となる「全てハモったマイナーセブンスコード」と言えるでしょう。

さらに③と組み合わせると Bm9(11) となります。
シ~ミ の完全4度が20セント狭い以外はよくハモります。

※そういった、どうしても生まれてしまう不協和=ウナリ、それがジャズの世界では「リッチ」と評価される出来事ではあるのでしょう。



これは、ダイアトニックな2音を含むという条件からは外れますが…、
2種のラを基準に F#m という短三和音を組みました。
この2段目と③を組み合わせると F#-7 が、
 ②と組み合わせれば D△7 が出来上がり、どちらも実用的な範疇ですね。
更に③とも組み合わせて D△7(9) としても、テッペンの ミ と根音の レ との長2度は平均律より 4セント広いので全音の音程として良好なので実用的でしょう。

では実際に音を聴いて比べてみましょう。
比較し易いよう↓こんな風に順番を変えました。

クラリネットだと↓こんな風に聞こえます。

1.1
1.2
1.3
1.4
1.5
1.6
1.7
1.8
1.9
1.10
1.11

フルートだとこんな感じです。
ゾロっと長い譜例の下に音声をあげます。
ビブラート深く吹いてしまったので違いが判りにくくてすみません^_^;

Db あるいは Gb を含む長短三和音

ここでも「他の2音は Cマイナーのダイアトニックであるような三和音」を探します。

その場合「減和音・増和音」も登場しますが触れないでおきます。
それらの1度と5度の音程関係_減5度・増5度_は、倍音列に依拠する「確かさ」が希薄なので、結果の評価_うまくハモったかどうか_にも確かさを定めにくいからです。


純正律の ファ -2 と ラ♭ +14 を基準に長三和音 Dbメイジャー を作るべく レ♭ を純正に配置すると +12。少し高いですが実用的な範疇ですね。

 ①で見つけた レ♭ +12 の純正短3度下に シ♭ -4 を配置して短三和音 Bbm。
この Bb の音程は実用的ですね。

純正律の シ♭ +18 を基準に短三和音を積み上げると、、あと2つの音は実用と思えない高さ。

 ③で見つけた レ♭ +34 と ファ +20 を使って長三和音を作ると、全体的にだいぶ高くて実用的とは思えません。

純正律の ミ♭ +16 と シ♭ +18 を基準に短三和音 Ebm を作るべく ソ♭ を純正に配置すると +32。
これはだいぶ高いが♭Ⅴあるいは♯Ⅳの音の振る舞い方としては充分に問題無く在りうるピッチ。

これはオマケですが、⑤での ミ♭ +16 と ソ♭ +32 の下に ド♭を ミ♭の純正長3度下として配置すると +20。ぎりぎり実用範疇か、、
とはいえやはり和音全体としてはだいぶ高い。


※ このクダリでの「高すぎる音達」は、普通の純正短3度(幅が +16)でなく、
「狭い短3度(幅が -33)」を使えばだいぶ補正されそうですが、煩雑を避ける為ここでは触れず、のちの説明にとっておきます。


これも音で聴いてみましょう。
ここでも比較し易いように順番を変えますね。

2.1
2.2
2.3
2.4
2.5
2.6

フルートだとこんな感じ。
長い譜面の下に音を挙げます。
相変わらずビブラート深過ぎますが m(_ _)m

「歯抜けの2音」は異邦人

整理します。ここまでに登場した「F#/Gb、C#/Db」の音程の可能性は…

というわけで C#/Db と F#/Gb の音高を、純正な長短調に属する音高との協和関係から求めようとすると不具合が起こりやすいのが判りました。

 ↑の譜例での「黒文字」のピッチを採用した時には、それに対しての完全協和音程達は実用的範疇になりますが。

なのでそれらについては
「転旋・転調を強く示唆する音」
と解釈するのがよいのでしょう

転旋・転調とは、
ある音楽の和声や音階に含まれる音高群、その厳密なピッチが
「ある倍音列に依拠している」とすると、
「拠り所を別の倍音列に乗り換えること」
とも言えます。

つまり、
例えばハ長調の曲に C#/Db ないし F#/Gb が出てくると、
 ・その音が鳴っている最中
や、
 ・その直後
については、
「この音楽は今、ハ調ではない別のキーに属しているぞ」
=「今、C では無い音を基音とする倍音列に依拠した音組織の中に居るぞ」
というメッセージを孕むってことです。
つまり、
その2音が鳴ると、依拠する倍音列の基音が Cから別の音に移動するわけです。

そういった出来事が人の心にもたらす作用、
それが転調・転旋の本質なのでしょう。

というわけで C#/Db・F#/Gb が登場したら、
新たなキーの主音(依拠する倍音列の基音)をピッチ+-0に設定し、
そのキーの中で相応しい音程を見つけるのが佳いのでしょう。

なぜならば、
平均律に慣れた耳には
純正律ラ(Ⅵ)の -16 が既にかなり低く感じられるわけで、
それを越えて平均律から大きくズレないような音程を見つける方法を見つける
のが実演上はベターだからです。

勿論その2音以外でも「臨時記号の付く音」の「いずれにも」同じ配慮をできそうです。

純正律に既に確定的に見つけられる音程についても、
音楽的文脈の前後関係によって、主音が移動してる場合には
新たな主音に基づいて音程を求められるからです。

その点はまた後で詳しく、
 ・一時転調と一瞬の転調
 ・長調はスリートニックシステム
といった話に絡めて書こうと思います。

複雑な考慮の必要な和音については、そのルート(1度)を
 「とにかく平均律のピッチに合わせてしまえ!」
という考え方も有り得ます。

ですがそれだと「同じ音なのにピッチを変える」という出来事が、隣り合ったコードコード同士間で頻出して、演奏してても聴いてても奇妙に感じるはずです。

ちなみに、ヤマハのハーモニーディレクターは調選択自動モードにしてると、そういうことになります。
ローランドの KH-100 Justy だと、そのモードしかないのが少し残念です。
↓いちばん下へ機種情報へのリンク貼りました。

そういった「奇妙」はなるたけ避けて、音楽的文脈での響きの繋がりは切りたくないものと筆者は感じてます。

ピッチに複数の選択肢がある場合、前後の和声や旋律に含まれる共通音や隣接音の高さ関係が、奇妙に聞こえないようにするのが大切なのだと思います。
その点も追い々々、実践編にて触れる予定です。

「レ~ラ・レ~ファ問題」の解決を軽く深追い

軽いんだか深いんだか、、(笑

さて、ここで話を「レ~ラ・レ~ファ問題」に戻します。
長調のダイアトニックに含まれる Ⅱm と Ⅶº について、その問題をインスタントに解決する調整可能性を並べます。
いずれも「たった1つの正解」ではなく「選択の可能性」ですけどね。


レ +4 を基準に純正短三和音を作った場合。
ラ +6 は良好だが、ファ +20はだいぶ高い。


ラ -16 を基準に下に向かって純正短三和音を構成。
ファは当然に純正律どおり -2、レの -18 はだいぶ低め。


シ -12 を基準に減三和音。
レは純正律どおりに +4 だが、ファ +20 はだいぶ高い。


ファ -2 を基準に下に向かって減三和音。
レ -18 はだいぶ低く、シ -34 は猛烈に低い。

、、、八方丸く収まるってぇのは難しいものですね。

ファ +20 はかなり高く、シ -34 は猛烈に低い。それは、
平均律より 16セント広い純正短3度を使った結果だが、
より狭い短3度(平均律より 33セント狭い)を使う可能性もあります。
その点は後に属七和音の考察にてより詳しく触れます。

さて、これらも音で聴いてみましょう。

なお、ここでは三和音のみ並べましたが、
レ~ラ・レ~ファを含む四和音(あるいはそれ以上の)、つまり
「ファラドミ」「レファラド」「ソシレファ」「シレファラ」
では、
より複雑に不協和の解決を考える必要が生まれます。
その点も属七和音の項目を経てからの研究とします。

さて、その他のダイアトニックな三和音では…

前回「その2」含め、ここまでに出て来た
Ⅰ(m)・Ⅳ(m)・Ⅴ(m)・Ⅱm ・Ⅶº
それ以外の、純正律の長調と短調に内在される三和音 についても観察しておきましょう。

Ⅱº と bⅦ では「レ~ファ」問題が起きます。
それ以外の長短三和音ではいずれも、完全5度も各3度も、基音(root)との間に純正音程が成立します。
平均律から 18セントずれる箇所は、前後の文脈次第では少し耳に障りますが。

それらの純正的調整例も図示しつつ音を聴いてみましょう。

次回予告

さて、ここで少し寄り道します。
「もしや打開策がココにあるのでは?」との直感を検証します。

短調の純正律のⅣ度の和音での音程関係に、長調の「レ~ラ」問題解決に活かせるネタが在りやしないだろうか? とモヤモヤ閃いたので…。

自然短音階は、旋、、、、、

~*~*~*~*~*~*~*~*~

今回はここまでにしておきます。
冒頭動画の種明かしまで辿り着けずスミマセン (^_^;
次回は少し寄り道をしつつも、属七和音とその他四和音についての考察を書く…予定は未定っ♪

そうそう、冒頭の動画で使った譜面の静止画像を↓に貼っておきますね。
平均律のはタダの譜面なので、純正律と「第3の方法」のを。

〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜

うわ!ハーモニーディレクターって、こんなに安くなったのね!!!
しかも iOS でリモコン操作可能だと?!、、ローランドに真っ向勝負なわけね、、
ローランドは iPad専用だけど iPhone でも使えるとすると強敵現る!だな。
気になる「調律プリセット ⇔ キー自動選択」機能が退化してやしないかが気になる、、

↓ローランドの Justy HK-100。
iPad からのリモコン操作と低価格を実現してヤマハの牙城を崩した名作。
調律をロックしての演奏が出来ないのだけが残念。
ヤマハの新機種が2万円の差でそのアドヴァンテージを訴求できるか、そこが勝負どころなのでしょうな。。

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