そこはノドですか?管楽器奏法の話

「ノドをよく使ってますよね?」
よくそう訊かれます。
「使ってませんよ、ノドは」
って答えます。

音色や音高調整の話をする時、
「ノドを使って…」
とよく耳にする。その度に
「ノドってどこのことをそう呼んでる?」
って疑問に思ってます。

医学的には?

医学的な言葉としては「喉」って、どこからどこだろう?
ググってみた。
検索子「喉とは」~画像検索

喉とは - Google 検索

沢山の図解と説明へのリンクが出て来ますね。
ノドとは医学的には 
「咽頭と喉頭のこと」
で、空気と食べ物を通す箇所のこと、だそうです。

咽頭は鼻の奥から食道&気管を繋ぐ、筋肉と粘膜でできた約13cmの「管」。
3つの部分に分けられ、
上咽頭は鼻腔の奥の部分。鼻からの空気を通す。

中咽頭は鼻腔の更に奥から、軟口蓋(口の奥の柔らかい天井)、口蓋垂(のどちんこ)、口の奥の突き当たりの壁、口蓋扁桃、そして舌根の辺りに至る部分。
食物と空気の両方が通る。
食べ物が口から入ると軟口蓋はせり上がり鼻に食物が入るのを防ぐ。

☆後日注記 _ 2020/05/06
「舌根」という言葉__
舌根とは「舌の一番奥の辺り」と思ってよいようです。
より詳しそうな説明だと「舌の後方 1/3」とも呼ぶようですね。
口腔底部の広い面積から鮑(アワビ)のように生えてるので、その一帯を舌根と呼ぶのでは?とも思えるが、どうやらそうではないようですね。
判りやすそうな図解リンクを2つ挙げておきます。
https://www.jda.or.jp/park/function/index03.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/52/5/52_5_320/_pdf
☆☆ 追記ここまで ☆☆

下咽頭は、舌根部から、喉頭蓋を経て、声門の辺りより少し下、食道と気管の入り口辺りまでを指す。
食物と空気の両方が通る。
食べ物が通過しようとすると口蓋垂が気管に蓋をし、食物の気管流入を防ぐ。

次に、
喉頭は、咽頭と気管を結ぶ箇所で、喉仏の周辺。
空気の通り道。
咽頭を通過してきた食物と空気を分けて、空気のみを気管に導く(誤嚥を防ぐ)のが喉頭蓋。
そのすぐ下に声門。声門は硬めの筋状の声帯と、その周囲をとります柔らかめの借り声帯から成ります。
その先に気管。

喉頭は更に2つに分けられる。
声門上部は、喉頭蓋から声門まで。
声門下部は、声門から気管の入り口まで。

それより表側は口腔。簡単に言えば「口の中」のこと。

は、前方2/3 の動かせる部分を「舌可動部=舌体」、後方1/3 を「舌根」と呼ぶ。

口腔の天井は、歯茎から連続する硬めの部分を硬口蓋、その後ろの柔らかい部分を軟口蓋と呼び分ける。

硬口蓋の骨格に裏付けられた歯茎から上歯、顎の骨格に裏付けられた歯茎から下歯。

それらを経て、上口唇・下口唇に至る、そこまでを口腔と呼ぶ。

いわゆるノドにあたるのは咽頭・喉頭で、それとは別の箇所として口腔(口の中)は呼び分けられるようです。

それが医学用語としての「喉」ですが、一般的な認識とほぼ一致してると思います。
ノドは喉で、クチは口腔のこと。
その「認識の一致」はとても大切なことなのかと。

各部位の操作可能性と効果

舌の上面の位置と全体の形は母音(アイウエオ)を特定します。
容積だけでなく形状と相まってアイウエオ、つまり倍音の含まれ方を決めるわけですね。
口笛なら音高を特定します。 

舌の操作は、幼児からの言語習得と共に大抵の人は習熟していて、容易に操作可能です。
使用言語により、なかなか真似の出来ない動きなど生ずるものではありますが。
それは聴覚にも同様で、使用言語により聴き取れる子音の種類は変わるようです。

おっと、話が逸れました。本筋に戻しますね。

舌根の位置は喉頭蓋(喉仏あたり)の位置に追随し、上下方向に操作可能です。
つまり、喉仏を降ろせば中咽頭の容積が増えます。
その変化は声の「響きの質」には反映します。
母音特定(=倍音の含まれ方の操作)には殆ど関わりません。

軟口蓋は中咽頭の一部とされます。
大抵は不随意的に食物を呑み込むときに動きますが、声楽の訓練を経た者ならば随意的に動かせます。
その操作も響きの質に影響しますが、母音特定には殆ど貢献しません。

上咽頭も同じく随意的に動かせるようになる、、かもしれませんが、筆者自身は実感に乏しいのでレントゲンを撮ってみないと判らない所です。

下咽頭は随意的操作をできる実感は不明です。

喉頭は、しっかりした軟骨群にかこまれ、息の通り道の太さは簡単には変えられません。
とはいえ、声帯の開閉は微妙に楽器の演奏に活かされることはあります。
フルートの「速い」ビブラートは声帯の半端な開閉が利用されます。
管楽器の発音中に声帯の振動を起こせば、重音的ウナリが起きます。
グロウルと呼ばれる奏法に活かされますよね。

楽器の音への反映

演奏中の音色に大きく影響するのは「母音特定の作用」なのではないか、と筆者は思ってます。

容易に位置と形を変えられるのは舌です。
母音特定のみならず、呼気圧と口腔内容積とのバランスにより呼気速度にも反映します。
それは「楽器で発音しやすい音域と音色」に影響します。

上述の「なんとか随意的に動かせる可能性が無くはない」部位の操作、つまり医学的に言えば喉の操作は「響きの質」にという程度の小さな影響はあっても、音色の変化にはあまり影響しないと思われます。

ノドと言うよりは…

多くの人が音色に影響するとしてノドと呼んでるのは舌の事ではないか、と思うわけです。

しいていえば、喉仏の位置に伴って動く舌根の位置は仲間に入れてあげてもよいかも。
微妙に「響き」に影響するが、音色・音高に大きく影響はしませんが。 

逆に、
「頬を膨らませる」
こそ、大事な音色変化の操作としてカウントすべきとは思います。
口腔の形と容積を大きく変化させられ、音色と響きへの影響も大きい。

「ホッペタふくらませたらダメだよ」
とよく耳にしますが、なぜダメなのでしょうか?
その点、明瞭な回答をなかなか目にしません。
求める音色を得る方法として有用ならば、練習して精妙な操作を身に付けてよいと思ってます。

更に、
オモテからも見えることで音色などに大きく影響する要素は 
「上下の歯の先端同士の距離」
これは顎を動かす関係諸器官の操作で実現できますね。
それと、 
「発音体に触れる唇の厚さと柔らかさ・硬さ」
それらも随意的に操作可能です。

というわけで、
多くの人が「ノドで」と言ってる出来事は殆どが、
「口腔の容積と形状の操作」
つまり、
「舌あるいは唇周辺、しいていえばホッペタ」
の操作なのだろうと思ってます。

まぁ、「ノドで」と言えばソウイウコトナノダという共通認識を広められるなら「ノドで」と言ってよいとは思ってます。

ですが現状(冒頭に書いた「一般との認識の一致」に依る)では、初心者に「頑張って!ノドで、だよ!!」と言うと、、、
一生懸命に喉をなんとか動かそうとするのに出来やしない、私はやっぱり才能無いのかも、、
という不幸に繋がりかねないので、特に指導的立場の人なら一考してもよいのだろうな、と思います。

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