タンギングのスピードアップはトゥトゥトゥだと…

「トゥトゥトゥトゥって結構速く言えるのに、楽器のタンギングは遅いってなぜ?」
よく耳にしますよね。
タンギング、速くしたいですよね。
実は「トゥトゥトゥ」ではスピードアップはできませんぜって話です。

最初に、、必ず個人差はあります。
 ・体格(舌、口腔周辺の)
 ・感覚と理解
 ・その伝達表現の結果
なので、以下に書くことは「たった1つの絶対的な答」と思わないで下さい。
筆者の身体と、講師生活30年で見て来た生徒達、それらの観察からの研究結果です。

と、この話はサックス向きです。
クラリネットとでは少し、フルートではだいぶ事情が変わります。

さて本題。
トゥ・ドゥ・ヌ・ル(RでなくL)
 (トゥでは堅いぞって時にドゥ・ヌ・ルを試してねってよく言われますよね)
と言う時、舌の先端は上の歯の裏側~歯茎の中間辺りに触れますよね。
その動作をする時、舌の先端辺りは「上下運動」となります。

サックスのタンギングはリードの振動を
 ・止めたり
 ・止めた状態から解放したり
あるいは、
 ・止めないまでも抑制したり
 ・その状態から解放したり
です。

まずロングトーンをします。
舌をリードの先端に触れれば、振動は止まります。
さて、止まったとしても、
呼気を押し出し続けようとする呼吸関連諸機関の圧力を保ち、アンブシュアも変えずに居るなら、
舌を離した途端にリードは振動を始めます。

その無音状態の時の身体操作を「吹き始め」に作れるなら、明瞭なアインザッツ(言葉の喋り始め)となります。

「止める」がある程度以上の長さをもち、そののちに解放、その後また止める、また解放する…
 (上記の無音状態の時の身体操作を保ちながら)
…と繰りかえすと、スタッカートの連続となります。

「止める」が「一瞬」で、一瞬とは言え音圧ゼロになる瞬間がある、それを繰りかえすならマルカートとなります。

「抑制」がある程度以上の長さをもち、そののち解放、また抑制、また解放…
を繰りかえすなら、ハーフタンギングの On/Off をゆったり往復してることになります。

「抑制」が一瞬で、その一瞬に音圧がゼロまでは落ちない、それを繰りかえすとレガートとなります。


 ※ 誤解しやすい言葉「テヌート」は音符の音価を充分に満たすだけ音の「長さ」を作ること。レガートとは似て非なる言葉。
 音符が間に休符を挟まずに連続してる場合「テヌートかつマルカート」とか「テヌートかつレガート」という感じに使う言葉ですね。
 と、
 スラーとレガートも混同しやすい言葉ですね。
 この2つは、演奏表現のスタイルにより・いずれの楽器奏法と結びつけるか・スラー記号をどういう気持で使うか、、などなどにより解釈は多岐にわたるので、そのうち稿を改めますね。
 

そういったアーティキュレイションの原則を、直接に撮影した動画↓
ちょっとグロくて御免なさい(^_^;

さて、そういったタンギング操作をしてる間、貴方の「舌の先端」はどこにありますか?
多くの場合、下の歯の後ろあたりにブランとしてるはずです。

例外はあります。
特に舌の短い人の場合、舌の先端はそこまで届かず、舌の先端あたりがリードの先端辺りにやっと届くというケースもあります。
なので、上に「多くの場合」と書きました。

そこまで短い人だと、いわゆる舌っ足らずという子音発語になる場合と、長い人が行ってる子音時の舌操作とは異なる操作で、舌っ足らずには「聞こえさせない」発語を実現してる場合があります。
とはいえ、そこまで舌の短い人は、今まで100数十の生徒のうち数名でした。

サックスの場合、トゥの類の「舌先端の上下運動」をすると、舌先端辺りはリードの「面」に触れます。(口の中にけっこう深く咥え込みますから)
すると「止める」のに時間がかかり、明瞭ではなくなります。
「解放する」際も同様です。

その理由は2つ、
 ・舌は柔らかいから、一瞬で「触れる・離す」を明瞭に行うのは難しい
 ・リード振動が起こり始めるポイントはリードの先端で、それより後ろで制御するには、より大きな力が必要
…だからです。

リード振動を最も効率良く止められる場所はリードの先端に触れることです。
それより奥を抑えても呼気を止めない限りリード先端部は振動を続けようとします。

だから、リード先端よりも奥に触れるならば、止めるにはより大きな力が要るし、明瞭な「止める」にはなりにくいわけです。

とはいえ、それをその人独特な発音スタイル、佳き個性として実現してる場合もあります。
デイヴィッド・サンボーンさんはよく使い分けてる例ですね。
あの人はマウスピースを口に咥え混む角度が、どちらかと言えばクラリネットに近い。
それも、そのスタイルを上手に実現する要素なのでしょう。

とりあえず、明瞭な「止める・解放する」をここでは目指して話を進めます。

つまり、トゥ・ドゥ・ヌ・ル_舌先端辺りの上下運動では明瞭な「止める・解放する」は難しいわけです。

では、どうやって皆さんはリード先端に上手に舌を触れてるのでしょうか?

普通の舌の長さの人なら「舌先端」を「リード先端」に触れようとすると舌が口の中で余って持て余します。
そこで、舌先端は舌の歯の後ろにブランとしてます。
つまり、舌先端よりも少し後ろ側をリードに触れてるわけです。

その時、「リードの面」に触れるならば「一瞬触れてすぐ離したい」のに、一瞬ではなく余計な時間がかかったり、
一瞬のつもりでもペッタンパッタンとスラッピーな発音(音の頭に空気の破裂音が入るような)となりがちです。

リードの先端を、舌先端より少し後ろで触れればよいわけです。
それが巧くできてる時の舌の動きは、トゥ・ドゥ・ヌ・ルの動きではなく、
チュ・ジュ・シュ・ユ
が最も似た動きです。

その時、リード先端に対して舌は、上下運動ではなく前後運動となります。
もちろん、動き始めでは舌は上昇しますが、やがてその動きの方向はリード先端に触れる直前には前後の動きとなるように移行します。

それを図示した板書です。

写真2枚目の右側は、生徒が書いたものです。

筆者が描く前に「どんな風に舌がリードに触れてるか描いてみて」とお願いして描いてもらったものです。
この人は既に上手に明瞭な発音をできてました。
ちなみに、スィンリップなのも上手に書き表せてますね。

世の中にその手の図示は沢山あり、その殆どは
「舌の先端でリード先端に触れる」
という絵です。

クラリネットぐらいに、上の歯がマウスピースの先端近くを捉えるなら不可能では無いかもしれません。
ですが、それでは一般的なサックスのMP&リードでは、ボソボソした力ない音しか出せません。
そのタイプのサブトーンを出す時には有効ですが。

そういった図示が沢山あるのは、20世紀初頭にサックスを教えたり教本を作ったりな立場になった人の多くが「元々クラを吹く人」だったのにも起因すると思ってます。
実際に、昔々の教本ではMPとかアンブシュア周りの話がまるっきりクラリネット向け説明のままのを見かけます。
サックスの教本なのにMPの絵がクラのままだったりするわけで。
それが脈々と残ってしまってるのではないかと想像できます。

クラリネットだと、MP&リードのサイズと、口に咥えこむ角度のお陰で、
舌の先端「辺り」が、リードの先端「辺り」に触れる
ことになります。
それでうまく機能するような仕掛けになってるわけです。
それだと、トゥ・ドゥ・ヌ・ルの動きだと思っても殆ど大丈夫です。

さて、
「舌の先端で触るべし」とか「舌は上下運動」と思い込んでる人は、なかなか「前後」にトライできないものですが、ほんの数分でイメージを掴める指導法はあります。
その件、以前にかなり詳しく書いたものがあります。
そのうち清書してココにも載せますね。あるいはレッスンにお越しくださいませ。

ちなみに、舌の上下運動は「顎の動揺」も呼びやすく、
 ・発音・終音時の音高・音色の要らぬユラギ
の原因となります。

金管楽器だとタンギングの目的はリードを止めたり抑制したりではなく「呼気の流れを」止めたり抑制したり、です。
ので、トゥ・ドゥ・ヌ・ルで充分に機能します。
もちろん、舌の先端は下の歯の後ろに置き、その少し後ろを上の歯茎~硬口蓋あたりに触れ、チュ・ジュ・シュに近い動きをすべし、という人も居ます。

フルートだと、やはり呼気の流れを操作しますが「呼気の出口により近い所で操作した方が明瞭」という発想もあり、舌のどこを如何に動かすかについては諸説あります。
勿論それぞれに表情があり、どれでも使えるようにして使い分ければよいのだと思います。

というわけで、だいぶ寄り道をしましたが、結論。

楽器を咥えてない時に舌運動の練習をするならば、
 トゥ・ドゥ・ヌ・ル
ではなく、
 チュ・ジュ・シュ・ユ
で行えば効果が出る、のではないかな~。

はい、やっぱ無理っ!って時の為にダブルタンギングの練習もしておきましょう (^_^;

 

蛇足ですが、筆者若い頃ドミニカのメレンゲって音楽を真面目にやってました。
サックス2人がヒタスラ超速タンギングをし続ける阿鼻叫喚なダンス音楽。
聴いて絶望、、気絶から目覚め「練習しよっと〜」ってな、、

アマゾンにはなかなか試聴できるのがありませんが、youtube とかで検索すれば聴けるかと、、あ、こんな↓感じ〜♪

スゲ〜なこれ!
20年ぶりにまたやってみたいかも、、
舌がウズく〜♪

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