純正律音程の網羅的図解

歴史の話は省きます。
ここを見にくるような人には釈迦に説法でしょうから(^_^;

長音階1オクターブを書いて、主音と各音との周波数比率を並べた図解はよく見かけますね。
でも、1つの図に全音程を書き込むとオツムが溢れかえります。
音程種で分けると整理しやすいのでは…と新たな図解を作りました。

図解紹介の前に簡単な概念説明をしておきますね。

最初に…無理なことは無理…

この手の話をする時のお約束。

調律楽器ならば微細な音程を的確に作り、何度でもそれを再現できます、調律が狂わないかぎり。

管弦楽器や声楽などの調音楽器では、その再現性ははなはだ不確かです。
聴き分けはできたとしても厳密な再現は難しい。
楽器の操作精度を上げる修練を積んだ者なら近づけるでしょうが凡人にはなかなか及びません。

とはいえ、知ってる&目指してみるだけでも結果は変わるのだと思います。
知らないよりは甲斐があるんではないかな?

そんなつもりの概念ってことで読み進めてみてくださいませ。

現代の実際の演奏では_平均律の束縛力

ピアノなど調律楽器を含むアンサンブルなら、どの調音楽器も平均律に合わせてあげるのが平和の原則です。
そう断言します。ぜひ平均律目指して演奏しましょう。

とはいえ…
その束縛から束の間でも解き放たれるチャンスが起こり、
「ハモりたい!」と思ったとします、、
その時に出来ないよりは出来たほうが愉しいですよね。
関わる知識も無いより有ったほうが佳きかと。

純正律とは_調律楽器の不自由・調音楽器の可能性

純正律とは簡単に言えば、
ドレミファソラシドの厳密な音程(2音間の距離)を如何に定義するか
って方法(調律法≈音律)の1つ。

ザックリ言うと、幾つもある調律法のうち、
よいハーモニーを作れる音程関係で定義されたもの。
その「音程」は半音の 1/1000 単位で微調整されるものです。

(純正律にも提唱者により何種類かありますが詳細は省きます。代表的な名前はラモー、ツァルリーノ、ガリレイ…。大抵は、7音ずつの長短音階を最初に満たしたツァルリーノのを単に純正律と呼ぶようです)

但し、よくハモるのは
 ドミソ・ソシレ・ファラド、の3つの長三和音。
副次的には
 ミソシ・ラドミ、
そこまでです(長調に話を限ったとして)。

 レファラ・シレファ
はハモれません。そこが欠点。それが理由で転調は不自由。
行き先によっては響きが濁りまくる、その発生確率が高いからです。
ただし、それら不自由は鍵盤楽器などの「調律楽器」での問題。

管弦楽器や声楽など演奏中に自由に音高を操作できる「調音楽器」では、その都度の調整で問題解決できるので「純正律的」というか
「純正音程を活かした演奏」に、純正律のアイディアを応用できます。

つまり、調音楽器の演奏にて佳いハーモニーを尊重する限りは、
楽曲が進む中で、音程微調整やピッチのリセットなどを細々と重ねるものです。

さて、
属七の和音 ソシレファ もハモれません調律楽器では
ですが調音楽器なら「自然7度」という音程の取り方で解決する方法もあります。
詳しくは後ほど。

で、
純正律で明確に定義づけられるのは、
ド、レ、ミ♭、ミ、ファ、ソ、ラ♭、ラ、シ♭、シ
の10種の音高。

そこに登場しなかった
 ド♯、ファ♯
の音程は二次的に見いだされます。

転調を踏まえて強いて
 ソ♯、レ♯
も決めようとすると異様に低い音程になったりもします。

で、
先ほどのド♯ですがレ♭を導き出すと別の音高となります。
 ソ♭、ラ♯ も同様。

それらは 12半音でできた調律楽器には適用できず、
しかし楽理的にはあり得る音程なので、そこまでの考慮をするならそれは「音律」という概念の領域となります。

もし調律に活かそうとするなら、鍵盤は1オクターブに12個では足りなくなります。
膨大な鍵盤数で作られた鍵盤楽器も実際に幾つか存在してます。

ちなみに、
そういった異名同音の深いモヤモヤ(アジャストしなきゃなポイント達)が、調音楽器の生演奏に於いては、ピッチのリセットや微調整のなされる箇所となります。

そこら辺が先ほど「調律法≈音律」と近似等号を書いた理由でもあります。
それらも詳しくは後ほど書く、かも…。

純正音程とは

言葉の説明です。

純正音程とは
自然倍音列にて早い内に登場する音程(2音高の距離=周波数比率)。
それらはとてもよくハモり、安定的に響きます。
「早い内」の価値観は人により環境により必要により可変。
ユニゾンとオクターブ以外は平均律とは一致しません。

完全 1, 8 度にバリエイションは無くその音程は絶対的。
完全 5, 4 度には高次倍音まで観察すればバリエイションはあるが低次で出てくる音程の登場率の説得力で、ほぼそれが絶対的。

3度以下とその転回形には、倍音列の中で沢山のバリエイションが見いだせます。

そのうち、
倍音列に登場する「最初」あるいは「その次」あたりまでを純正音程として扱うのが妥当
と思ってます。

※平均律とは、自然倍音列とは↓関連過去記事

※ ↓の「楽音・噪音とは?」も前提知識としてどうぞ

さて、
自然倍音列を例示します。ここでは C音を基音とします。

譜表上の数字は「第○次倍音なのか」を示します。
譜表下は、平均律とのズレ(セント)・階名・音度(= degree ディグリー)。

倍音列で何番目に登場したかを示す「次数」同士の比率は、
それに相当する音の周波数同士の比率と比例します。

例えば、
基音(=第1次倍音)が 100hz とすれば、
第2次倍音は 200、第3次は 300。
どう見てもその周波数比率は 1:2:3 ですよね?

「早い内に」とは…、
それら次数の組み合わせで導き出される周波数比率は、
より早いほど単純な整数比となります。
つまり、
周波数比率が単純な整数比となる2音は、よくハモるってこと。

「よくハモる」とは?

まるで1音のように溶け合い、安定した響きとなる、と共に、
それぞれ1音だけで鳴っている以上の音響的パワーアップ効果がある。
その効果は、まるでパイプオルガンがドーンと鳴ったような感覚を人に感じさせたりします。
といった現象がハモると呼び慣わされています。

で、
より複雑な比率で表される2音は
 ・より高次な倍音にて見いだされる音程
あるいは、
 ・その倍音列には見つからない音程
と言えます。
平均律に含まれる音程は、ユニゾンとオクターブ以外は全て、とても複雑な比率となります。
つまりハモらない音律なわけですね。

完全協和・不完全協和・不協和、悪魔の音程?

これも言葉の説明。

周波数比率の単純な2音は安定的によくハモります。
そうでない2音は不安定でハモりにくい。

ですが、平均律では単純に(そして近似的に)そう言えますが、
純正音程(倍音列の中に見いだせる周波数比の音程)を活かした演奏なら、半音あるいはそれ未満の音程でもハモリのツボは見つけられます。

西洋クラシック音楽の世界では 増4度 を悪魔の音程などと呼びますが、
実際どうなんでしょか?

純正律での音程だと周波数比率は 32:45 平均律より約10セント狭い。
転回した 減5度は 45:64、約10セント広い。
純正律の中では最も複雑な部類ではあります。

平均律だとどうでしょうか?
 √2 ≈ 1.414214
分数での近似値は、1.414213 だとしたら 1393/985 だそうです。
なんだかよく判りませんが、とにかく割り切れない複雑な比率なわけですね。

居心地がどうにも悪くて(緊張 tension)、協和音程への解決(緩和への解決 resolution)を望む気持を強く起こさせる音程、ってことね。

で、自然倍音列の中だと、
 5:7_平均律より15セント狭い
 7:10 _ 15セント広い
 8:11 _ 49セント狭い
 11:16 _ 49セント広い
…わりと単純です。つまりハモりツボは見つけやすい。
その音程を使えば悪魔は出てこないってこと。

 ※ セント_1セントは平均律の半音の 1/100 にあたる音程。

__近似的に、とは_ _ _
人の聴感覚はポジティブにファジーにできてるようで。
平均律は厳密にはハモれませんが
「本来はこういう美しいハモりなんだよな」
といった感じに、より佳く受け止められる仕組みを人は持ってるようで。
なので、
平均律でも、純正律で本来単純な比率となる箇所は、充分に美しく感じられます。
ですが、
純正律でもわりと複雑な比率となる箇所だと、平均律では不協和の度合いがより顕著になるようです。
(筆者自身の体験を文字にしたもので、客観的に確かな結論とするには科学&統計的調査が必要ですが)
_ _ _ _ _

…とはいえ、
純正律でも比較的複雑な比率になる音程は、
単純なものよりハモリツボを見つけるのは難しい。
 より単純な音程は協和音程
 より複雑なのは不協和音程
と呼び分けられます。

倍音列の早いうちでは幾つかの段階が認識でき、
完全協和・不完全協和・不協和 といった呼び分けがなされます。

完全音程は最も単純な整数比になる 1度・8度・5度・4度だけです。
それらが純正音程で鳴ると、まるで1音かのように溶け込み安定します。
その様子を「完全」と呼んだのでしょう。
特に1&8を絶対協和音程と呼ぶ向きもあるようです。

不完全協和音程は長短3度と6度。
完全音程のような一体感を得るには注意深い演奏が必要。
大抵は溶け込みきらない(独立した音として聴き分けやすい)ので不完全と呼ばれるのでしょう。
とはいえ、
完全音程の静けさに対して華やかなハモり現象が佳い特徴です。
充分な安定感がありつつ豊かな色彩とパワーを示せます。

それ以上複雑な比率となる不協和音程群は境目無く度合いが変化し続けます。

クラシック音楽理論では不協和を忌み嫌う、というか、解決すべき不快として扱いますが、
ブルーズ発生以降のアメリカ音楽ではむしろ「リッチ」豊かな響きと受け取られます。

音楽の世界では、協和/不協和 をもって単純に良し悪しや美醜を決めつけられないってことです。

楽器のインハーモニシティも赦しの要素

先ほど「感覚のポジティブ」について書きましたが、もう一つの大切なこと。

純正音程を目指すなら「ピッタリ」は確かにピッタリだけど、ほんの少しずれただけで、それは猛然とダメ!となります。
数学的には少しのズレこそ超複雑な比率を生むわけで。

なのですが実際は、少しのズレを「いいんじゃない?」と受け止められる場面が多いですね。

自然倍音の理論値は基音周波数から綺麗に整数倍。
ですが実際の楽器ではその値に様々な歪みを含むものです。
発音後、漸次的に倍音の音程が変わり続ける楽器もあります。
そういった現象をインハーモニシティと呼びます。

合奏に於いて、基音同士はハモらない音程でも、それらの倍音の中の歪み同士で「調和しちゃう」成分が多ければ、多数決的に「いいんじゃない?」となる、んではないでしょうかねぇ?
(要科学的調査、、)

ウナリと差音とハモり

さっきの「猛然とダメ!」ってどういうことか…。

2つの音高が1つの空間に鳴ったとします。
1つ目の音を仮に100Hzとします。
2つ目も100Hzな時、まるで1つの音かのように「静かに」溶け合います。
(厳密には位相などによって簡単にはいかないものですが、細かいことには目をつぶって進めます)
(「静かに」とは事件が起きず平穏な様ってこと calmly )

2音目が102Hzだと、差にあたる2Hzぶんの、つまり1秒に2回のウナリが生じます。

音ってのは空気圧(空気の粗密)の周期的変動(=音波)の伝搬なわけですが、その周期の違うものが1つの空間で出会うと、パワーを打ち消しあったり助長しあったりする、その結果、新たな音波が生まれます。

新たな音波の周期が可聴帯域未満だとウナリとして感じられます。
(最低可聴帯域は大抵20Hzと言われてますが個人差は大きい)
最低可聴周波数を超えると「音」として感じられます。
それを「差音」と呼びます。

英語だと beat、鼓膜をドンドンと叩かれる感じ、なのでしょね。
日本語の「ウナリ」は数ヘルツのユックリしたものにはピッタリ感じますが10数ヘルツになるとバタバタと叩かれる気持にもなりますね。

差音は、普通に聴覚で捉えられる物理現象なのか、聴覚の非線形構造による心理的な錯覚なのか、議論が分かれる所ですが、ともかく「そう感覚できる」ので、音楽家としては利用するばかりです。
筆者は前者を信ずる立場ではあります。

2音の合体の結果聞こえるのは差音ばかりでなく、各音に含まれる倍音のどこかが強調されて聞こえたり、全く別の高い音が聞こえたりもします。
(古くはそれを差音に対して加音と呼んでたようですが実際と齟齬があるので現在は使われない言葉なようです。)
差音と併せてそれら現象の総称が「結合音」です。

完全音程(1, 8, 5, 4)だとウナリを観察しやすい。
不完全協和~不協和音程だとウナリよりも差音を観察しやすくなります。

ウナリは人に不安を感じさせるものと筆者は捉えてます。
なにかしら得体の知れない巨大なものが迫ってきたとき周囲の空気に起こる出来事に類似してますから。
マイナーな和音を人が暗く悲しく不安に感じる一因だと思ってます。

差音の周波数が
「2音ともを内在する倍音列の基音と一致したとき」
に響きは安定します=2音はハモってると言えます。
そこがズレてると更に新たなウナリや差音を生み、不協和だと感じられます。

その状態は「ピッタリ」から少しズレたとこにこそ起きます。
それが「猛然とダメ!」って出来事です。

詳しくはこちら↓もご参照ください

と、
「マイナーコードはなぜ暗く感じられるか」
について軽く触れましたが、かなり明確な説明法をみつけてます。
それはまた別の機会にゆっくり書くつもりです。

不協和でこそいいんじゃん?って価値観

属七和音(ドミナント7thコード)が主和音(トニックコード)に解決するのを期待させるのが機能として必要な場合、そのハーモニーは不協和であってこそ本望なわけです。

だから、そこでは
「和声の各音間に協和を求めなくてよい」
という考え方もできます。

非和声音(≈ テンションノート
 ___旋律中で背景の和声の構成音と合致する和声音ではなく、それに隣接する音。和声音より不協和度が高く、和声音への解決(リゾルヴ)が望まれる性質を持つので様々な形の旋律修飾に用いられる。和声の中でも同様に「不協和度の高い構成音→低い構成音」という姿でも現れます。ジャズ以降のアメリカ音楽では非和声音をリッチでヨシとする価値観があるので解決欲求は低くなる、が、文脈次第でクラシカルな使い方をしたりもする___

…も、不協和であってこそ役目を果たす音なので、強いてその協和度を上げる工夫は徒労とも言えるでしょう。

自然7度って?

ブルーズ発生以降のアメリカ音楽などで当たり前な
「主和音(トニック)が属七(ドミナント7th)の形となる」
ような場合、そのハーモニーには安定性が望まれます。

そこで使われる工夫が「自然7度」と言われる音程です。
長3度の上にかなり低めな短7度の音を乗せます。
その音程は倍音列の第7次に登場する音程です。
そうすると、解決欲求を感じさせる不協和性能は下がり、トニックとして安定した響きとなります。

調律楽器では出せませんが調音楽器なら使えますね。
19世紀後半、アメリカで流行ったバーバーショップ音楽(Barbershop Music)
__4声コーラス、基本的にはコラールっぽい楽式だが和声はブルージー__
を特徴づける響きなので「バーバーショップの7度」などとも呼ばれます。

純正律の短7度は平均律より約「18セント高い or 4セント低い」ですが、
自然7度は約31セント低くなります。
基音から数え上げれば約969セント(平均律だと1000セント、普通の純正律は約1018 or 996セント、四分音まで定義した24平均律だと超長6度として950セント。純正律の1018から自然7度の969を引くと四分音ほぼ1つ分の49、ちょっとミラクル)。
基音との音程を比率で表すなら 4:7(純正律は5:9 or 9:16)。

純正律ってこんな姿_大全音・小全音

まず、ある1つの音高をドと呼ぶとして、
そこに湧く倍音列の「基音・第3次倍音・第5次倍音」
そのトーンクラス(オクターブは関係無く、その音を音名或いは階名で呼ぶとナニなのか)をドソミとします。
平均律と比べると、
ソは約2セント高く、ミは14セント低い。

そこで得られたソを「新たな基音」として、
ドソミの時と同じ方法で ソレシの音程を導き出します。
ソが2セント高いとこから始めるので、
レは4セント高く、シは 12セント低い。

次に、
ドを第3次倍音とする基音としてファを逆算します。
それを新たな基音とすると ファドラの音程が導き出せます。
ファは2セント低くなるので、ラは16セント低くなります。
そこまでで ドレミファソラシ の7音が出そろいます。

そうして出来上がった音程群を使えば、
 ドミソ、ソシレ、ファラド、
3種類の長和音(メイジャーコード)の構成音は、
ド、ソ、ファ それぞれを基音とする倍音列内の音高に一致するので、
まるで1音のように完璧に安定します。
つまり、最もよくハモります。

さて、
ここまでを読み解けば、
 ド~レ より レ~ミ は狭くなりますね。
前者を大全音、後者を小全音と呼びます。
同じく ファ~ソ は大全音、ソ~ラ は小全音。

なのですが ソ~ラ は小全音、ラ~シ は大全音、
そこだけは逆の組み合わせになります。

大全音は平均律の全音より4セント広く、
小全音は 18セント狭い。

ついでに、
純正律の半音(ミ~ファ、シ~ド)は平均律より 12セント広い。
そんなことを気にとめておくと図解を見るときの助けになります。

ちなみに半音にも幾つかのヴァリエイションがあって、音律づくりやハモりに活かせます。
結果的に、それらの組み合わせで出来上がる3度4度…にもヴァリエイションがあり得ます。

とはいえ、
完全音程(完全 1, 8, 5, 4度)については、その絶対性が強靱なのでヴァリエイションを考慮すべき機会は少ない。

さて、
ミソシ、ラドミ といった短和音(マイナーコード)も安定的に響きます。
ところが、レファラ はとても不安定です。
次項でその不安定のわけを紐解きます。

長短三和音のハモりやすさを周波数比率から見る

先ほどは長短三和音に含まれる音程を、平均律からのズレで紹介しました。
ここでは、周波数の比率で見てみましょう。

「周波数比率が単純な整数比なほど協和度が高い」
が3音以上の和声にも通ずるのかを確かめます。

 ドミソ・ソシレ・ファラド
いずれも各基音周波数を1とすると、
 1:5/4:3/2
整数になるよう約分すると、
 4:5:6
綺麗に単純な整数比ですね。

これ以上に単純な三和音って有るのかしら?
 2:3:4
だとすると、ドソド、
 1:2:3
なら、ドドソ、
つまり固有な3種のトーンクラスを含む三和音としては、
 4:5:6
が最も単純と言えます。

短三和音の ラドミとミソシ はどうでしょう?
主音を1とすると、
 1:6/5:3/2
約分すると、
 10:12:15
長三和音よりは複雑ですが、まぁシンプルと言えるでしょう。

では、レファラ はどうなるでしょう?
基音を1にする計算が面倒なので、ド を1としての比率から計算を進めます、
 9/8:4/3:5/3
約分すると、
 27/24:32/24:40/24
だから、
 27:32:40
だいぶ複雑になりましたね。
比べるなら割と不協和な部類ってことです。

とはいえ、純正律だからこの程度で済んでるわけで、平均律だといきなり随分と複雑な数値になります。面倒なんで挙げませんが (^_^;

で、ですね、
この方式での協和度計算は、四和音でも五和音でも…四or五度堆積和声でも、テトラトニック・ペンタトニック・ヘクサトニック…でも同じく使えます。

ってことは7音音階にも使えるわけですね。
ザックリ言うと、
協和/不協和 が 音階の明暗 と対応する、ならこの方式で順列明確化が叶うはず。

その一端を↓に記しました。網羅的記事は追って書きますね。

さて、
レファラなどの不協和の、演奏に於ける解決策について話を進めますね。
調律楽器の人にはゴメンねって話ですが (^_^;

純正律に含まれる破綻_その1_5度について

ド~ソ、ソ~レ、ファ~ド、
これらの5度音程は、倍音列の最初に登場する5度と一致するので完全に安定します。
純正律の作り方からして当然ですね。
なので「完全5度」と呼ばれます。

純正律の結果として二次的に生まれるその他の5度についても観察すると、
ミ~シ、ラ~ド、も幸いなことに完全5度となります。
なのですが、
レ~ラ、は純正な完全5度よりも随分と狭くなり不協和を生みます。

純正な完全5度は平均律より2セント広い。
ところが、
レが4セント高く ラが16セント低いので平均律より合計 20セント狭い。
純正な5度と比べると 22セントも狭い。半音の 1/4 弱ぶんも。
周波数比率で言えば、完全協和な5度音程は 2:3 のところ、
レ~ラ は 27:40 です。うひゃっ(^_^;
つまり倍音列の最初に登場する完全5度より随分と狭い。

というわけで レ~ラ を含む和声
 レファラ とか レファラド とか シレファラ とか
は不協和を生み、とても不安定になります。

ちなみに先ほども書きましたが、平均律の完全5度は純正音程よりも約2セント狭い。
つまり不協和なわけですが、殆どの人は気にしないで済む程度ではあります。

純正律に含まれる破綻_その2_3度について

ドミソの ド~ミ は長3度、ミ~ソ は短3度。
いずれも倍音列内に早く登場する音程と一致するので、よくハモる純正音程です。

ソシレの ソ~シ・シ~レ と、
ファラドの ファ~ラ・ラ~ド も同様。

ただし レ~ファ の短3度だけはハモれません。
レ が4セント高く ファ が2セント低い。
純正な短3度は平均律より 16セント広いはずなのに レ~ファ は6セント狭い、その差は 22セント。
随分と違いますね。
比率でいえば、純正な短3度の音程は 5:6 のところ、
レ~ファ は、27:32 。
確かに不協和感ありありですね。

なので、
レファラド とか シレファ とか ソシレファ は純正音程だけでは組めず結構な不協和となります。
もちろんそれは調律楽器ならではの問題です。

もちろん、
倍音列を更に高次まで観察すれば、より狭い短3度を作る材料は何種類も見つかります。

とはいえ、
周波数比が単純なほど協和度が高い、という原則に従うなら、
高次倍音域の音程を材料にすると、より複雑な比率になり、
比較すれば不協和度は高いほう、となりますね。

調音楽器での破綻回避_レorラorファの調整、自然7度

レ~ラ や レ~ファ の問題が起こる場合、調音楽器なら、
それぞれ「いずれかの音高」を調整し純正音程を作って解決します。

属七(ドミナント 7th)の和音 ソシレファ のファ。
レ~ファ の座りが悪い。
ファをレとハモるように持ち上げたとしても ファ〜ソ の座りが悪い。
機能的に不協和を使命とする場合は、そのニゴリを放置してよいでしょう。

でも、
より美しくハモり続けたい場合や、
それが「機能的にドミナントではなくトニックの和音」で安定性を求められる場合には、
ファの音に「自然7度」の音程を用います。
ソを基音とする倍音列の第7次倍音にあたる音程を使うということです。

それらの詳細は↓に書いたのでご参照ください。

短調の純正律は如何に…

長調の純正律の中に安定的な短三和音が2つありました。
 ミソシ と ラドミ。
それらの音程関係を端緒に短調の純正律は作られます。

長調純正律の作り方にならうなら、
 ラドミ を自然短音階のⅠ度和音、
 ミソシ をⅤ度和音とすればあとは
Ⅳ度和音の レファラ を定義すればいい。

ラ から完全5度下に レ の音高を見つけ
そこから純正短3度上に ファ を設定。
それで レファラ が見つかりました。

そこまでで ラシドレミファソラ の自然短音階が出来上がります。
ところが、その階名のままだと長調と並べて比べる時に幾つかの不便が生じます。

例えば「レ~ラ」という「見た目」が長調では不協和なのに短調では協和です。
そういった「見た目」から直感できる情報に、長調短調で違いが様々に生まれます。
それは整理する時の混乱につながります。

そこで、
 ラ シ ド レ ミ ファ ソ
って階名を
 ド レ ミ♭ ファ ソ ラ♭ シ♭
に変換します。
ドレミファソラシド と同じ高さの主音から並べると上記の混乱は解消します。

長短調を同主調で比較するわけ

クラシック楽典では、長調と短調を比べるとき、平行短調(英語では relative minor)を書き並べるものですが、実は、
同主調(英語では parallel minor 日本語と逆になりますね)同士を比べるとコンガラカッタ頭をほぐせる機会が多いです。

ジャズ学習者やモード(教会旋法)を理解したい人なら絶対に同主調的把握が便利です。
「バークリー音楽院のソルフェージュ授業ではメイジャーもマイナーも主音をドと呼ぶ」
って話にも繋がります、が、その件はまた別に詳しく書きますね。
ともあれ、
マイナーといえば平行短調ってな「発想の縛り」からの解放をオススメします。

でね、純正律の話をするときも、平行調を並べ立てる例が多い。
例えばハ長調とイ短調って感じに。
でも、同主調のハ長調とハ短調を並べた方が絶対に直感的理解が早いはずです。

比較図を例示しますのでジックリ眺めて直感してくださいませ。
ドレミ…って呼び方とセント値との関係に注目すると判りやすいです。

譜表上は階名、譜表下は主音を1とした時の各音高の周波数比、

長調・短調とも3トニック、トーナルセンターって言葉

いわゆる「コルトレーンチェンジ」って典型的コード進行がありますよね。
Giant Steps とかで有名な。
長3度ごとにシンメトリックな位置(オーギュメンティドコードを成すような)にある3つの音高をそれぞれ主音とするメイジャーコードを、平等にトニックであるかのように振る舞わせるような進行です。
その有り様は「3トニック・システム」などと呼ばれます。
さて長調の音階&内在するコードを観察してみましょう。

三和音に限って見るなら…
 メイジャーコードが3つ、
 マイナーコードが3つ、
 ディミニッシュトコードが1つ。

ザックリ言いますけど、
メイジャーコードはディミニッシュトよりマイナーより安定度が高い。
倍音列の極早いうちに登場する音ばかりで出来てるから。
「己はトニックコードなのだ」
「我はこの基音&倍音列との関係が深いのだ」
との主張が濃いコードタイプと言えます。

逆に言えばメイジャーコードが鳴ると、
その1の音を基音とする倍音列を想起させるチカラが湧くってこと。
その効力が続く間は、
その倍音列を軸に様々な協和/不協和が測られます。
そういった概念をトーナルセンター(調的中心_筆者訳)と呼び、
その基音こそトーナル(主音)なのだと筆者は捉えてます。

、、行頭に「そ」が5つ並びましたね、、ドミナント感を強く感じま、、あ、どうでもいい(笑

つまり、長調の(厳密に言えば旋律的長音階で機能和声的な)曲とは、
3つのトーナルをウロウロと行き来するもの、と言えます。
不均等な3トニックシステムとも言えます。

純正律の仕組みが、実は端的にそれを示してるとも言えますね。
3つの基音&倍音列を乗り換えつつ7音音階を完成させてるわけで。

次項で純正律音程の網羅的図解を紹介しますが、一般的ではない書き方です。
よく見かけるのは「1オクターブ分」だけの音符に音程情報を書き込んだものです。

ここでは、
「ファソラシド ・ ドレミファソ ・ ソラシドレ」
と3ブロックで見渡せるようにしました。
そうすることで直感的に見えやすくなる事々があるからです。
短長も同様です。

「長短調いずれも実は3トニックシステムなんだな」
ってことを踏まえると、この見た目が考えやすさに繋がると思ってます。

純正律音程の網羅的図解

お待たせしました。図解です。
C を主音として書きました。
ハ長調 と ハ短調 の純正律です。

括弧で繋がれた両端2音の周波数比率を書きました。
 ・角括弧は完全 or 長音程
 ・丸括弧は短 or 減音程
 ・破線丸括弧は「ガッカリなとこ」

7音音階の純正律では定義されない音程、転調=新たな基音の設定

ここまでに登場したドレミ…を数え上げると10個。
長音階と自然短音階に含まれる音を併せて全て並べると…
ド・レ・ミ♭・ミ・ファ・ソ・ラ♭・ラ・シ♭・シ

それらの異名同音を考慮しないならば、ここに欠けてる音は
 ファ♯ or ソ♭

 ド♯ or レ♭
の2音です。

主に2つの見つけ方があるでしょう。
 1)既に決まった音とハモる音程とする
 2)セカンダリードミナントの構成音としてピッチリセットする
それぞれを詳しく検討してみましょう。

1)
ここまでのやり方の延長。

ファ♯ or ソ♭
ファ♯なら、シの完全5度上か、レの長3度上か、ラの短3度下として。
ソ♭なら、ミ♭の短3度上かシ♭の長3度下として。

ド♯ or レ♭
ド♯なら、ミの短3度下か、ラの長3度上として。
レ♭なら、ファの長3度下かシ♭の短3度上として。

実際に作ろうとしてみると、それぞれに幾つものヴァリエイションのあるのが判るでしょう。
つまり、絶対的に決められるものでない音程と言えます。

2)
これは筆者の提案的アイディアです。
セカンダリードミナントとは、トニック以外の6つのダイアトニックコードを「新たなトニック」として、そこに向かって解決を望むようなドミナントコードのこと。

ファ♯なら、
それを導音として、ソをルートとするコードに向かうドミナント、つまりレをルートとするドミナント7thコードの第3音とします。
その際、ソの音を基準ピッチに合わせ、ソを基音とする長調を想定し、
その第5音レをルートとするドミナントコードを作ります。
そのつもりで計算すればファ♯の音高は決まります。

ソ♭なら、
ファを第3音とするキー=レ♭からの長調をターゲットとして(もはやセカンダリードミナントとは呼べないが)、
そこへ向かうドミナントコード(ラ♭をルートとする)の第7音(短7度)として計算します。

ド♯なら、
レのキーをターゲットとするドミナントだから
ラをルートとするドミナントの第3音として計算。

レ♭なら、
ドを第3音とするキー=ラ♭のキーのドミナント、
つまりミ♭をルートとするドミナントコードの短7度として計算。

で、
最初に確定している10個の音も、異名同音については同じく計算できます。
ですが、そこまでやって実用的意味があるのかは、よく判りません。

「2)」の方法については↓で実践を音で紹介してるので御参照ください。

オツムを使いすぎたので今回はこれくらいにしておきましょう。
おつかれさまでした~♪

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