リード楽器のアンブシュア_音高・音色・音量 への様々な影響傾向

演奏時のリードを取り巻く環境や接し方次第で、
出しやすい 音の高さ・音色・音量の幅 などが変わります。
本稿では 様々な条件と結果の音の組み合わせ を列挙&整理します。

サックス、クラリネット どちらもほぼ同様。
構え方(角度)や身体の動きはだいぶ違いますけどね。
ダブルリードはまだ経験値が低いので、よく識りません。
なので、違うことも沢山あるでしょう。
つまり筆者の経験からのメモ書きです。

こういう話にね、ジャズだからクラシックだからって看板を付けたがる向きは多いですね。
そりゃ注目してもらいやすい看板なのは理解できます。
けどね、身体と楽器の関係って物理の話 なので、筆者はそういった、
「見え方にフィルターを掛けてしまうような肩書き」は付けません。

自分の関わる音楽にもそういう壁を作りたくないので、
「ジャズ奏者ですよね?」と言われれば
「音楽の演奏家です」と応えるようにしてます。

お待たせしました、本編へ進みましょう♪

絶対的でなく相対的な、条件と結果の関係

最初に大切なことを書きます。

以下に並べる「条件と結果の組み合わせ」はいずれも、
条件の様態と結果が絶対的に一致するものでなく、
相対的な領域を示すもの と受け止めるのが良いでしょう。

「コノ操作をしたから必ずこの高さの音が出る」
という関係でなく、
「ある高さの音が鳴ってる時にコノ操作をすればコレダケ動く可能性があるよ
って事です。

可能性と書くのは、
以下の諸条件は相互に干渉し合い、
結果の出方に変化をもたらすからです。
操作の熟達度合いによっても出方は変わります。
だから可能性とまでしか書けません。

とは言え、興味を持たねば一歩も踏み込めぬ体験がそこにはあります。
知っていればトライもできます。
そんなつもりで以下お付き合いください。

あ!そうそう、もっと大切な事。

この世にたった一つの絶対に正しいアンブシュア
なんてありませんよ。
 ・体格
 ・求める音(日々変わってもよい)
によって人それぞれ相応しいアンブシュアがあるのは当然で、
音高ごとに、今出したい音色ごとに、音量を変えたければ…
全て違う姿になります。

使い得る可能性をできるだけ沢山試して、
いつでも引っ張り出せるようにしとくのがよいでしょう。
利用可能な範疇で「無駄なく合理的に動ける操作」
を見つけるために練習する、と思いましょう。

ただ息が入るだけでは鳴らない

リードを付けたマウスピースをフワリと咥えて息を入れる。
風の音しかしませんね。
リードにほんの少し、マウスピース側に寄せるような圧力を加えると鳴り始めます。
そうなるように作られてます。

※リードが振動する原理↓と振動中を内側から撮った動画

本稿は、
 ・その「圧力」をドンナフウニ掛けるか次第で結果の音は変化する
 ・その組み合わせを知るとイイかもよ
についての説明を目指します。

リードへの圧力の必要最低限を知る実験

サックスだと、ネックとマウスピースだけを繋げて使います。
クラリネットなら、バレルとマウスピースだけを。

ネックかバレルのお尻から勢いよく息を吸い込みます。
ピキ〜〜っ! とウルサイ音が鳴ります。

ここで、普通に楽器の音っぽく鳴ったり、
息苦しくモズモズとなったり、
リードがマウスピースにペタっとくっついてしまったり、、
だと、 リードが「丁度よい堅さ」よりも柔らかすぎか、
長時間使いすぎて弾力が無くなってる可能性があります。
(もちろん奏法次第では、それで丁度よいこともありえます。)

さて、ピキ〜〜っ!が鳴ったとします。
リードの先端から少し下を、
いずれかの指の腹で 柔らかく優しく触れます。
それだけで楽器っぽく安定して伸ばせる音になります。

クラリネットだと、普通に咥えて吹いた音より1オクターブほど高くなります。
それは、普通に咥えた時は「閉管構造」で、お尻から吸った時には「開管構造」となるから、、かな?
サックスだと、いずれも「疑似開管構造」なので音高が変わらない、ってことかな?
筆者まだよくわかってません。現状での研究課題です m(_ _)m

ともあれ、さきほど指の腹で感じた
柔らかさ、優しさ、
それが、必要充分最低限なリードへの圧力、です。

これを体験しておくだけでアンブシュアへの考え方がだいぶ変わる人も居るかもしれませんね。
これ、そのうち動画撮って紹介しますね。

さてようやく本題へ進みます。お待たせしました(^^)/

下の歯上端とリード表面との距離

狭ければ
 ・高い音が出やすい
 ・音色は明るくなりやすい
 ・音質は堅くなりやすい
 ・大きい音は出しにくい
 ・小さい音は扱いやすい
 ・ピッチは上ずりやすい
 ・吹き心地は重くなりやすい(息通りが悪い)

広ければ
 ・低い音が出やすい
 ・音色は暗くなりやすい
 ・音質は柔らかくなりやすい
 ・大きい音は出しやすい
 ・小さい音は扱いに慎重を要する
 ・ピッチはブラ下がりやすい
 ・吹き心地は軽くなりやすい(息通りがよい)

狭すぎると
 ・息苦しく響きの乏しい音質になりやすい
 ・低音域が出しにくく上の倍音にひっくり返りやすい

広すぎると
 ・音が出ない
 ・出ても楽音と言い難い音色や音質になる
 ・楽音を出せたとしても、レジスターキーを押しても上の倍音に行けない
 
気を付けるべしなこと。
「狭くしよう」とするなら、上手に狭くすべし。
噛み締めるようにはならないように。
リードの振動を、ショボい虚ろな音になるほどには抑制しないように。
短時間で下唇の内側が痛くならないように。
 
この「狭くする」は、下に紹介する「薄くする」と連動して、うまい具合に実現します。
ってイメージも大切です。

※「楽音とは」既出ページ↓で説明してます

タンギング and/or 音高遷移に伴う顎の動揺

発音の瞬間に毎回「バウン」という音高と音色のタワミを起こすのが特徴。
実はさっき説明した「距離」に関わるんです。
リード楽器初心者にありがちな諸問題の根源。
タンギングの直前直後に顎が空いたり締まったりしちゃうってこと。

吹奏時の基本的な「下の歯上端とリードの距離」が狭すぎる、
別の言い方をするなら 噛みしめっぱなし
なのが根本的原因。

良い音で丁度よく鳴らせてる時の↑の「距離」を例えば仮に 5mm とします。
 ・明瞭な発音
 ・音高・音色・音量にタワミの無い発音直後
 ・伸ばしてる間の安定
 ・消音直前〜消音時の音高・音色・音量のタワミ無さ
を望むなら、
 ・発音の少し前(舌がリードに触れる or 触れてる)
 ・発音の瞬間(舌がリードから離れる)
 ・発音直後〜伸ばしてる間
 ・消音(スパっと切ろうが、デクレシェンドしようが)
 ・消音後の一瞬
その 全てに於いて 5mm をキープするのが最も簡単な方法です。

マウスピースを咥えつつ音の出ていない間、
その「距離」を閉じる、あるいは噛みしめてしまう初心者は多い。

その状態からは、息を入れてもタンギングをしても、まともな音は鳴り出さない。リードを過度に抑え込んでしまってるから。
なので、とにかく発音する為にタンギング動作と共に顎を開ける。
それで取り敢えず発音は実現するが、
鳴ってる間の基本的な顎の位置は「噛みしめ」なので、
発音直後に噛みしめ直して息苦しい音を伸ばす。

スパッと消音する時は、舌をリードに触れる時にグっと噛み潰す。
デクレシェンドで消音に向かう時もジワリと噛みしめを深める。
それらの結果、
発音直後と消音直前に、音高・音色・音量のタワミが生まれます。

発音の為のタンギング、
区切りの為のタンギング、
いずれに於いてもその瞬間に「バウン」という
ズリ上げ型音程タワミ」を音色のタワミと共に生じさせる。

その症状があると、タンギングの仕方にも問題を併発してる率が高い。
典型的なのは(サックスだと)
 ・タンギング時、リードの「面」に舌が触れる
 ・付く&離れる時、舌先端が上下に動く
ゆえに発音も消音も不明瞭。(クラ向け注釈少し下に↓)

その「舌の上下動」に連れるように、同じ方向に顎が動いてしまう。
そういう「症状の連動」が多く見受けられます。

、、というのはサックスの場合で、、
クラリネットだと、リード先端の線だけでなくその下に続く面にも舌は少し触れて当たり前、なので、それより下のより広い面に触れてれば問題と感じるべしでしょう。

※サックス・クラともに、わざとリード面に広く舌を触れる種類のタンギングも有り得ます。それは音楽的に利用価値のあるものです。ただし、それは 意図的に行って初めて意味を持ちます。「無意識にそうなってしまう」という動作は音楽的に意味のある音には繋がりません。

舌の「上下動」についてはクラも、ほぼ同じケアの気持でよいかと。
リラックスしてブランと口腔内に「ア」の形で居た舌は、リードに向かって動き出すと先ず上昇するが、最終的にリードに触れる所ではほぼ前後の動きとなります。
その「前後」の意識が希薄で「先端を上下に」と思っていると、顎の動揺を引き連れやすい。

その問題を解決する近道はあります。
ですが、それはレッスンに来て聞いてもらうとして、
ここでの結論的に、2つの心構えだけを書いておきます。

1)
舌の先端は、いつでも下の歯の裏側にブランとしてるもの
と思っておくと、この症状から脱却しやすいでしょう。

2)
顎を動かす諸筋は、噛みしめる為でなく、
「丁度よく開き続ける為に頑張り続ける」んです。
必要最低限にして充分なリードへの圧力は、
顎の噛みしめ力ではなく口輪筋を使うべし。

さて、
タンギングせずとも、音の高さを移り変わろうとする度に、
顎をカクカク動かしてしまうのも多い。
多分に先入観に依るものでしょう。
音高遷移に際し「ナニカしなきゃ」と思うのでしょう。

なのに、ドコをドウ動かしてよいかヴィジョンが不鮮明な時、
「トニカクナニカシナキャ」
と、身体中をガムシャラに使ってなんとかしようとする。
そんな時、身体中の筋肉は収縮方向に動くもの。
その一環として顎を動かす筋肉も、閉じる方向に動いたり戻ったり。
それがカクカクの原因です。
たいていナニもしなくていいのにね。

< たとえ話 >
高速道路で直進。
その最中に、ハンドルを小刻みにプルプル動かす人って居ます。
無駄ですよね。
せっかく綺麗な路面で直進なのに、
小石が沢山あるかのようにプルプルさせると、
本当に小石を踏んだかのような挙動で事故りかねません。
路面状態が良い限りクルマは真っ直ぐ走るものです。
ハンドルには軽く手を添えておけば安全に直進するはずです。

ダークという言葉の誤解

少し寄り道します。
楽器屋さんとかオークションとかで、楽器・マウスピースの宣伝文句としてよく見かける言葉ですね。
「暗めでシブくてカッコいい」といった意味合いで使われることの多い「日本語」ですね。

dark とは楽器の音質の話題に限っては、英語ネイティヴとの会話や文献にあたってきた印象だと、
「諸成分を満遍なく含み輝かしい」と思ってよいようです。
もちろん正しく使えてる文章も稀にありますよ。

そう言うと「いぶし銀ってことですかね」という折衷案が湧いてきがちですが、遠慮せずに「力強くキラキラと」と思ってよいでしょう。

ちなみに、フルート教則の名著シリーズ、トレヴァー・ワイ先生のフルート教則全6巻が数年前に改訳されました。
氏の名前表記がトレバーからトレヴァーに変わったことも含め、本人の意向も強く反映されつつ名訳となりました。
そこでも、dark はそういった意味合いだ、と訂正されています。
なので本稿では、曖昧と誤解を避けるために ダーク は使いません。

高次倍音成分を含む量が少なく、
輝く朝日ではなく湿った夜道を想起させるような状態を
「暗い」と書くことにします。

「暗い・明るい」は主に「音色」について使うべき言葉です。
音楽や楽器の話をしてる限りは。

基音に近い倍音群を多く含む音色は「暗く、重厚で、力強く」受け取られる傾向にあります。
高次倍音を豊かに含むと「明るく、軽快で、柔軟な」となります。

今、言葉選びにとってもアタマを使いました。
「力強く」はお相撲、「柔軟な」は太極拳
と思って頂けると丁度よいかと。
はい、寄り道はここまで。

リード先端と下の歯先端との距離

近ければ(つまり咥えが浅ければ)
 ・低い音を出しやすいというか、扱いやすい
 ・音色は暗くなりやすい
 ・音質は貧弱になりやすい。材料が少ない感じとも言える
 ・大きい音は出しにくい
 ・小さい音は扱いやすい
 ・ピッチは上ずりやすい

最後のピッチについては、テコの原理で、必要以上に噛み潰してしまいやすいからとも言えます。
なので噛み潰さぬよう口を開き続けられれば、上ずらせずに独特な音色を得られるでしょう。
慎重さと筋持久力が要ります。

遠ければ(咥えが深ければ)
 ・高い音を出しやすいというか、呼気圧が充分ならば充分な音圧と響きを高音域にて得やすい。
 ・音色は明るくなりやすい
 ・音質は充実した感じになりやすい、呼気圧が充分ならば。足りないと途端に頼りない感じになりやすい。
 ・大きい音は出しやすい
 ・小さい音は扱いにくい
 ・ピッチは、どっちかと言えばブラ下がりやすい

近すぎると
 ・音が出ない
 ・出ても楽音と言い難い音色や音質になる
 ・その出しにくさを押し倒して息を突っ込むようなサブトーンの出し方は有る(そうじゃない出し方も有るってこと)。

遠すぎると
 ・コントロールできずポキャーっとハウリングのような酷い音が出る(もちろんそれも利用価値は有る)。
 ・楽音が出せたとしても、広い音域を亘って吹きこなすのは難しい。

要注意。
フェイシングの長さはマウスピースのデザインにより様々です。
この「近い・遠い」の影響の仕方はフェイシングの長さにより変化します。
リードの様々なデザインも実は、色々なフェイシング長との相性で作られたりしてるので、組み合わせ次第で結果は変わります。

※「フェイシングとは」は既出記事↓に詳しく書きました。

口腔内容積と形状

ここからしばらくは身体の仕組の話です。
口腔とは「口の中の空洞」のことです。
ア〜ンと口を開けると見渡せる一帯とも言えます。
唇の内側から咽頭までの間。

さて、楽器奏法の話になると「ノド」の話になることが多いですね。
俗に「ノドを開いて」とか言いますよね。

「けっこうノドの操作を駆使してますよね〜」とかも言われます。
自分にはそんなつもりは「ほとんど」ない(笑
ノドと思える部位の操作を頑張ってる意識は無いから。
実は、それ以外の部位では自覚が強くありますが、その点は少し後で紹介します。

咽頭より奥を俗にノド(漢字では喉)と呼びますね。
医学的には口腔も含めてノドと称すようです。
ん、、咽頭って?
では、仕組みを詳しく見てみましょう。

・鼻腔(鼻の奥の空洞)の一番奥の辺りが上咽頭
・口腔から真っ直ぐ奥に突き当たった辺りを中咽頭
・その下、舌の付け根の一番奥の辺りに気道と食道を隔てる喉頭蓋がペラペラしてる。嚥下時に空気の通り道に蓋をします。

・その可動域周辺が下咽頭
・喉頭蓋のすぐ下、空気の通り道側に声帯(声門)
・そのすぐ下一帯が喉頭。声帯もその一部。体表からは喉仏として触れる。

・それより下の気道(空気の通り道)が気管
・その奥(背中側)で食物の通り道が食道。普段その入口は閉まってるが嚥下の時に開く。つまりその時に喉頭蓋は気道に蓋をするわけですね。

web 上に図解を沢山みつけられます。解りやすそうなのは↓
http://kodajibi.com/page_nodonoshikumi.html

まずは「ノド」から

ノドというとどの辺りを連想するだろうか?
先程、俗にノドとは咽頭より奥、と書きましたが、詳しく見た後の印象はどうでしょうか?

大抵の印象は、喉頭〜気管の辺りではないでしょうか?
上咽頭から下とも言えますが、そこは一般的には「鼻の奥」と思われそうです。
首のあたり一帯の内部構造とすると喉頭以下をノドと呼びたい人も多いでしょう。

さて、そこら辺を「開いて!」と言われると、、、
まず奥から考えますね。
気管は硬い骨に覆われた管状なので拡げるのは無理です。

喉頭は、食物を嚥下する時や深呼吸する時、あるいは声色を変える時など必要に応じて前後上下に移動します。
高い声よりも低い声を出そうとするときの方が喉頭は下がります。
その「下がる」は「ノドを拡げる」と表現し得ます。

喉頭を下げるのにつれて、舌の奥側一帯も下がります。
結果的にその一帯の容積は拡がります。
まさにそれはノドを拡げたと言えるでしょう。
声は低く・暗く深い音色で出しやすくなります。

声の音高に限れば、喉頭を上げても低い声は出せます。
ただその場合、音色は明るくなります。

ノドの状態が楽器の音色と響きにも「声と同様に」影響を与えるとするならば、
 (「とするならば」と書くのは研究対象として進行中課題だから)
喉頭の上下は楽器の音に影響するでしょう。

確かにそれはそうだ、とよく知られたことですが、
実際にどんな影響の繋がりがあるか、
近い将来に実験観察を重ねるつもりです。

☆「ノドってどこ?」について、より詳しく書きました↓


**********
さて少し寄り道。

楽器に付け足して音色・響きを変えるパーツって色々ありますよね。
素材・形状・重さなど工夫したネジやらオモリやら。
取り付ける場所によって音色・響きに様々に影響します。
影響がより大きいのは「発音源に近い場所」です。
つまり、マウスピースに近いほど影響が大きくなります。

はい、寄り道ここまで。
あとで響いてくる知識の確認でした。
**********

口腔と舌、その容積&形状と母音

一般的にノドと思われてる一帯より手前に口腔があります。
その天井は口蓋と呼ばれます。

手前つまり歯に近く、歯茎から連続する一帯は硬口蓋。
舌で触れると堅いので骨に支えられてるのが判りますね。
つまり変形は難しい。

その奥に、舌で触れるのは難しいですが、押せば少しグニャとなる一帯、そこが軟口蓋。
軟口蓋は、普通の人だと随意的に動かすのは難しいでしょう。
声楽のトレーニングを経た人だと軟口蓋を持ち上げられるようで、、、

あ!!!、、ずっとそう思ってましたが、、
自分(声楽科出身)で触って気付きました。
ほとんど上がらない。。。え? 、けっこうガッツリ上がってる気がしてたのに(^_^;

口蓋垂(ノドチンコ)はヒョイっと仕舞い込まれるように上がるというか平滑化できる。
軟口蓋を上げようと頑張っても、ノドチンコの周囲がほんの少し凹む程度。

軟口蓋を上げるつもりで行ってた筋肉の緊張、よく観察すると「喉頭と舌の根っこの奥のほう」を「より下げる」って結果になってたみたい。
ともあれ、それも「ノド」の動きですね。

ではようやく口腔っぽい話に進めますね。

舌こそが口腔内容積&形状を操作する主人公

口の中で自由に動かせるもの、、、そう、舌です!
舌は多方向の沢山の筋肉の集まりで、身体の中で最も自由に動かせ変形させられる部位。
つまり舌こそが口腔内の容積と形状を瞬時に大きく変形させられる正体です。

我々が喋る時、舌はどのように動き、作用するでしょうか?
以前の記事でも紹介した写真ですが、、、

左端に近い A音が基音。そこから右に向かって、第234…次倍音と並ぶ様子が写ってます。
下から順に、ウオアエイと声を伸ばした時の、倍音構成の変化ってことです。


特徴的というか他とは例外的な姿。
第4次倍音までは倍音の並びが明瞭だが、それ以上は甚だ脆弱で周波数も不確か。
つまり、、、ドレミの歌風に言うと
♪ウ〜はう〜つろ〜の〜う〜
虚ろな音と言えます。

第2次倍音が最も大きく見えます。
第1次倍音(基音)がわりと小さく見えるのは iPad 内蔵マイクが小さいからかもしれません。


第3次倍音、むしろ第4倍音の方が大きく見えますね。
第5、6,7と順調に漸次的に減り、20次台後半に集中的なピークがあります。
その辺は体格とか発声時の響かせ方によっても変わりそうですが。


第5倍音が最大、その下と上に向かって漸減。
第30次倍音をピークとしてその前後に音圧の高まりが有り。


第4次倍音に最初のピーク。
そこから上に向かって小さいながら満遍なく並び、第16次倍音あたりから20次台いっぱいにゆったり拡がる高まり。
第80次倍音周辺にもわりとゆったり音圧分布があるのも特徴か。


第2次倍音を最初にピークに、上に向かって急速に漸減。
20次台に亘って高まりが分布し、80次辺りに鋭いピークの存在が特徴か。

母音ごとに特徴的な「倍音構成の傾向」があるのが見てとれますね。
つまり「音色の違い」です。
母音の違いとは音色の違いなのです。

観察結果からの結論から書いてしまいますが、、
ウ は他と違った特徴が際立ってます。
オアエイ は唇の形が「どうであれ」発音できます。

小学校の国語や音楽の時間に「アの口、オの口、、、」とか習ったと思われますが、唇の形と オアエイ の響きは、さして関わりません。
80年代アイドルが笑顔を保って歌えた理由です(90年代以降はほとんどアテブリですが)。

ウ だけは唇の形の影響が濃いようです。
いわゆる「アの口、オの口」だと ウ と聞かせるのは難しい。
いわゆる「イの口、エの口」だと、舌の、けっこう奥、エの時上がる場所よりも少し奥を口蓋側に大きく上げると ウ と聞かせられます。

ウ の唇の形をしていると、舌各地の高さなど変えても、大抵 ウ と聞かせられます。
つまり 唇の形にこそ支配力が強い のが ウ の他と違う特徴です。

母音ごとに舌の形を観察

ウ については先程詳しく見たので、それ以外を見てみましょう。
ザックリといきます。
ぜひ御自分でも試して観察してみましょう。


かなり広い範囲で、舌の上面が地面側に下がります。
舌の先端より少し後ろが特にグっと下がる。
舌全体の形が、細いか太いか、と言えば細い。
舌が特に長い人だと、奥の方で少しせり上がりがあるかもしれません。
ですが、それは喉頭の位置(それでも倍音構成が変わるのは前述しましたね)にも左右されるかもしれません。


オの舌がリラックスした感じ。
さきほどグっと下がってた箇所が弛緩して少し上がる。
細いというほどでなく少し左右に揺るんだ太さ。


舌の上面全体がだいぶ上がる。
とはいえ、舌の先端は下の歯の後ろにブランとしてるのは全ての母音に共通。
舌の形は太い、というかペタリと横に拡げられ、
奥側の左右両端は奥歯に触れる。


エ のポジションから オの時にグっと下がってた辺りが口蓋側へグっと上がる。

ひるがえって観察しなおすと
 イ の時にグッと口蓋側に上がってる位置を少し後ろに持ってくと エ になる。
それを更に後ろに動かすと ウ が聞こえます。
その時上がってる箇所を少し下げ、それより前方もダランと弛緩して下げると ア。
ゆるんでフワリと浮いた舌、特に出口に近い辺りを下方にグッと押しつけると オ。

ざっくり言うと、
オ ア エ イの順番に口腔内容積は、
広い〜狭い
となります。

ここでの説明も、上の写真も
オ ア エ イと、領域区分がクッキリしてますが、
実際には、その 中間にあたる状態もシームレスに存在 します。
舌の動かし方としても、結果として聞こえる母音の響きとしても。

母音の舌操作が楽器音に与える影響_倍音とフラジオへの入口

ここまで長々と声の母音の話をしました。
ナゼかと言えば、先程の寄り道が大きく関わります。
マウスピースに近い所での環境変化
だからです。

口腔内の容積&形状の変化は楽器から出る音に大きく影響します。
以下ざっくりと関係性を並べます。
あ、この場合も絶対的でなく相対的な関係です。

口腔内容積が狭ければ
 ・高い音を出しやすい
 ・音色を明るくしやすい
 ・音質を堅くというかタイトでコンパクトにしやすい
 ・音量大小の出しやすさや扱いやすさには、さほど関わらない
 ・ピッチを上げやすい
 ・吹き心地の重い軽いにはさほど関わらない

ここでは「出やすい」でなく「出しやすい」といった能動的な言葉を選びました。
より積極的で探求的な操作への挑戦が必要だからです。

ここで解っておくとよいこと。
口腔内容積を狭めるということは、呼気の出口近くで、その通り道の断面積を小さくすること、です。

広ければ
 ・低い音を出しやすい
 ・音色を暗くしやすい
 ・音質を柔らかくしやすい
 ・音量大小の出しやすさや扱いやすさには、さほど関わらない
 ・ピッチを下げやすい
 ・吹き心地の重い軽いにはさほど関わらない

狭すぎると
 ・息苦しく響きの乏しい音質になりやすい
 ・低音域が出しにくく上の倍音にひっくり返りやすい

すぐ上の2つ目、良く言えば、
「出したい倍音を特定するのに役立つ」
ということです。
金管楽器のリップスラーみたいなことをしたいなら、この箇所の操作が最も効率よいってことです。

ってことは、、、これこそが
 ・フラジオ出したい
 ・倍音の練習、スムーズに始めて上達したい

を叶える本当の入口ってことです。

広すぎると
 ・ブラ下がりやすくなる、かも
 ・音高感の不明瞭に繋がりやすい、かも

…というか「広すぎる」に至るほどの操作は大抵難しいようです。
広すぎると思える状態はなかなか体験できません。
だから気にせず大丈夫かと。

そこを狙うと実は口腔内ではなく顎が下がって、上述の
「下の歯上端とリードとの距離」の「広すぎると」の症状に至りがちです。
そっちを気を付けると思うのがよいでしょう。

ちなみに、口腔内容積&形状と倍音練習の入口・フラジオなど詳しく書いたのが↓
『ギジレジで倍音簡単!』
 http://bit.ly/KT_gijireji

「ウ」の使い途

そうそう、面白いこと。
前項では仲間はずれにしてきた「ウ」。
意外と使い途があります。

サックスだと、第2オクターブの G と G# って、オクターブキーを押してても下に落ちやすく、混ざってゲロゲロした音を出しやすいですよね。

「ウとエの中間」とか「ウとイを混ぜたような」とかを試しましょう。
ウの時の、
 ・舌の「だいぶ奥」が少しせり上がること、
 ・舌の独特な細長い形、
 ・なんとなく細く出てく感じ
 ・舌前部の高さはイでもエでもアでもウと聞こえる融通
 ・倍音は少なく響きは乏しいとはいえ、ある高さ、を狙いやすい

そんな個性が音高特定性能を発揮してくれるのではないかと憶測してます。

クラリネットとサックスとで違う舌の可動域

サックスは本当に簡単に音が出ます。
パクっと適当に咥えて勢いよく息を吹き込めば鳴ります。
ちょっとやそっと噛み締めようが、マウスピースが上下逆だろうが鳴ります。

なので、たいていどんな音域でも、口の中がどんな風になっていようが、とりあえずサックスに聞こえる音は出てしまいます。
それが、楽器としての表現力の幅や、様々な奏者の期待する音への寛容の素なのでしょう。

それと比べるとクラリネットはずっと繊細な楽器です。
簡単に言えば、自由度とか融通はサックスよりずっと狭い。
丁度よさの幅がずっと狭い。
うまくイケテル時のアンブシュアから少しの揺らぎが大事件(サックスと比べれば、ですけどね)。

しかも「通常ここら辺だよね」という舌の位置が随分違います。
オ とか ア で丁度よいことは殆どありません。
基本的にずっと エ〜イ と思えます。
その狭い領域で、音域・音高・音色ごとに繊細な操作を求められます。

そのことを、特にサックスからの持ち替えの人は気を付けておくとよいでしょう。

口笛の効用

口笛を鳴らせる人は、音の高さをゆっくり変えながら、舌がどのように動くか慎重に観察しましょう。

鳴らせない人でも、フ〜とかス〜とかいった息のノイズは聞こえますね。
ウオアエイと舌の形を変化させてみましょう。
ノイズの音質・音色が変化するはずです。

つまり、舌の形が口笛の音高を決めています。

それは、管楽器での「出しやすい音高・音色の傾向」に、
舌の形により決定される呼気の状態
が大きく影響しそうだ、
って暗示を体験させてくれます。

音域を越える際の舌の動揺

サックスだと、第1&第2オクターブの行き来、
クラリネットだと、スロート音域とクラリーノ音域の行き来。
特に、近接した音で音域を越える時。

その時に、無意識に舌の奥の方をグイっと上げてしまう、
その結果、音高・音色・音量がタワムという症状が出やすい。
さぁ、何故でしょうか?

初心者のうちは難しい運指箇所ですね。
なかなかスムーズに繋がらず、間に要らぬ音が挟まったり、
思いがけず高い音(意図せぬ倍音)が鳴ってビックリしたり。

たいていは運指の工夫で解決されます。
ですが、それを身に付けるのには時間がかかります。
(素早く身に付ける方法はありますが、大抵は知らないので)

身に付くまではガムシャラにナントカしようとするわけです。
顎を、閉じる向きに動かしたりしやすい。
それ以上に何故か多くの人がやってしまうのが、
舌の奥の方一帯を口蓋側へグっと上げることです。

なにかしらイキオイをつけようといった無意識からでしょうか?
長期間続く失敗体験によって引き起こされる無意識ガムシャラな身体の動きの繰り返しは、癖となります。

初心者のうちから、すべき運指の工夫を知り、
充分な呼気圧と共に、無駄に舌を動かすことなく、
ゆっくりテンポでスムーズな行き来を繰りかえせば、妙な癖はつかないでしょう。

ではその「運指の工夫」とは?
、、、近いうちに詳しく書きますね。
少々お待ちください。
待てない方はレッスンにお越しくださいね。
オンラインでも伝えられる話です。

そのガムシャラ、あながち不合理でもない

音域を越える際に舌根あたりを無意識にグイっと上げてしまう件。
無意識とはいえ、あながち間違いでもない。

下の音域の上端は、呼気に対する反作用抵抗が小さい。
すぐ上の音域の下端は、それがとっても大きい。

つまり、昇る際には、素早く呼気圧を上げてあげたくなる。
それを簡単に実現する方法として、
呼気の通り道のどこかの断面積を小さくして、呼気速を上げるってこと。
呼気を起動する腹圧が充分な限り、その操作で呼気速は上がり、
「楽器からの反作用抵抗に負けて、リード振動を励起するに充分な呼気圧に至らなくなる」
という現象に打ち勝てます。

それを無意識に実現するのが、一つ前項目でのガムシャラな動きとも言えます。

ですが、
その動きは、音色・音質にタワミを生むので、避けられればベターなのは確か。

ガムシャラな舌根あたりの動揺を避ける方法

ではどうすれば避けられる?

下の音域の上端は、反作用抵抗が小さいと書きました。
大抵の楽器で、その辺りは
 ・音量が小さい
 ・音高の明瞭感に乏しい
です。

いずれも楽音の条件たる、整数倍の上音の存在の希薄(他の箇所に比べれば)に起因します(と筆者は分析理解してます)。

それら条件を逆に利用します。
他の音域よりも、多めに息をブっこんでやりましょう。
ただし、結果が佳き音に至るよう試行錯誤はしつつ。

そうすると「しかたねぇなぁ」って感じに、向こう側から抵抗が起ち上がってくれます。
つまり、
すぐ上の音域の下端での抵抗感に近づきます。
ってことは、
舌根あたりを持ち上げる操作は要らなくなります。
(運指が適切な限り)

最初は大きな音で試すと、そういった感触に触れやすいです。
舌根あたりの動揺(喉仏の動きとしても観察される)は減るのを実感できるでしょう。

そういった操作バランスを最初は意識的に練習し、
繰りかえすうちに無意識的に「いつでもそうなる」ようにしましょう。
それが練習の成果というものです。
音色・音質・音量の「段差」が減り、滑らかに繋がるようになります。

次に小さな音量でも、そのバランスの再現を試みましょう。
舌根あたりの動揺を抑え込むのは実に難しいです。
が、実現するなら素晴らしいことだと思います。
あまり神経質になり過ぎずに、時々注意を払って試みましょう。

リードに触れる唇の柔らかさ

この条件は2つの要素から変化が引き起こされます。
1)
 下の歯上端とリードとの間に、どれだけの量の唇が居るか。
 歯とリードとの距離により決まります。
 遠ければ厚く、近ければ薄くなります。

2)
 唇の引っ張り or オチョボ加減。
 引っ張れば_薄く_堅く
 リラックスで_中庸な厚みで_柔らかく
 オチョボで_厚く_堅く

2つの要素が掛け合わさって様々な
厚み と 堅さ
が得られます。

ですが、「厚く、柔らかい」を狙おうとすると、下の歯とリードとの距離が広すぎる状態となり、且つ唇はフニャフニャなので、まともな音となりにくい。
かなり薄いリードなら発音できますが、音程バランスはうまく作れないでしょう。

なので、結果の比較は
 ・薄く堅い
 ・厚く適度に柔らかいの2つで行い、
「柔らかすぎる」という評価軸も置きません。
2つ目を実現する身体の遣い方は、
 ・下の歯上端とリードの距離を、丁度よい範囲で遠く保つ
 ・オチョボ口を保つです。

 いちおうここで気を付けておくこと。
 噛み潰してしまえば、極端に薄く堅くなり、
 音色は、それで得られる一様な結果としかなりません。
 低い音域は出せず、いつもひっくり返ってる人、となります。
 なので「堅すぎる」という評価軸も置きません。

薄く堅ければ
 ・高い音を出しやすい
 ・音色を明るくしやすい
 ・音質を堅くしやすい
 ・大きい音は出せる
 ・小さい音は扱いにくい_練習次第ではあるか
 ・ピッチは上ずらせやすい_というか「操作可動域が狭い」
 ・吹き心地は軽やか(どっちかと言えば)

厚く適度に柔らかければ
 ・低い音を出しやすい
 ・音色を暗くしやすい
 ・音質を柔らかくしやすい
 ・大きい音は出せる
 ・小さい音を扱いやすい
 ・ピッチはブラ下がりやすい_というか「操作可動域が広い」
 ・吹き心地は重いとも言えないが、能動的操作の可動域を確保できる感じ。

リードに触れる唇の面積_シンリップ・ファットリップ

シンリップ( thin rip )奏法だと接触面積は、ほぼ奏者の体格によってのみ左右される条件。
ファットリップ( fat rip )奏法だと、操作可能な条件となります。
操作する際には、
 ・下の歯上端とリードの距離
 ・口輪筋操作による唇の堅さ
など諸条件と絡み合った結果、リード接地面積の「狭い・広い」は決まります。

シンリップは、下の歯の上に唇を巻き込み、薄く堅めな唇に狭い線状な箇所にリードを乗せる咥え方。
ファットリップは、オチョボでヒョットコな口にして、めくり出した下唇の粘膜部にリードが触れるほど、厚く柔らかい唇に広めの面積でリードを乗せる咥え方。

シンリップで陥りやすい問題。
「ただ噛み潰す」ことになってしまいがち。
歯とリードの間に唇を挟んでクッションにするそれだけで、確かに音はします。
ですが、精妙なコントロールは全くできないし、出せる音色・音圧・音高は、可変範囲が狭い。
なにより、短時間のうちに唇の内側の粘膜が傷だらけになり、痛い。
様々なコントロールを実現するための口輪筋も全く育たない。

コントロールできるシンリップ を目指すとよいのでしょう。
口輪筋を使い、挟み込んだ下唇を噛み潰さない。
実現したい 音色・音圧・音高 に応じて、微妙に歯とリードとの距離を操作できるように。
そうすれば痛くなるまでの時間は稼げるし、表情の変化幅も確保できます。

ファットには無いシンのメリット、、、と書き始めると、本稿の焦点がボケるので、、
※より詳しい説明は↓
『ギジレジで倍音簡単!』
 http://bit.ly/KT_gijireji

というわけで、
この項目での比較はファットリップだとして、
ってことで進めます。

狭めならば
 ・高い音を出しやすい
 ・音色を明るくしやすい
 ・音質を堅くしやすい
 ・大きい音は出せる
 ・小さい音は扱いにくい_練習次第ではあるか
 ・ピッチは上ずらせやすい_というか「操作可動域が狭い」
 ・吹き心地は軽やか(どっちかと言えば)

広めならば
 ・低い音を出しやすい
 ・音色を暗くしやすい
 ・音質を柔らかくしやすい
 ・大きい音は出せる
 ・小さい音を扱いやすい
 ・ピッチはブラ下がりやすい_というか「操作可動域が広い」
 ・吹き心地は重いとも言えないが、能動的操作の可動域を確保できる感じ。

クラリネットとダブルリップ

ほとんどの人はシンリップですね。
クラリネットの伝統的音色とアーティキュレイションのイメージに至ろうとするなら合理的です。
無駄な操作が少なくて済みますから。

とはいえ地球は広いので、ファットリップだからこそ出せる音色とか、音程操作など駆使してる人達も居ますね。

ソプラノサックスの高音域と同じく、
ファットリップやダブルリップを貫きつつ、音高をブラ下がらないようにするのは結構難しい、というか強靱な筋力が必要です。
が、
口腔内の操作でかなり補完できそうな印象を掴めています。

この点はまだまだ検証中なので、時が経って明瞭に掴めたらまた詳しく書きますね。

次はダブルリップの話なのですがクラだと…

クラリネットではほとんど甲斐の無い話かもしれませんね。
とはいえ、ジプシー系の奏者などには居ますね。
サックスのような角度にMPを咥えこむなら充分有り得る話です。
顔面にほぼ鉛直にMPを咥えこむ、ベルが正面を向くってこと。

普通の構え方、ベルが地面を向く構えの人でも、
「上の歯はガチっとはMPを捉え続けては居ないよ」
という人ならばダブルリップ的出来事は作用してるでしょう。

そんなことを踏まえつつ次の項目に進みますね。

上の歯がマウスピースに触れるか否か_シングルリップ・ダブルリップ

シングルリップかダブルリップかってこと。
シングルだと、マウスピースの振動は抑制され、
リード振動に伴って振動する マウスピース〜楽器 の振動は上の歯を経て頭骨に伝わる。

すると、頭骨の振動しやすさ傾向つまり骨という物質の持つ固有振動数は、マウスピースから先の固有振動数にもフィードバックされ、相互の傾向の掛け合わされた結果が音色に影響すると思われます。

固有振動数とは、物質ごとに共鳴し易い、つまり、その物質自体が振動しやすい周波数には傾向があり、その周波数のこと。

ダブルだと、マウスピースも振動しやすくなり、まるでダブルリードのように挙動する。
頭骨からの影響はシングル時と比べれば少なくなる。

マウスピースも楽器も硬く、ガッチリと固定されてるから、マウスピースの振動は楽器にばっちり伝わる。それは管体内の空気の振動(気圧の周期的疎密)に影響を与え、音色に変化をもたらす。

結果的にダブルはシングルより大きい音は出しやすく、
奏者の体格よりもマウスピースと楽器の物質的個性つまり固有振動数が音色に影響する率が高まります。

逆に言えば、
シングルだと音圧大小差は狭くなり、
奏者頭骨の物質的特性と体積、それを取り巻く柔組織の個性による音色への影響はより強くなります。

そういった違いはありますが、この条件については上に並べてきたような比較対象は一様にはしにくいです。
奏者の習熟度次第で、どうとも転べるからです。

リードを噛み締める強さ_ひっくり返り・ノンラッカーの楽器・クラウドレイキーの呪い

強く噛み締めればリードとマウスピースの振動は抑制されます。
音色成分のうち、より高い所・より低い所から減少します。
上端と下端が削られると言えば解りやすいでしょうか。

より高い所の減少は、つまり倍音成分の減少。
キラキラした成分が減り、虚ろな音色となります。

トレヴァー・ワイ先生が言うところの「紫色な音」。
ですが先生のおっしゃるのは、暗いが響きを充分に湛えた音。
上記方法で出せる虚ろな音は響きの貧弱なモソモソとしたものです。

「響きを充分に湛えた」とは、
上音群を基音の正確な倍数な周波数で持つという事。
それらによる相互共鳴が基音の音高を明瞭にしつつ豊かさを人に感じさせる、と筆者は捉えています。
尚且つ、低次域倍音群を割合として多く持つのを「虚ろ」と呼ぶのだと理解してます。

※ その記述を含むトレヴァー先生の教本↓

対して「モソモソした虚ろな音」は、
基音周波数の正確な倍数でない上音を多く含む為、
そういった相互共鳴が起こらない結果、基音の高さを明瞭に感じにくく、不規則な上音成分はササクレタ雑音と感じられる。
そんな音のことです。もちろんこれも音楽表現に用途はあります。

※「上音・倍音とは」は↓こちら

さて、より低い成分の割合的減少は、いわゆる音の芯の減少に繋がり、力強さと音高特定性が脆弱になります。
度が過ぎると基音が鳴らなくなる、つまり「ひっくりかえり」=「より高い倍音が主人公に聞こえてしまう」という現象を引き起こします。

噛み締めずとも、マウスピースの特性によっては、どうしてもそうなることも有ります。
ただし、頑なな設計理想の基に丁寧に作られたものなら、時間をかければ出し方を身につけられる場合もあります。
実際、筆者が今使ってる SaxZ 製の超ハイバッフルなテナーMP、最初は低い音を全く出せなかったが数ヶ月悪戦苦闘したらブリブリと使える様になってます。
つまり、一瞬しか試せないような状況で書かれる、雑誌のマッピインプレ記事は慎重に読み解かねばってことです。

さらに余談ですが、ラッカーを塗らないサックスは高次倍音成分が増えます。ラッカーを塗るとそこを抑制する証しですね。
ところが、高次倍音が増えるのも程度問題で、良いことばかりではない。

比率的に基音成分が少ないわけで、音圧は出てても、音高特定性は脆弱になります。
それは、ラッカーにより抑制される帯域が、とても高次の倍音域で、基音が平均律と一致していてもその辺りは一致しない音高を沢山含むのにも依るでしょう。

なので、楽器本体の裸の音響特性次第で、ラッカーを塗ると丁度よかったり無かったりは左右されます。
簡単に言えば、ノーラッカーだからイイ事ばかりではないよってこと。実際に同じ設計の楽器でラッカー有無の差を検証した体験からの印象です。

もひとつ余談。
クラウドレイキーのマウスピース、音色は気持ちイイけど音痴になりやすいのも同様な倍音のイタズラだと憶測してます。

話を本筋に戻します。
噛み締め過ぎは音色に限って言っても、こうした問題の原因になります(奏法上ほかにも沢山の問題要因ってこと)。

対して、噛まなさ過ぎ。
音が出ないか、変な音色になるか、ビッチが下がります。
なので、快い音色とピッチが保てる範疇で
”最大限弱”の噛み締め緩さを狙うのが良いでしょう。

「弱」とは、そうすることで表現操作領域を双方向に確保する為です。
音色やピッチ表現の幅を一方向にしないってことです。

※そういったアンブシュアを体得するのに効率よいトレーニング方法を↓に書きました
、ん、
あれ?、、
、、、って気がしてるのですが、、Facebookにだったかなぁ〜、、探しておきます。
けど、すぐに知りたい方はレッスンのお問い合わせどうぞ。
オンラインでもお伝えできます。

呼気流量

ある時間単位でどれだけの体積の呼気が楽器に入るかってこと。
単純には音量に作用します。
多ければ音量が上がる少なければ下がる。

ただし、上に並んだ諸条件と絡み合って結果に作用します。
条件次第でダイナミクスレンジ(出せる音量の大小の幅とその位置)は変わるし、音色への影響の仕方にもバラエティが生じます。

シンセサイザー的に言うと、呼気流量というトリガーを、設定次第でどのパラメータに作用させるか or させないかは操作可能だ、ってことです。

測定範囲としてゼロは有り得ます。
そこから無段階に数値は上がります。
ですが、楽器・マウスピース・リードの組み合わせ次第で、最大値は決まるでしょう。

この「最大限界はあるぞ」っていうのが意外と大事なことと思えてます。その点詳しくはまた稿を改めます。

この条件の音量以外諸結果への影響については、上に並べたような比較一覧はしにくい。
ですが、吹き心地については、、
突っ込める流量の最大点に近づくほど重さ(楽器側からの反作用抵抗)は感じられます。
とはいえ同時に、身体から出ていく息は多く「うわ〜出てってる〜!」という感覚もあり、さほど重さとしては問題にならないでしょう。

これは、
 ・楽器側が備え持ってる抵抗とのバランス
 ・流量を甚だしく増やすと起ち上がる新たな反作用抵抗とのバランス(筆者観察結果による)
にも関わる考慮ポイントです。
下に書く「呼気圧」とも関わるので、ここではこれくらいにしておきます。

呼気流量のエネルギーが音に変わる割合とノイズ

音造りにとって、あまりに大切なので項目を改めます。

ピアニシモで、雑音が無く、良い響きの音を出せてる時。
その時、呼気の殆どが音に変わってる、と言えるでしょう。
 ・呼気のエネルギーと
 ・リードの弾力など呼気に対する反作用エネルギー
とのバランスが「無駄なく丁度よい」わけですね。

その状態を保つ限り、呼気流量を上げるにつれ、雑音の無いまま、音量は上がります。
理屈としてはそうです。
つまり、実際なかなかそうはいかないってことです。

いや、試みれば出来ることなんです。
けど、実際の演奏において、その結果は快くないので、大抵の人は、そうは「しにくい」のが本当のところかと。

「快くない」と感じずに居られる人だと、そのままできちゃってる例もあります。
言い方は心苦しいですが、アマチュアの演奏ではよく耳にします。

なぜ快くないのか。
小さい音が雑音無くウマク出てる時、倍音がイイ感じに含まれてるとします。
つまり快い音色だとします。
 (もちろん意図的に、より虚ろな音にもできますが)
雑音の無いままに呼気量を増やし音量を上げていきます。
すると、比率的に倍音成分はどんどん減り、基音ばかりの、大きな虚ろな音、となります。

その音色・音質を快く思えない、としたら、我々は自然にそれを回避するのではないでしょうか?
その音が好きならそのままでも一向にかまいませんけど。

呼気の一部だけを音に変えて、残りを雑音とするそんな吹き方は可能です。
それができれば、音量をかなり上げても、倍音の含まれ方はガッカリした感じになりません。
ただし、ある程度以上に呼気量を上げるとやはり、倍音は減っていきます。
なので、快い音色・音質を保てる最大限の呼気量という境界線はありそうです。

次に、そういった 雑音ありきの吹き方 のまま呼気量を減らします。
つまり音量を下げます。
すると、小さくても倍音を豊かに含む、響きのしっかりした音となります。

そんなことをできる為にも、
 ・噛みしめない
 ・下の歯上端とリードの距離を充分に保ち続ける
…は大切な入口となります。

よく耳にする「遠鳴り」する音って言葉。
小さな音でもホールの最後列までしっかり届くような。
それにも関わる条件だと思われます。

呼気速

呼気流量の話と同じなようで微妙に違います。
同じ呼気流量でも、ソプラノとバリトンとで変わる条件。
通過経路の最も小さい断面積により変化します。

その最も小さい箇所がドコニアルカでも変化します。
その「箇所の変化」はマウスピース入口が最も重大です。
チップオープニングのサイズで、呼気が通過経路の最小点(この段階では)が決定されます。

呼気流量が同じならば、
 ・広ければ緩やかに
 ・狭ければ速く

そこ以前に大きく可変な条件として、口腔内形状も重要。
 ・オやアなら緩やかに
 ・エやイなら速く
つまり、MPのチップオープニングよりも狭くできるならば、それにより決められるよりも速い呼気速を身体で作れるわけです。

複数箇所での出来事が複合的に結果に影響すると憶測してます。
この点は現在の研究課題です。

水遣りホース。
充分な水圧があるなら、出口をキュっと摘まめばピューっと出ます。
水圧が不充分だと、摘まんでも変わらなかったり止まったりします。
さてまた水圧充分な時、出口よりも少し奥を摘まんでみましょう。
摘まんだすぐ後ろにはピューが起きてそうですね。
ですが、出口に至るまでに緩やかになるばかりか、摘ままない時よりも流量は減ってるので、摘まみ点と出口が遠いと、弱く頼りない射出になってしまうかもしれません。
摘まみ点から出口までの距離に「丁度よい」ポイントはあるかもしれません。
、、、そこら辺が主な研究対象です。

さて、この条件も、出しやすい音高つまり音色に影響します。
(出しやすい音高が変わるということは、倍音構成を変化させるということだから)
この条件も絶対的でなく相対的です。
上記諸条件とも絡み合って結果に作用します。
絶対的な音高・音色・音量と、逐一一致的な条件ではないってことです。

速ければ
 ・高い音を出しやすい
 ・音色を明るくしやすい、、注記下記
 ・音質を堅くしやすい、、注記下記
 ・音量大小の出しやすさには、さほど関わらない、、注釈下記
 ・ピッチは上ずらせやす、、注釈下記
 ・吹き心地は、、、注釈下記

遅ければ
 ・低い音を出しやすい
 ・音色を暗くしやすい、、注記下記
 ・音質を柔らかくしやすい、、注記下記
 ・音量大小の出しやすさには、さほど関わらない、、注釈下記
 ・ピッチは下げやす、、注釈下記
 ・吹き心地、、、注釈下記

ピッチについてはスピードを上げる為の操作
「口腔内容積を狭める・拡げる」
それ自体が音高に与える影響が大きいと思われます。

音色・音質についても、スピードを上げる為にオやアでなくエやイという舌の位置と形とする事自体の影響が強いと思われます(その逆もまた然り)。

音量については、
 ・流量が少なくても速い
 ・流量が多くても遅い
…が有り得るので、流速が一概に音量に影響するとは言えません。

それを簡単に実感できる実験法があります。
ん〜、ここで書くと長いんで、、また稿を改めますね。
速く知りたい方はオンラインレッスンの問合せヨロシク。

吹き心地については、結果的な流量によると思われます。
 ・同じ音量で、違う呼気速
つまり、
 ・流量は同じだが、通過経路の最小断面積に違いがある
…という条件を上手に再現できれば、吹き心地重さの違いを観察できます。
が、、正直に言うと、何故だか観察のモチベイションを保てずに居ます。
音色・音質の変化が面白くて気持がそっちにばかり行くからかもしれません。
ともあれ、次項目「呼気圧」に関わることなので、ここではそれくらいにしておきます

呼気圧

身体だけでは起こりえない概念かと。
楽器奏法について云々する限りは。
呼気のエネルギーに対しての反作用ありきで考えられる条件だと思ってます。

もちろん身体諸器官の働きを観察して説明する際には、語りうる言葉です。
それも管楽器奏法を考える上には重要な知識です。
ですが、本稿で述べてきた一連の概念の中でこの言葉を使うとしたら、ってことです。
一般的なカラダの話はまた稿を改めて詳しく紹介します。

口を大きく開けて「はぁ〜〜っ」と、
口をすぼめて出口を小さくして 「ふぅ〜〜っ」 とでは、
同じ呼気流量を目指すならば、 身体の「頑張り方」が変わります。

出口の抵抗が大きいほど、 身体は、より頑張ります。
つまり、 出そうとする圧力を高めます。
それが、
「呼気が作用する相手からの反作用に応じて変化する呼気圧」
で、管楽器奏法に於いて考慮すべき呼気圧の1つ、です。

それを実際の楽器に置き換えて考えてみましょう
、、、
えっと、、
この話は、 マウスピースやら楽器やらの
吹き心地が重い・軽い
って話に深く関わるのですが、、
その件は、実は一筋縄ではいかないようです。
錯覚なども働き、実は一連の感覚ではないようです。

それはそれで深掘りするのが面白いことなので、今日はここら辺にしますが、また稿を改めて掘りますね。

吹き込む角度

これもよく耳にします。
えっと、、、
「楽器に呼気を吹き込む角度により、○○とか△△とかが変わる」
本当でしょうか?

「…か?」って書くってことは、筆者はそうは思ってないってことですけどね(^_^;
この件は、愉しく長くなるので稿を改めますね。オタノシミに(^^)/

 

長い話にお付き合いいただき有難うございますm(_ _)m
より具体的に、実感を伴いつつ理解したい、
と思われたならオンラインレッスンをどうぞお試しください。
御希望の方はコメント欄に気兼ねなく書き込んで下さいませ。
よろしくお願いします♪

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