フルート、ロックストロポジションとは?

フルートの構え方の考え方の1つです。
1890年にイギリスの Richard Shepherd Rockstro さんが書いた「The Flute」という教則本で最初に紹介されました。
ですが、その本が余りにも巨大でマニアックだったことなどが災いして歴史の闇に消えつつありました。

この10数年、機会あるごとに教えを頂いてるトレヴァー・ワイ先生にその詳細と活用の実際を伺いました。
その上で自分の実践の様子を 2016年4月8日、FBページに書きました。
以下、それを読みやすく清書して再掲します。

ここにそれを再掲したのは、
「アルタス・フルートは内吹き推奨」という記述を多く見かけるからです。

それは誤解でしか無いと思ってます。

原因は先ず、取説での記述の不親切。
そして、
「内吹き・外吹き」という用語と
「他のメーカーよりは頭部管を内向きに設置すべし」
という言葉との混濁です。

ウチブキウチムキ 似てますよね?
聞き間違い、或いは誤記と想像してます。

その誤解の流布をメーカーも販売店も放置してる様子をもどかしく感じてます。
それについて詳しく書く前に、ロックストロポジションを紹介せねば話が始まらないのです。

アルタスに独特のスケーリング(音孔の位置&大きさの設計)を創るのに貢献した、ウィリアム・ベネット先生とトレヴァー・ワイ先生の構え方はロックストロ・ポジションを基本にしつつ巧く御自分にアジャストされてるからです。

というわけで、、、以下引用本文です。

ロックストロ・ポジション

という名のフルートの構え方にこの数年トライしてます。
どんな持ち方でも各自快適なら構わないんですけどね。

トレヴァー・ワイ師匠のレッスンで初めて聞いてコリャ佳い!と試してきたが、どうも巧く行かない。
ですがこの数日、例の運指高速化練習してる内にコツを見つけました。
こりゃ快適!

構え方の原理

どんな構え方か。
音孔が空を向かず客席側に見えるような向きにする。
すると所謂「2点支持」を実現でき、唇に余計なプレッシャをかけずに済む。

唇が押し潰されると「響きが止まりがち」でアンブシュア操作も不自由になりがち。
おまけに長時間吹くと下唇が痛くなりがち。

潰さなければまるで口笛を吹くような自由さで唇を操作できる。
頭部管は普通よくある構え方よりもかなり「内側向き」に組み立てることになる。

2点支持とはいえ、唇は触れてるし右手小指も少なからず楽器安定に寄与する。
しかし、右親指と左人差し指(の付け根)以外の全ての指が楽器の「重さ支持」から解放される。
正確に言うならば「どっちかと言えば2点支持」となるかと。

重さを支えるのは2点で、
向きを支えるのはその都度チャンスのある「触れてる箇所で」、
と思えば、この構え方を2点支持と呼ぶのも納得できます。

が、そうした呼び分けはドウデモイイことです(^_^;

「2点じゃ無いじゃないか!」とか目くじら立てる人も居ますが、構え方を考える上での本質には関係無いことだし、
その結果として至ろうとする音楽の姿にも全く無関係なので。

困難と解決策の発見

さて、試してみると困ったことに…
解放 C#の時に楽器がコチラ側に転がりやすく楽器が安定しない。
真ん中の C-D 往復の際にもグラグラする。

唇を堅く潰してないので、楽器の動揺はアンブシュアと、結果の音に大きく影響してしまう。

ですが!
この数日の練習で発見しました。
右手首を少し曲げて持ち上げると転がりが止まった!

真横から(=奏者の顔の左側から)見ると、
右親指と左人差し指付け根とで「Vの字」を造り、そこに楽器が乗る。
おまけに、左手首を極端に反らさずとも「乗せ」られるようになった。

3点支持とデメリット

さて、一般的な「3点支持」。
2種に大別できる。

1)右親指腹で「向こうに」押す、左人差し指付け根で「こちらに」引っ張る、唇にグッと押し当てる。

2)右親指腹で「斜め下から」持ち上げる。
1よりは唇へのプレッシャは少なくなる。
ですが基本的には1と同じ、で、それに加えて、右手小指が親指との「挟み込み」で楽器支持に活躍する。

1)だと楽器は安定し易いが、唇を押しつけた結果の弊害が起こり続ける。右親指の痛みも起きやすい。
2)だと右小指が痛くなり易い&小指を離す時に楽器が揺れやすい。

ロックストロではそれら問題とは無縁となります。
、、、他の問題は起きます、けどね (^_^;

トレヴァー先生からの2つの教え

トレヴァー師匠はもう2つ素敵なことを教えてくれた。
「右手親指は腹でなく側面で楽器を支えるべし」

人の手が最もリラックスしてる時、親指と他の指の腹は90度ソッポを向いてる。
ソノママの形の親指に楽器を乗せろと。
そうすれば、親指以外の指達は最も自由に動けるんだと。
はい、観察の結果、そう感触できます。

左親指も「腹でキーを操作せず側面で」となる。
左親指のキー操作には大した力も距離も不要なのでそれで充分。

2つ目は、
「右親指は人差し指でなく中指の下に」
すると、足部管操作の際に右手の位置移動は無くなり、無駄な動きを減らせる。

実はこれらこそロックストロさんの言ったとおり、ということみたいです。

更なる課題

上述「逆V字の発見」は我ながら目ウロコだったが、新たに微細な問題が浮上。

左小指、右薬&小指を「押す」操作をした際に、頭部管が少し持ち上がるような動揺を起こしやすい。

楽器が「2点」にポコンと乗ってるだけだからかと。

右手については、親指位置のよりよいポジショニングが解決すると予想してるが、左小指については模索中。

たぶん、左小指を動かす時、同時に右親指での「持ち上げ」を少し足すという組み合わせタイミングを身に付ければ…と想像中。

その点はフルート専門家からの御指導ご鞭撻を乞うところで御座いますm(_ _)m

☆参考 URL
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/…/question…/q1150620426

後日追記、右親指に「乗せる」理由

曖昧に書いた点を詳しく説明し直します。

「90度ソッポ」と書いたのは大雑把過ぎました。
個人差はあるので「数十度」くらいにしとけばよかったかと。

「人の手が最もリラックスしてる時」ってのも曖昧に過ぎました。
そこら辺を深く掘り下げます。

手指を緩やかに伸ばした状態で
掌を下にして、机の上にポンと投げ置きます。
肘より先が脱力してるなら大抵、
指先と手の踵(かかと)は机に触れ、
親指は付け根一帯と爪辺りの側面(人差し指と反対側の)が机に触れるでしょう。

人差し~小指は軽く弧を描き、第3関節(付け根)は
机表面から数センチ浮き上がり、各指先間は1~2センチ程離れる。
各指を「線」と捉えるなら親指と人差し指はほぼ並行となるでしょう。

勿論ここで個人差はある。
閉じる働きより開く働きがより優位な人だと、
机上にポンと置いた時に、人差し~小指第3関節が机に触れ(るか、より近づき)各指は伸び、
親指は人差し指より少し外側を向き、親指の腹は30~50度ほどの角度で机側を向くでしょう。

その場合「強いてですが」第3関節(指の付け根)を机上から持ち上げ、人差し~小指を伸ばしきらず軽く弧を描くようにします。
その結果、親指は人差し指側に近づき机には側面が触れるようになる。

なぜ「強いる」かと言うと、この先の話はその形がスタート地点となるから。

では、そのままの形で手を宙に持ち上げます。
親指を曲げたり戻したり。
親指の腹の方向に第1&2関節だけを屈曲させる&戻す、です。

第2関節よりも手首側の操作で親指全体の「地面に対する角度」を変えないように。
戻す際に元の位置より開いたり反らしたりせず、あくまでも「戻す」ということで。

その結果、親指先の描く軌跡を観察します。
空中に描き上がる「線の方向」を「A」とする。
 
次に、人差し指を軽く曲げたり戻したり。
その軌跡の方向を同じく「B」とする。

2つの「軌跡の方向」を、手首側から指先側に見ると、
筆者の場合、AとBがほぼ直角に交差する。

なので「90度」と書いたが、人によって角度は様々なようです。

実は自分でも左右で違う。
右はほぼ直角だが、左は20度ほど傾く。
つまり、親指が右上から左下に向けて動く。
長い間にサックスとクラリネットでついた身体の癖なのかと。

さて、親指を軽く曲げてから人差し指を曲げるとブツカる。
その時、親指の腹には当たらない。
筆者の場合、親指の爪の上端外側角に人差し指があたる。

親指を「軽く曲げ」ず、外側にも反らさない位にすると、人差し指が親指の腹に触れられる。
だがその場合、
人差し指の腹ではなく側面があたるはず。

右親指を反らせつつ時計と反対方向に数十度ヒネ(外転させ)ってから人差し指を曲げれば、親指と人差し指の 腹同士 は出会える。

ただし、各指の先端が向く方向は、ほぼ90度ソッポを向く。
 
 
。。。蛇足ですが、、90度ソッポを向かず「親指と人差し指は同じ先端方向を向きつつ腹同士をくっつけられる」と豪語し、それに基づいてカラダノツカイカタを云々される向きも見かけます。が、科学的視点とはナニか、を冷静に考えれば蒙昧に人生の足元をすくわれずに済むかと。。。
 

おっと、話を戻します (^_^;

じっくり観察するとそのヒネリとソラシが、手の甲側の手首周辺に緊張をもたらすのが判る。
その緊張は、人差し~小指の運動に負担をかけるようだ。

それは、ヒネリソラシした時としてない時とで、
人差し~小指を動かしたときに、
肘から手首までの「指を開閉する仕組み」の「頑張り加減」を観察すれば解ります。

つまり、そのヒネリソラシの無い方が人差し~小指の動きに障害は少ないわけ。

それが、右親指側面に楽器を乗せる理由です。

 
ここでまた個人差へのケア。
AとBの為す角度が90度で無く、右親指が左下から右上に軌跡を描く場合。

つまり、親指の腹で楽器を支えても
「たいしてヒネったことにならない」ならば、
その人は、親指の腹で楽器を支えてもヒネリソラシというネガティブな状況は生まないので大丈夫でしょう。

それが「人によりどんな構え方でも構わない」の理由。

 
さて、右親指側面に楽器を乗せるとする。
親指(その先端と第2関節の描く線)が地面と平行だと、
真ん中のド~レとかド#~レとかの時、運指タイミングが悪いと身体側に楽器が転がってくる。

それを抑える為、親指先端を地面側に手首側を空側に傾ける。結果的に上述のロックストロな形となる。

右親指のことばかり書いたが左親指も同じく、反らせて腹でキーを押さない方が、人差し~小指の自由を確保しやすい。

ピアノだと親指は側面で打鍵しますよね。
それを見れば腹で触れなくてよいのは明かだし、
ピアノよりずっと短いストロークかつ弱い力で動くキーなので、
 ・触れるのは親指の側面(爪の上端内側角)
 ・第1関節のほんの少しの曲げ伸ばしでキーの押し離し

…で、充分なはず。

というわけで、
手指のリラックスしたときの形が筆者と似てる人には、ロックストロへの挑戦をオススメします。

世の中、知らねば知らずで済むけど、
知ってるなら試しゃいいのに、ということは多い。
試さずして知識の持ち腐れにするのは勿体ない、と思います。

  

ちなみに、ロックストロ・ポジションの実践は↓の本でより整理した形で紹介してます。
『フルートWarmUp 一石三鳥!! _ おまけ:初めての音階とアルペジオ_』
 http://bit.ly/KT_FluteWarmUp

と、↓で「内吹き・外吹き」という言葉を明解してるのでぜひ御参照くださいませ。
https://saxbaritake.com/flute-uchibuki-sotobuki/


というわけで次回は、
アルタス・フルートは内吹きを推奨してるわけなんかじゃないよ、
ってのを書くつもりにしてます〜♪

 
☆トレヴァー・ワイ先生の教本、各段階の入口を御紹介☆

☆アルタスの入口☆

☆頭部管と全体設計はアルタスでお値頃なAZUMI☆

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