「倍音きけ~!」って言われたってムズいっぺよ…って感じてました。
けど、この数年で「なんだ、きこえるじゃん」って。
特に聴き分けやすいクラリネットと仲良くしたのが耳を拓いたキッカケみたい。
ムズいって思ってた頃に書いた記事↓
、、、前言撤回 (^_^;
積極的に倍音を聴き分けて、演奏に活かしていこうべ!って今は思ってます。
倍音に興味を持ち、聴き分けられるようになると…
・主音に基づき、あるべき音高を意識して作れるように。
・アンサンブルの中で望まれる音程を作れるように = ハモれるように。
・旋律や和声に現れる様々な音高や音程の色彩を感じ取り、表現に活かすように。
…といった効果に繋がります。
倍音列表
早速ですが倍音列表。考えやすいように基音を C とします。
五線の上のアラビア数字は登場順。「第○次倍音」と呼ぶときの ○ に入れる数字。
実は、
順列のみならず、この倍音列全体(すなわち基音のサウンド総体)に対しての不協和度を示す数字ともなります。
下のローマ数字は、Cメイジャースケールをモノサシの目盛としての順列。
Cメイジャーの第1音はⅠ、第2音はⅡ…。ディグリー(音度)って呼ばれる奴です。
玉の色分けは、ピッチクラスを見分けやすくするため。
ピッチクラスとは「C音はオクターブが変わってもC音。だからC音は、どのオクターブにあってもC音という属性に属する」といった概念。
面倒くさい説明ですみません (^_^;
簡単に言えば「○って音ですよ、どのオクターブでも」ってこと。
特に何回も登場する音に色をつけました。
ローマ数字の下に時々書いた「プラスマイナス○○」って数字は、平均律での音程と、どれだけズレてるかを「○○セント」で書いたもの。
1セントは平均律での半音の 1/100。つまり 50セント は半音の半分。
音によっては平均律と随分ズレてるわけです。
本当は割り切れる数字にはなりませんが、小数点以下を四捨五入しました。
それらのズレ、筆者は難しい数学は苦手なので既存の資料から写しました。
例えば、Wikipedia「倍音」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%80%8D%E9%9F%B3
目に付いた資料では 16倍音までしか見つからなかったので、それ以上は空欄になってます。
難しい計算をしてくれる人が居れば助けてください m(_ _)m
ちなみに「純正律」のズレと一致するとこもあれば、そうでない所もあります。
自然倍音列は天然モノで、それを利用しつつ手を加えたのが純正律、、
と思えば佳きかと。詳しくは↓
倍音の聴き分けと音程の導き出し
実際に聴き分けやすいのは↓の範囲。
音源の状態と環境次第で更に上まで聴き分けられることもあります。
これだけでも「長三和音=メイジャーコード」の純正的な響きを体験し、幾種類かの「音程(音高間の距離)」を見いだせます。
( +2, -14 は平均律からのズレを表示)
この3音からは、
完全5度 _ Ⅰ~Ⅴ
長3度 _ Ⅰ~Ⅲ
短3度 _ Ⅲ~Ⅴ
といった「音程」が発見されます。
その転回形として、
完全4度 _ Ⅴ~Ⅳ
短6度 _ Ⅲ~Ⅰ
長6度 _ Ⅴ~Ⅲ
も導き出せます。
つまり、それらの音程は自然現象の中に「自ずと存在する音程」として捉えられます。
(のちに詳しく説明する「トニックとの距離を測る為の音程」とは一致しませんが、ざっくりと、です)
7音音階を構成する音程群のうち↑に登場しないのは、
長 or 短2度 長 or 短7度
ですが、
完全5度を2つ重ねれば長2度は発見され、
その転回形として短7度も見つけられます。
長3度と完全5度を重ねれば長7度、
その転回形として短2度。
(「和声的○音階」を構成する「増2度」は人工的音程として今の考慮からは外しておきます。)
結果として、長三和音の3つの音から見つけられる諸音程を組み合わせれば、
12半音の組合せとして見つけられるあらゆる音階の音程関係を特定できます。
だから、長三和音に含まれる音程を、倍音列に適った姿で認識し扱えることは、あらゆる音階と和音を「捉え、扱う」スキルの入口となります。
厳密には、平均律とか純正律とかいった「調律法」にかなった音程とはならない組み合わせも多いですが、大体は掴めるわけです。
倍音列と協和度(調和度)
空間に「ある1つの楽音」が起こると自然倍音列も自ずと含まれます。
そのうち「素の音とは違う高さの音=素の音とオクターブ関係に無い音」
は、倍音列の早い内に現れるほど、聴き分けやすく素の音との調和度が高い。
「調和度が高い」とは、、
素の音(■)とは別の音源で、素の音と別の音高(▲)を鳴らした時に、
「溶け合って、まるで1つの音と聞こえるよう感じられる」
ということ。
音楽の世界の言葉では調和度が高いことを「協和度が高い」と言います。
以後その言い方を使います。
第1倍音=基音と第2倍音はオクターブだから、まるで1つの音と感じ易いのは誰にも想像しやすいでしょう。
第1と第3は オクターブと完全5度、それも協和度が高い。
第2と第3の 完全5度 も類似の協和性を感じやすいが、ナニカが起こるのは観察すべき点でしょう。
・第1と第5 ・第2と第5 ・第4と第5
・第3と第4 ・第3(≈ 第6)と第5
といった関係にも、快くナニカが起きます。
「ナニカ」とは、いわゆる「ハモリ」と呼ばれる現象です。
倍音列と不協和度_ハモリ・ニゴリ・ウナリ
▲が■の倍音列にて、より遅くに登場する音高だとその2音のハモリ現象は、より快くないものとなります。
それは現象の仕方や程度により、ウナリやニゴリとして感じられます。
その起こり方の程度次第で、暗さや、不協和と呼ばれる不快感を感じさせたりします。
ですが、音楽的文脈やスタイル次第では不協和こそ「リッチな響き」と感じさせもします。
不協和度で音階/和音の明暗を数理的に測る
第○倍音の「○」の数値が低いほど=倍音列での登場順が早いほど、
基音(素の音■)とその倍音列に協和度(≈ 明るさ)が高いと言えます。
逆に「○」の数値が低いほど不協和度の高さ(≈ 暗さ)を示すとも言えます。
一般的には「周波数比率が単純なほど協和度が高い」という説明をしますが「登場順が…」って言い方のほうが直感的なので筆者は好きです。
さて、倍音列に登場する音をピッチクラスで整理します。
倍音列のより早い内にいったん登場した「素の音とは違う音」とオクターブ関係にある音を除外して並べます。
すると「素の音とは違う音」が登場する順番は↓となります。
(1オクターブ以内に収まるようにオクターブ関係を操作した結果)
空間に■が鳴れば、自然倍音列も自ずと生じます。
つまりどんな▲も、■の自然倍音列に含まれる各音との音程関係によって生まれる「協和・不協和」によって、明暗などの性格が認識されます。
「暗いと感じる理由」をサラっと言えば…
ウナリ=極低い音は得体の知れない大きなものの忍びよりを感じさせるものです。
怖いじゃないですか。それが人の心に暗さを印象させる、のだと筆者は想像しています。
学術的定説ではありません。筆者なりの理由です。
▲が1音だけの場合は単純に明暗を識別できます。
複数の場合は、不協和度を「掛け合わせて」測れるでしょう。
その発想は筆者独自のものなので、そう仮定して話を進めます。
たとえば、C音が■な時に…
が鳴れば■の生む倍音列との不協和度は、1×5×3=15
と捉えられます。
ならば、1×19×3=57
つまり先程の Cメイジャーメイジャーコードの不協和度 15 よりも 42 だけ不協和度が高いと言えます。
コードだけでなく、旋律中のある特定の音群や音階にも応用できます。
↑ Cメイジャーペンタトニック_ 1×9×5×3×13=1755
↑ Db メイジャーペンタトニック_ 17×19×21×25×7=1187025
↑ Cリディアン b7=倍音列に最も早い内に内在される7音音階
9×5×11×3×13×7=135135
Cメロディックメイジャー = いわゆる ハ長調、
最も聴体験が高く、とても明朗に感じられますが
9×5×21×3×13×15=552825
Cメロディックメイジャーは、自然倍音列との協和度に限って言えば、Cリディアン b7 よりも不協和だ、となるわけです。
(だからこそメロディックメイジャーは機能和声的音楽を代表する音階となり得たし、リディアン b7 は、より旋法的音楽に向く音階と言えるのですね、、って、よく解りませんよね (^_^; 上に紹介した「音階の生い立ち…」のページに詳しく書いた、っけ…)
この方法に依れば、これまで曖昧に語られてた和音の明暗などを数理的に整理できます。
この考え方は、
ある音楽演奏全体あるいはその一部が「ある音高≈主音」を中心に様々な音高の色彩や捉える、
つまりトーナルセンターという概念ありきでの発想です。
世の中にはトーナルセンターを感じさせないのを意図して作られる音楽も有り得ますので、その場合は違った捉え方が要るのでしょう。
なぜ4度と6度は不協和なの?
それらは
「音程と、それがもたらす協和/不協和性」
を観点にするならば協和度が非常に高い音程です。
一般的な「音程と協和性」の説明ではそれで終わってしまいます。
周波数比率は極単純ですから、ってことで。
実は、平均律では必ず複雑な比率になります。
純正律では極単純。
・完全4度 3:4、
・長6度 3:5
・短6度 5:8
純正律とは 第5倍音までに登場する音程のみを利用した音律 です。
「Ⅰから、Ⅳから、Ⅴから」の3つの倍音列の第5倍音までの音、
を組み合わせると7音から成る長音階をうまく満たせるし、
Ⅰの和音、Ⅳの和音、Ⅴの和音、それぞれは美しく協和します。
Ⅰの音群を基準とすると、Ⅳの音群は2セント低く、Ⅴの音群は2セント高くします。
それでⅠとⅣ、ⅠとⅤの関係は調和しやすくなるが、
ⅣとⅤの各音群間には矛盾 = 高い不協和が生まれます。
その矛盾を解決しようとしたのが音律=調律法の歴史です。
純正律では、3つの倍音列をクルクルと乗り換えながら和声進行を進めます。
それが「機能和声法」の確立に貢献したとも言えるでしょう。
トニック_Ⅰの倍音列に含まれる音群_Ⅰの音をドと呼ぶならドミソ。
サブドミナント_Ⅳの倍音列に含…_ファラド
ドミナント_Ⅴの倍音列に含…_ソシレ
つまり純正律では、「ラ」が鳴ってればその間は、サブドミナント音群のピッチに支配されます。
「シ」が鳴ってればドミナント音群のピッチに、「ミ」が鳴ってればトニックに。
純正律とは、
3つの倍音列の基音=3つのトニック=3つのキーの主音
を行き来するのが当たり前、が前提の調律法となります。
「倍音群の基音を乗り換える」≈「転調」
とも言えます。
「どの基音からの倍音群に基づいて音程造りをするか」≈「ナニ調に居るか」。
機能和声法の確立を喚起したとも言える調律法ですが矛盾もはらみます。
機能和声的音楽は、ドミナント&サブドミナントからトニックへの 解決欲求と解決感 を感じさせる必要がありますが、各倍音列にシフトすると、それぞれとても調和=安定した響きとなり、トニックへの 引力(帰着吸引力) は弱まります。
(とはいえ実際には平均律でもそれは充分に感じられるので困ることはありませんが。)
本稿では
「1つの倍音群に現れる諸音高その1つ々々が、倍音群総体の中で如何なる色彩(≈トニックとの距離感)を有し、如何にトニックへの解決欲求を呈したり、調和=安定として響くか」
を解き明かそうとしています。
五線上の見た目では、ド~ファ と ソ~ド は同じ完全4度ですが、
前者の倍音群中での周波数比率は 16:21、後者は 3:4。
後者は、ド~ソ 2:3 を転回したもので、ピッチクラス同士の産む響きとしては完全5度(ド~ソ)と同等と扱います。
前者の 16:21 こそがトニックとの関係に於いて完全4度「固有の」響きと言えます。
前者は後者よりずっと不協和です。
その観点に立って初めて、4度の音はトニックへの解決欲求を持つことが説明できます。
ド〜ファを 3:4 とすると、ファ=Ⅳ を基音とする倍音群に支配されることになります。
ファをトニックとする主和音の響きとなり、とても安定します。
つまり、Ⅳのキーに転調したこととなり、Ⅰへの解決欲求は弱まります。
倍音列をモノサシにすると
・完全4度 ⅠとⅣの関係なら 16:21
・長6度 ⅠとⅥ 8:13 純正律では短3度の転回形で 3:5
・短6度 ⅠとbⅥ 16:25 純正律では長3度の転回形で 5:8
つまりこの観点だとそれら音程は、けっこう不協和、となります。
倍音列に適った音程を使うなら…
…は、純正律・平均律よりもずっと「不協和 → 解決」の感が強くなるでしょう。
↓としなくても充分なわけです。
もちろん 8:13 のラから 2:3 のソへ進むのは強い解決感を伴うので、相乗効果で
ファ→ミ だけよりも解決感は強くなります。
で、↑は純正律・平均律だとむしろ、2つの同程度の安定感が位置を変えて並び立つ、ように聞こえます。
倍音列の4度を使えば↓と同じ効果を生み「得る」、それが上記「充分」の理由です。
左の和音は「ミとファ」の半音が強い不協和で、それが右側で解消される、って仕組みです。
なんですけど、、
実際の演奏では、この手の不協和音程(ドから見て 16:21 のファ)を使うのはほぼ有りません。
・なるたけ協和的に、あるいは
・平均律に沿って
…を求められるのが通常ですから。
とはいえ、作曲家やそのアンサンブルが、より厳密な不協和性や調性引力の表現にトライするなら、知ること and 扱えるようにすること、は無駄ではないのでしょう。
と、もちろん、
複数の倍音列を乗り換えてこそ、ってタイプの音楽もあります。
スタイルを理解して使いこなしを検討するのも大切なのでしょう。
なんだけどね…
実際にミクロな音程の操作って簡単にできるものではありませんね (^_^;
…というわけで、
すこし複雑な話までしてしまいましたが、倍音を聴き分けてみる興味は湧きましたか?
本稿はここまでとしますが今後、
トーナルセンター(調的中心)とトーナルグラヴィティ(調性引力)
を観点により詳しく書く予定です。
そこでは音階・和音の明暗一覧を網羅的にお見せできるはずです。乞うご期待♪
ちなみに本稿を面白く思っていただけた方は↓も御覧ください。
このページでザックリ通過したことがより解りやすくなるかと…
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