コードネーム一覧、とか大辞典みたいな書籍やサイトは昔から沢山ありますね。
たいていは、名前の後にピアノの指の絵やギターのタブ譜とかで書いたのが並んでる。
でもアレって、
・どんな音階があって、
・そのどこにどんなコードが在るか
を判らないとアドリブや作曲には活かせないのよね。
もちろん歌詞にコードが書かれただけの資料を取り敢えず音に変えるだけなら充分。
人それぞれに必要なだけ判ってればいいってこと。
最近「アルペジオの練習しよう」って資料を生徒向けに作りました。
その副産物というか、コードネーム紹介部分だけをココに載せてみようかと。
冒頭の2つの図がソレなんだけど、既存のコード一覧とはだいぶ様子が違いますよね。
ここまで網羅すれば「ナニこれ?」って困ることは殆ど無いんでないかな?
ま、一生使わなそうなのもありますけどね ^_^;
いちおう説明
一覧だけだと意味不明でしょうから、いちおう説明しときます。
アルペジオ練習の説明として最初にこんな説明をつけたってのを転載します。
**********
「三和音・四和音のアルペジオあらゆる形の網羅的練習」
いわゆる分散和音(=アルペジオ)の練習です。
ここでは調性(=トーナリティ)や「ある音階」との関連にはこだわらず、音程の組合せをイメージし操作に結びつけ、その習熟を図るプロセスを紹介します。
とはいえ、スタート地点を長三和音(=メイジャーコード)とし、それを掴むきっかけを長音階の1・3・5番目の音とします。
あらゆるコードをその変形と捉えることで、イメージングを容易にするのがネライです。
「ある音」を根音とした様々な形の三和音・四和音を網羅します。
本稿では C音 を根音として例示します。
他の 11のキーに移調すれば全てのコードが登場しますが、説明の効率のために1つのキーでの例示に絞ります。
音楽的には無意味で機械的な練習になりやすい作業提案ですが、
「ドンナ音階のドコに内在される3音ないし4音なのか」
という「頭の体操」でその退屈は避けられます。
その意識は、旋律を思いついたり読み取ったりする際に大切なスキルを身に付けることに繋がります。
つまり結局は、調性や音階と強く結びついた練習となるわけです。
**********
以下、アルペジオ練習の資料から説明文を抜粋して進めます。
(肝心のアルペジオのパターンはこのページでは触れません。また別の機会に)
ごぞんじ長音階(メイジャースケール)
詳しく言えば旋律的長音階(メロディックメイジャースケール)
この場合 C音を基音とするので Cメイジャースケール(ハ長調)
添えられた数字にピンとこなくてもいいです。
以下の練習を追ううちに使い方を感じ取れる、、かもしれません。
すぐに解りたいなら↓
『カエルとアラレで音階名人・第1巻』
http://bit.ly/KT_kaeruarare1
さて、長音階の「1. 3. 5」を抜き出すと…
同時に鳴らすと、コードネームで言えば「C」と書いて
Cメイジャートライアド、略して言えば Cメイジャー。
C音=ハ音から積んだ長三和音です。
明朗で安定感の高い響きですね。上手にハモれば、まるで1つの音と聞こえるような調和も有りうる音程組合せです。
なぜそうなのか、は説明できますが長くなるので別稿に譲ります。
コードネームや音程関係の詳しい説明も別の機会に、とします。
ここではむしろ「ドミソ」(=長音階の 1.3.5)の「ミソ(3と5)」
を半音上げたり下げたりしてみよう!ってつもりで進めます。
さて「3. 5」に臨時記号を様々に付けてみます。
つけ方次第で響きの色合いが様々に変化します。
まずはその変化を愉しみましょう。
できれば、
「C○○○○ って音階の Ⅰ度の和音だな」
「Cが主音じゃないけど、X○○○○ って音階の ○度の和音だな」
などと想像しましょう。
三和音=トライアドを詳しく見てみよう
冒頭の譜面を改めて貼りますね。
「頭の体操」を簡単に説明しておきます。
ここでの用語が解らない時は
『カエルとアラレで音階名人・第2巻』
http://bit.ly/KA_kaeruarare2
『コードネーム見たら音階ゾロリ・第1巻』
http://bit.ly/KT_Zorori
を御参照ください。
まずは↑の2小節目から…
コードネーム「C」と書いて「シーメイジャー」
丁寧に言えば「シーメイジャートライアド」
つまり、Cを根音とするメイジャーコード=長三和音。
Cリディアン系・Cイオニアン系・Cミクソリディアン系 などメイジャー系で 5 を含むモードの 1.3.5 として存在する和音。
C+「シーオーギュメンティド」。オーギュメンティドコード=増三和音。
メロディックマイナーの第3モード(=リディアンオーギュメンティド)や ホールトーンスケール などの 1.3.#5 として存在。
ハーモニックマイナーの第3モード(=イオニアン#5)の 1.3.#5 としても。
異名同音を考慮するなら、
ハーモニックマイナーの第5モード(=ミクソリディアンb2 b6)や
メロディックマイナーの第5モード(=ミクソリディアンb6)の 1.3.b6 としても。
更には、
メロディックマイナーの第7モード(オルタード)の 1.b4.b6 としても。
Cm 「シーマイナー」。マイナーコード=短三和音。
ドリアン系・エオリアン系・フリジアン系などマイナー系で 5 を含むモードの 1.b3.5 として存在。
Cº 「シーディミニッシュト」。ディミニッシュトコード=減三和音。
ロクリアン・ロクリアン♮2・ディミニッシュトスケール・ドミナントディミニッシュトスケール(俗称:コンディミ)などの 1.b3.b5 として存在。
Csus4 「シーサスペンディドフォース」。俗にサスフォー=係留四度和音。
メイジャー系・マイナー系を問わず 1.4.5 を含むあらゆるモードに登場。
元々は、1.3.5 或いは 1.b3.5 といった和音に解決(進行)する際に、その三度の音に進むべき音を遅延させて四度に引っかかってる状態のこと。
のちに、それ自体の響きと独特な機能性をもって、独立した和声として扱うようにもなりました。
Csus#4「シーサスペンディドシャープトフォース」
メイジャー系・マイナー系を問わず 1.#4.5 を含むあらゆるモードに登場。
#4 と 5 との半音ゆえ不協和度が高く=安定度が低い(=アンステイアブル)ので、停留しうる(=ステイアブルな)固有の三和音としては扱われにくい。
※
「安定度の低さ」は↑のみならず、1と5のつくる完全5度は自然倍音列の中で極早い段階に、1と#4 の増4度はかなり遅い段階に登場することにも起因します。
簡単に言えば「早い」ほど1を1たらしめる力が強く、安定度がより高いわけです。
C+sus4「シーオーギュメンティドサスペンディドフォース」
ハーモニックマイナーの第3モード(イオニアン#5)などの 1.4.#5 として登場。
実際には 1,4,b6 つまり 4 を根音とするマイナートライアドの第2転回形と聞こえることも多く、前後関係次第だが固有の三和音としては扱われにくい。
(とはいえ、固有な三和音としてここに並べた理由はのちほど詳しく)
異名同音を考慮するなら、
ハーモニックマイナーの第5モード(=ミクソリディアンb2 b6)や ハーモニックメイジャーの 1.4.b6 としても存在。
C+sus#4「シーオーギュメンティドサスペンディドフォース」
メロディックマイナーの第3モード(=リディアンオーギュメンティド)などの 1.#4.#5 に登場。
実際には C+ に #11(=#4)のテンションを付加したように聞こえるので、固有のコードネームとしては扱われにくい。
Cºsus4「シーディミニッシュトサスペンディドフォース」
ロクリアン、ロクリアン♮2、ディミニッシュトスケール(=全音から始まるシンメトリックディミニッシュトスケール)などの 1.4.b5 として登場。
実際には Cº に 11(=4)のテンションを付加したように聞こえるので固有のコードネームとしては扱われにくい。
…とはいえ「…にくい」で終えたすぐ上の4つは、
経過音など修飾音の働きの「ある瞬間」を切り取って「名付ける」には有効な呼び方。
もちろん、作曲のスタイルによっては普通の三和音と同様に扱われてよい響きでもあります。
そしてオマケに、
C(b5)「シーメイジャートライアドフラティドフィフス」
ドミナントディミニッシュトスケール(俗に言うコンディミ)や、オルタードスケール(メロディックマイナーの第7モード)の 1.b4,b5 として登場。
その通りにコードネームを書くならば Cºsus b4 。
実際には b4 は 3 として聞こえるので 1.3.b5 と扱われ、コードネームとしても C(b5) と書かれる場合が多い。
コードとしての安定性の低さから三和音としては扱いにくいものですが、四和音にすると 1.3.b5.b7 はオルタード or コンディミの響きを代表する形として触れざるを得ないので、その下部構造の三和音として触れておきます。
ちなみに、、
ここで「・・・として登場」として紹介した音階の例は「全て」ではありません。
で、、
ヤヤコシイんで書き間違えも有り得ます。気付くたびにヒッソリと書き直します〜 m(_ _)m
sus4 とか sus2 とかってどういうこと?
さて、
前世紀末あたりから「○sus2、○sus b2」というコード表記をみかけるようになりました。それはナニモノカを説明します。
先程も軽く触れましたが、先に「○sus4」への理解を深めましょう。
「○sus4」とは…
普通の長調でのケーデンス(=終止形)にて喩えるなら、
・1.4.6 → 1.3.5 つまりサブドミナントからトニックへの変終止
or
・7.4.5 → 1.3.5 つまりドミナントからトニックへの完全(or不完全)終止
…に現れる「4 → 3」の動き、に先ず注目します。
そこ以外の要素はトニックの構成音に進むが、4 は 3に進めず 4 にとどめる。
すると、4 → 3 の解決欲求を強く感じさせられる。
感じさせたのちに 3 へ落着させると強い解決感を感じさせる。
もし落着させないなら、曲が終わった感じとはならず「つづき」を期待させられます。
そこで強いて「続かせない」とモヤモヤした気持を印象づけられます。
そういった使い方が、原始的な sus4=四度係留和音の在り方です。
ですがそれは、機能和声的音楽(=トーナルミュージック)の価値観ありきでの在り方で、前世紀初頭に旋法的音楽(=モーダルミュージック)の見直しが流行った頃から違った使われ方が行われました。
ジャズの世界では、機能的和声進行が高度に複雑化して自由な旋律造りが困難になったビバップからの開放欲求がモーダルな発想の素となりました。
機能和声的音楽の仕組を支えた三度堆積のハーモニーに対して四度堆積のハーモニーは、和声の「機能性」からの開放と旋法の持つ「色彩感」を充分に実現したわけです。
少し説明が跳躍しました、、m(_ _)m
三度堆積の 1.3.5 の第2転回形 5.1.3 は引っ繰り返したとしても三度堆積和音のキャラクターを保ちます。
ですが、1.4.5 の第2転回形 5.1.4 は四度堆積に見えますね。
つまり、sus4 の転回形をもって四度堆積のキャラクタを見いだせたとも言えます。
その「キャラクタ(性質)」は、トニックとかドミナントとかいった機能性よりも色彩を表すのに適したものでした。
つまり、モーダルな音楽での sus4 は、
解決欲求を感じさせる不協和(=不安定)ではなく
「ある色彩」を示すステイアブル(=安定的)な響きとして許容されます。
その感覚が特にジャズの世界で受け容れられたのは、ジャズが生まれながらに孕む「ブルーズ感覚」ゆえでしょう。
簡単に言えば、クラシックの世界での「協和:不協和」の関係が逆転した世界がそこに在るからです。
その点詳しくは…
『明解!ツーファイブで使える音階 ~ブルーズの謎を解く~』
http://bit.ly/KT_blues_251
を御参照ください。
つまるところ、クラシックの世界では特別で少し奇妙と受け取られる四度堆積の響きも、ジャズの世界では自然に安定的な響きとして活用されたわけです。
、、次の項目もまだ sus4 説明の続きです、、、
sus4 の不思議な出来事、sus2 とは
さてさて、、
もう1つ、sus4 の面白い使われ方。
機能和声的な発想に戻りますが、、
「そこはかとないピカルディ終止」の実現に使われます。
ピカルディ終止とは、バッハの教会音楽などで聴かれる終止形の一様態で、
マイナーの曲の最後のトニック和音をマイナーでなくメイジャーにする、って奴です。
それが起こった瞬間に教会の天井から天使達が舞い降りてくるように感じたことでしょう。
1 と 5 を鳴らすと、音響物理学というか認知心理学というか、、
倍音と差音の仕組から、人間は「3 の音」を自動的に知覚します。
つまり、1 と 5 が鳴ればメイジャートライアドを感じるってわけです。
そこに強いて b3 を鳴らすと 3 との不協和(ウナリとして知覚される超低域な差音の発生)に人間は不安を感じる、
それが「マイナー」という感覚の素だと筆者は想定しています。
マイナーとして進んで来た曲の最後のトニックとして 1 と 5 だけを鳴らすとピカルディ終止が起こるかというと、そうでもないようです。
それ以前までに繰り返し聴いてきた b3 の影響で、マイナートニックとして知覚される可能性のほうが高いようです。
そこで、1 と 5 (自動的に湧く 3 )に対して 4 を鳴らします。
すると2つの「感覚の選択肢」が現れるようです。
1)1 と 4 の完全4度から 4 こそをトニックと感じる
2)1 と 5 の完全5度から、やはり 1 がトニックと感じる
とはいえ、そこまで 1 をトニック(主音)だと思って聴き続けてきてる場合は 2)のほうが優位でしょう。
そこで更に2つの選択肢が生まれます。
A)鳴らされてない3度の音は 1 と 5 から感じられる 3
B)…は、4 を基音とする第7倍音でもある b3
そこまでマイナーの曲として聴いたきた耳には b3 が想起される可能性、つまり B)のほうが優位そうだが、不思議なことは起こるものです。
その場合、
1 と 5 だけでは b3 と感じる可能性が確かに高いのだが、4 が居るとなぜか 3 を感じる割合が上がるようです。
、、、謎です。
とりあえず、アース・ウインド・アンド・ファイアー の、
「Fantasy(邦題・宇宙のファンタジー)」を聴いてみましょう。
、、、
でしょ?
そこはかとないピカルディは起こるものですね。
てなわけで、、
ようやく sus2・sus b2 の話に戻します。
サブドミナント 1.2.4.6 → トニック 1.3.5 とか、
ドミナント 7.2.4.5 → トニック 1.3.5 とか
って時の「2 → 3」って動きを本来の解決ポイントより遅延させた時に生まれる 1.2.5 が sus2 。
トーナルのモードが 2 でなく b2 を含む場合は sus b2。
で、
転回させれば四度堆積となることや、3 と b3 の不確定性なども sus4 と共通です。
本稿では深く扱いません。
転回させれば sus4 と同じなので、アルペジオの練習としては重複するからです。
sus2 の概念は覚えておけばやがて役立ちます。
三和音のまとめ
ともあれ、三和音のヴァリエイションとして10種類を挙げました。
これら以外にも「3と5の音」に臨時記号の付けようはありますが、それらは、
「Cではない他の音を基音とする和音の転回形」となるものばかりです。
本来の根音こそが根音としての存在感を示す力が強いので「C○」の仲間からは除外します。
異名同音だと別の三和音と聞こえる「C+sus4」を固有な三和音として仲間に入れた理由は、のちほど詳しく説明しますね。
四和音、いわゆるセブンスコードを掘る
あらためて譜面を貼りますね。
C+△7「シーオーギュメンティドメイジャーセブンス」
Aハーモニックマイナー や Aメロディックマイナー の第3モードなどの 1.3.#5.7 として存在。
C+7「シーオーギュメンティドドミナントセブンス」
この響きはむしろ、異名同音(#5 = b6)で読み替えて、
C7(b13) として登場するケースが多い。その場合は、
Cミクソリディアン b9 b6(=Fハーモニックマイナーの第5モード)
Cオルタードスケール(Dbメロディックメイジャーの第7モード)
といった音階の 1.3.b6,b7 として存在。
しいて「#5 なのだ!」として読むならば、
Cホールトーンスケール の 1.3.#5.b7 などとして読み取るのが妥当な可能性でしょう。
C△7「シーメイジャーセブンス」
お馴染み。リディアン系・イオニアン系 などの 1.3.5.7 として存在。
C7「シードミナントセブンス」俗に略して「シーセブンス」
ミクソリディアン系やリディアンb7系などの 1.3.5.b7 として。
Cm△7「シーマイナーメイジャーセブンス」
メロディックマイナー・ハーモニックマイナーなどの 1.b3.5.7 。
Cm7「シーマイナーセブンス」
ドリアン系・エオリアン系・フリジアン系などの 1.b3.5.b7 。
Cº△7「シーディミニッシュトメイジャーセブンス」
ディミニッシュトスケールなどの 1.b3.b5.7 。
シンメトリックな8音音階では厳密には三度堆積ではないが、見かけ上は同様に扱ってよきかと。
とはいえ、いわゆる普通の四和音と比べて、7の音はよりテンション的に響く性格には要留意。
Cm7(b5)「シーマイナーセブンスフラッティドフィフス」
ロクリアン・ロクリアン♮2 などの 1.b3.b5.b7 。
別名 Cø「シーハーフディミニッシュト」とも呼ばれる。
Cº7「シーディミニッシュトセブンス」
ディミニッシュトスケールの 1.b3.b5.bb7 。
或いは ミクソリディアンb2系の 3.5.b7.b9 。
4つ目の音は異名同音で 6 と同じだが、
ディミニッシュトスケール(8音音階)では、三度堆積をすれば4つ目として選ばれる音。
ミクソb2 では b9 と 3 は増2度なので聴感上は短3度でも楽理的には「2度」と扱います。
(難解ですみません)
ともあれそういうわけで四和音の基本構造(テンション=上部構造を含まぬ下部構造)として認めることになってます。
C△7sus4「シーメイジャーセブンスサスペンディドフォース」
イオニアンなどの 1.4.5.7 。
前後関係から、メロディックマイナーやハーモニックマイナーの b3 を 4 に吊り上げたと捉えられる場合は
Cm△7sus4「シーマイナーメイジャーセブンスサスペンディドフォース」
と表記したほうが適切な音階を想起しやすいと筆者は思ってます。
C7sus4「シードミナントセブンスサスペンディドフォース」
俗に「シーセブンサスフォー」と略称。
ミクソリディアン系の 1.4.5.b7 。
ドリアン系・エオリアン系・フリジアン系(つまり 4 を含むマイナー系モード)を素にした sus4 の場合は
Cm7sus4「シーマイナーサスペンディドフォース」
と書いたほうが適切な音階を想起しやすいでしょう。
C△7sus#4「シーメイジャーセブンスサスペンディドシャープトフォース」
リディアン系の 1.#4.5.7 。
結果の形は同じだが素の音階が ハーモニックメイジャーの第4モード(=メロディックマイナー#4)などマイナー系の場合は
Cm△7sus#4「シーマイナーメイジャーセブンスサスペンディドシャープトフォース」
と書いたほうが適切な音階を想起しやすいでしょう。
C7sus#4「シードミナントセブンスサスペンディドシャープトフォース」
リディアンb7系の 1.#4.5.b7 。
素の音階が ハーモニックマイナーの第4モード(=ドリアン#4)などマイナー系の場合は
Cm7sus#4「シーマイナーセブンスサスペンディドシャープトフォース」
と書いたほうが適切な音階を想起しやすいでしょう。
C+△7sus4「シーオーギュメンティドメイジャーセブンスサスペンディドフォース」
ハーモニックマイナーの第3モード(=イオニアン#5)などの 1.4.#5.7 。
楽理上はそうですが聴感上は 4 を根音とする Fm add#11 と聞こえがち。
#5 を異名同音の b6 と捉えるわけですね。
とはいえ、
そのコードも、完全5度とその安定感を阻害する #11 が共存するので甚だ不安定。
或いは b6 を根音とする Ab6(#9) とも言える。
つまり、いずれにせよコードとしての安定性は非常にあやういので、前後関係で必要に叶ったコードネームづけをすることになるでしょう。
ちなみに #5 でなく b6 とした場合の「より的確な」コード表記は、
C△7sus4(b6) で、内在されるスケールは Cダブルハーモニック・Cハーモニックメイジャー・Cハーモニックマイナー などです。
まぁ、強いてコードネームづけをする機会も極少ない響きではあります。
「○m aug」ってコードネームはアリか?
さて少し寄り道します。
「○m+、○m+7、○m+△7、○m+sus4、、、」といったコードネームは
アリでしょうか?
Cm+ なら 1.b3.#5 つまり C.Eb.G# ってこと。
それは #5 を b6 と読み替えれば(この場合 G#=Ab)そこを根音とするメイジャートライアド Ab の方が安定度が遙かに優位となるので存在を考慮する必要は低い。
ただし、強いて 1 を根音とすべき前後関係がある場合は書きうるでしょう。
とはいえその場合も「○m(b6)」と書き、5 の omit は暗黙の諒解とするほうが一般的です。
四和音の説明に戻ります
C+7sus4「シーオーギュメンティドセブンスサスペンディドフォース」
これは特殊です。
相応しい音階を想定しようとすると、どうしても #5 を b6 と読み替えたくなります(半音の2連続を避けようとする限り)。
そうすれば、Cミクソリディアンb6(ヒンドゥー)・Cナチュラルマイナー(エオリアン)の 1.4.b6.b7 となります。
C+△7sus#4
「シーオーギュメンティドメイジャーセブンスサスペンディドシャープトフォース」
Cリディアンオーギュメンティド・Cメロディックマイナー#4(Gハーモニックメイジャーの第4モード)の 1.#4.#5.7 。
C+7sus#4「シーオーギュメンティドセブンスサスペンディドシャープトフォース」
Cホールトーンスケール・Cドリアン#4(=Gハーモニックマイナーの第4モード)の 1.#4.#5.b7 。
Cm7(b5)sus4
「シーマイナーセブンスフラッティドフィフスサスペンディドフォース」
= Cøsus4「シーハーフディミニッシュトサスペンディドフォース」
Cロクリアン・Cロクリアン♮2(=Ebメロディックマイナーの第6モード)の 1.4.b5.b7 。
Cº7sus4「シーディミニッシュトセブンスサスペンディドフォース」
Cディミニッシュトスケールの 1.b3.b5.bb7 。
しいて異名同音で言えば Cドリアン#4 の 1.b3.#4.6 。
C7(b5)「シードミナントセブンスフラッティドフィフス」
すなわち C7alt「シードミナントセブンスオルタード」であるとする解説もありますが、本来「オルタード」はもっと広義で、ミクソリディアンの 2.4.5.6 のどこに臨時記号をつけてもそう呼ばれるべきです。
とはいえ、ビバップジャズを象徴する響きとしてのオルタードのエッセンスを端的に「 C7(b5) 」と表せるとも言えるので
「シードミナントセブンスオルタード」
は、沢山に類別されるオルタードドミナントを代表する名前とは言えます。
俗に「オルタードセブンス」と略称もされます。
Cオルタードスケール(=C#メロディックマイナーの第7モード)の 1.b4.b5.b7 。
テンションノート と アッパーストラクチュア
ところで、
本稿では「テンションノート」については深追いしません。
コードネームの右肩に括弧書きされる (9, 11, 13) の類のこと。
それは「頭の体操」の結果、相応しい音階の想定をできるならば、テンション(=コードの上部構造_アッパーストラクチュア)の理解は自ずと湧いてくるからです。
と言いつつ、そこそこ↑で書いてしまいましたけどね ^_^;
アルペジオの練習としては三和音・四和音だけで充分。
アッパーストラクチュア(=テンションを含むコードの上部構造)だけを見れば三和音・四和音を抽出でき、その中でアルペジオの練習は活かせるからです。
「Cº△7 と C△7(b5)」ってのはアリ?
仲間に入れなかったコード2つ「Cº△7 と C△7(b5)」について。
「Cº△7 」
見た目的には三度堆積の四和音に見えますが、相応しそうな音階を想定すると、一般的な音階の範疇なら異名同音の可能性も含めて上の4つ。
① ディミニッシュトスケール
② メロディックマイナー#4
③ リディアン#2
④ Gダブルハーモニックスケールの第4モード
いずれも b5 or #4 と 7 は「三度」の関係に無いし、聴感上は完全4度と聞こえます。
なので、三度堆積による四和音という概念の範疇には入れず、7 はテンションとして扱うほうが混乱を避けられると思ったので外しました。
「C△7(b5)」
このコードも異名同音を考慮すれば ①②、
① リディアン
② リディアンオーギュメンティド
これらは各小節右端に書いたようなコードネームが一般的。
つまり、いずれも3度堆積コードの基本構造とは言えず (#11) はテンションで 5 は omit されたと捉えます。
半音2連続という不自然の無理を効かせれば ③③’④ 。
③ オルタードメイジャーセブンス、、妙だ。それに 6 の音を加えると
③’ C#ハーモニックマイナーに b7 を足した8音音階の第8モード
④ コンディミの8音目を半音上げた音階。
これらも、どうにもコジツケの感を拭えず、一般的な音階概念からは7音ないし8音音階として扱いにくい。
③’ と ④ は #4~7 が3度でなく4度だし。
というわけで三度堆積による四和音の仲間からは外しました。
ちなみに、ダブルハーモニックスケール以外の7音音階は、
半音の2連続が起こるとその真ん中の音が上下の音に収斂する修飾音(=非和声音_経過音や刺繍音など)と聞こえやすい。
なので、半音の2連続を含む場合「だからこその色彩」が明瞭でない限り7音音階の一味と目するには深い吟味が必要です。
ダブルハーモニックは、それなりの安定性と明瞭な色彩を認められるので固有の7音音階とされるのでしょう。
ここでは触れなかったその他のコードネーム
本稿はアルペジオの技術的修得に集中するため
「なにかしら他のコードの転回形」
となるものは除外しました。
その代表選手は「○6, ○ b6」の類です。
下の譜例を見れば判るように、転回させると普通に三度堆積させた四和音となります。
もちろん「○6, ○ b6」の形であることに意味はありますが、本稿はアルペジオ練習を目的とするので、転回での重複って無駄は避けます。
「○sus2・○sus b2」は「○sus4」の転回形でもあります。
それらは「○add9・○add b9」とも扱えます。
「○5」は、いわゆるパワーコードです。1度と5度だけを鳴らします。
倍音の仕組とブルーズの理解があれば使い途は色々と拡がります。
ですが本稿は三和音 or 四和音のアルペジオが目的なので省きました。
「○6, ○ b6」の楽理的意味合い、など
「○6, ○ b6」には幾つかの意味合いがあります。
1)旋律音がその時点での和声の根音(1の音)な場合_
和声内に長7度(7の音)が居ると強い不協和を感じさせます。
短7度(b7)でもそう感じる場合はあるでしょう。
それを避けつつ、単なる三和音では得られない響きのリッチを求める時に 6度や9度、或いはマイナーでなら 11、メイジャーなら #11 の付加を選びます。
2)モード明示のため_
たとえば ○m7 はドリアン・エオリアン・フリジアンなど幾つもの可能性を孕みます。
そこで強いて ○m6 とすればドリアン或いはメロディックマイナーとの特定性が高まります。
○m (b6) とするとエオリアンが特定されやすくなります。
もちろん他に使われる旋律音やテンション次第では、より複雑なモードとなる可能性もありますが。
3)朴訥さを表すため_
○6 とか ○6 (9) は、メイジャーペンタトニックスケールを想起させやすい。
○m6 は日本の古典音階で言えば「雲居調子」(=洋楽的に言えば「ドリアンのペンタトニック」)の色彩を端的に示すペンタトニックスケール「1.2.b3.5.6」を想起させやすい。
いずれも懐かしさとある種のエスニックな香を呈します。
それら以外にも幾つかのモード特定の組合せはあります。
上記の 1)2)3)以外にも「○6, ○ b6」の登場する理由は色々とあります。
様々な音楽に触れてその実感を探してみましょう。
○+sus4 を固有の三和音として採用したわけ
C+sus4 は異名同音(#5 = b6)で Fm の第2転回形とも言えます。
とはいえ、それを固有の C+sus4 として扱う価値を見いだす機会は幾つかあります。
1)声部進行の途上で湧き出す和声的色彩を表すため
例えば Cメイジャーに解決すべき「リズム的場所」で、
「ベース音は C に辿り着くが 3 に行くべき音が 4 に停留」していれば sus4 。
それは前述の通り。
同様に、
直前の和音に b6 が居て、それが停留すれば sus b6 すなわち #5。
b6 は 5 に解決したい力を留めるので sus なわけです。
あるいは、
直前に 6 が居て「その場所」で b6 に進んでも、
5 への解決欲求を保持する sus b6 と聞こえる。
あるいは、
直前和音の 5 の音から「その場所」で b6 に進んだとすれば、
その後 C6 の 6 に進むのが期待される、それも sus の一種。
そういった「進行中のある瞬間の和声」を切り取って示すなら C+sus4 と書くべきで Fm と書いたら意味が解らなくなります。
ですが sus b6 という意味合いをより正確に記すならば、
Csus4 (b6) omit5 が最も正確と言えるでしょう。
読む相手の理解度と応用力しだいでは Fm/C と書けば事足りる場合も多いし、それなら書くのも楽珍ではあります。
2)あるモードに内在する、そのコードそのものを示すため
前述の通り、Cイオニアン#5 などのモードの色彩を表す為に、内在する和声の1つとして使われる可能性はある。
その際、C音が根音であることに意味深さがあるならば、やはり C+sus4 と書かねば意味が通らなくなります。
^_^;
難解な説明となりましたが簡単に言えば、
そう書くことで意味合いを明瞭にできる場合があるってことです。
異名同音との付き合い方
オマケの呟きです。
前項ほど複雑ではなくとも、異名同音の記述にはこだわるのが佳きかと。
#5 と書いても b6 と書いても、聞こえる音には変わりない。
ところが、どう書くかによって、
・その音がもともとどんな音階に属するのか
・その和音にどんな機能を期待できるか
・旋律線の進んでゆく方向性
などなど色々と暗示できます。
、、、
譜面なんてものは書いた本人が判れば用が足りるものです。
ですがもし、
他の誰かに伝えるために書くならば、意図が伝わりやすいように書けるといいんでしょうね。
とはいえ、読み取りにも記述にも的確さを求めるなら勉強は要ります。
けど、
読む人がハイスペックな場合、どんな譜面であれ寛容になれるものですから、自分なりに「できる限りの工夫」でよいのでしょうけどね。
…というわけで、最も大切なこと
アルペジオ練習の副産物なコードネーム大辞典でした。
で、ですね、大切な事。
こういった話は、机上で姿形を知るだけだと音楽には全く無意味です。
音階とアルペジオの練習を通して聴き分ける精度を上げ、
実際の音楽から聴き分けられるようにして初めて使える道具となります。
コードの形と響きを知るだけでは無意味で、
併せて、
・音階とコードの関係
・コードの機能性
・モードの知識とサウンドの聴き分け
・楽曲での実例に沢山触れる
…などなども勉強するとアドリブや作曲に使えるようになります。
地道に仲良くなってみましょう♪
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