和声的長音階って名が指すもの_モードとペアレントスケールの話

ハーモニックメイジャー(和声的長音階)って言葉があります。
筆者にとっては↓です。主音を C だとすると…

↓って説をよく見かけます。

人の命に関わることではないので、どっちでもいいのでしょう。
その人なりの整理法で日々の音楽生活を困らずに送れてればよいのですから。

とはいえ、音階の世界を歩き回る時に迷路に入りにくい考え方を識っておくのは悪くないでしょう。
というわけで以下に筆者なりの考え方を整理しておきます。

それは子か親か…

先程の②の音階、

モードの名前としては「ヒンズー Hindu」が俗称として有名ですね。
誰でも迷わず辿り着ける名前としては、
C ミクソリディアン♭6
です。それは、この有名な…

F メロディックマイナー(ヘ調 旋律的短音階)
その5番目の音を主音とする=第5モード(第五様態)の音階がヒンズーです。

逆に、ヒンズーを主人公とすれば、メロディックマイナーはその第4モードとも言えます。

さて、どっちが適切、というか便利な考え方でしょうか?

ちなみに「ミクソリディアン」という呼称を付ける条件は、
 ・1 と 5(主音の完全5度上)を含む
 ・3(主音の長3度上)と b7 を含む
 ・4(主音の完全4度上)を含む
です。オルタレイションを加える可能性のあるのは 2 と 6 だけで、
5を♭させるとミクソリディアンって名前は付けません。

さて、ここで知識の整理をしましょう。

いわゆるメイジャースケール(長音階)があれば、
その第1モードはイオニアン、第2はドリアン…というのは御存知ですね?

ここに Cメイジャースケールを起点に例示します。
第2モード以降は左右に分けます。左は Cメイジャーの転回形、
右は、音程関係はそのままに C音を開始音として置き換えたもの。
その方が形の違いを比較しやすいですよね?

モードとペアレントスケール

先程の例では「Cメイジャー」が、7種類のモードの素となる母体の音階です。
そういった母体となる音階を「ペアレントスケール」と呼びます。
それと諸モードとの関係は親子と言えます。
ですが、
どれが親でもよさそうです。
なぜメイジャースケールが親とされるのでしょうか?
それはひとえに歴史の結果と言えそうです。

ペアレントと見なされるに至る歴史

西洋音楽での音階や和声、その姿を測るモノサシをメイジャースケールとするのは一般的な捉え方ですね。
五線譜の仕組が C音からのメイジャースケールを最も簡単に記せるように作られてるのはその結果です。

何故「Aから」でなく「Cから」なのかは謎ですが。
それ以前に、およそ 440Hz を A とした理由も謎です。
赤ん坊が産まれて最初に出す声の高さ、という俗説がありますが筆者はマコトシヤカな眉唾話と思ってます。
絶対音感を持つ産婦人科医や産婆さんが充分な統計に足るだけ居るとは思えないわけで。

ともあれ何故、メイジャースケールが記譜法発明の時点で「代表的なモノサシ」だったのでしょうか?
筆者が勉強してきた限りの知識で簡単に言えば…

古代ギリシャ時代によく使われた「4弦の琴=テトラコルド」の調弦法には代表的な幾つかがありました。
そのうちの1つが「ダイアトニック」と呼ばれ、最も低い弦から上に

「1_ほぼ全音_2_ほぼ全音_3_ほぼ半音_4」

と張られました。
1弦〜4弦の音程はほぼ完全4度だったようです。

やがて「オクターブ」という概念が芽生え、
ダイアトニックを2つ重ねて、例えば「ドレミファ と ソラシド」と並べると
1オクターブの中を7音音階として大体過不足なく満たせました。
その全体をやがて「ダイアトニックスケール」と呼ぶようになったようです。

 

細かいことはともかく、そうして生まれた7音音階が昔のヨーロッパで
『旋律や和声の世界を把握するモノサシの代表』
となったのは想像に難くありません。
それがメイジャースケール(長音階)です。

それが広まるにつれ、地域毎の好みで「旋律の開始&終止音が何処か」が変わったようです。
それがモードの名前として地方名がついてる理由です。

やがてキリスト教会での音楽が盛り上がり、音階の学術的研究も盛んになり、地方名が付けられた諸モードは教会旋法(チャーチモード)として整理されました。

その頃のモード名は今でも転用されてますが、その当時とは、
「音階の形:名前」
の組合せは変わってます。

 

さて古代ギリシャに戻りますが、ピタゴラスって人が居ました。
彼は、違う高さの音が同時に鳴った時の「心地よさ&悪さ」に着目しました。

倍音に関わる物理観察の結果、
 1オクターブの周波数比率_1:2
 完全5度_2:3
 完全4度_3:4
を見つけ、
 全音(完全5度と4度の差)_8:9
と定義しました。

倍音列の中で第3倍音(基音がドならソ)の認識が容易だったからですね。
ただし、ピタさんは第4倍音以上は切り捨てて話を進めた。
そこに後の悲劇の素はありそう、けど、ま、いいや、その話はまたそのうち。

先程の「ドレミファ と ソラシド」真ん中の「ファ〜ソ」の距離の置き方が明瞭となったわけです。
同時に、内在する完全5度
 「ド〜ソ、レ〜ラ、ミ〜シ、ファ〜ド、ソ〜レ、ラ〜ミ」
完全4度
 「ド〜ファ、レ〜ソ、ミ〜ラ、ソ〜ド、ラ〜レ、シ〜ミ」
の音程も丁度よく調整しようとするきっかけとなったことでしょう。

つまりそれは調律の歴史という愉しくも長い苦難の始まりとも言えます。
全てを丁度よく完全音程には合わせられませんから。

さて、そういった観察の結果「ピタゴラス音律」も生み出されました。
「ある高さの音」から上に完全5度を倍音列から見つけ、またその音から完全5度上を…
と繰りかえすと 12回目には最初の音にもど、、、るかに見えて少しズレました。
やはり愉しい苦難は続きます (^_^;

 

ともあれ、最初の7回目までで1オクターブを、全音か半音で万遍なく埋め尽くせました。
その結果の音階が↓です。C音からスタートしたとすると…

今風に言えば Cリディアンですね。
メイジャースケールのモノサシから見れば Gメイジャーの第4モード。

その中に見いだせる諸音程の関係、その全体像を「ピタゴラス音律」と呼び、
古代の調律法発見の挑戦で最初にして代表的なものです。
いわゆる純正律とも平均律とも少しづつ違いのある音律(=調律法)です。

リディアンということは、その第5音をトニックとするならばメイジャースケールとなります。
つまり、物理実験の果てに「ドレミファ と ソラシド」という
ダイアトニック7音音階の「心地よい調律法」を見つけようとしたわけですね。

 

さて如何にも理詰めで見つけられたリディアンスケール、それこそモノサシにしても良さそうですね。

実際にそうして、音階と和声の世界を整理しようとした人も居ます。
ジョージ・ラッセル先生の「リディアン・クロマチック理論」です。

でも昔のヨーロッパ人は、やはりモノサシとしては
「ドレミファ と ソラシド」を選びました。

キリスト教会での音楽が単旋律から複旋律そして対位法的に進化し、
やがてオスティナートや通奏低音を経て「和声:旋律」という仕組が定着しました。
それから間もなく、

和声の機能(響きのもたらす作用性)を使い分けて音楽の時間を進めて行く手法、
に結実したと言えます。

不協和から協和への解決(緊張→緩和、離陸→着陸…)が時間を進めて行く音楽、
それが「機能和声的音楽」です。

「ドレミファ と ソラシド」という音階は、それを効率良く実現できます。
内在する諸和声が、1度の和音を主和音と思わせる力が明瞭だからです。
節回しをしても、自動的に主音を主音と思わせる力が備わってます。
なので西洋音楽に於いて諸音階の主人公として長く君臨しているのでしょう。

 

ところで、リディアンスケールはメイジャースケールほど簡単には機能和声を実現できません。
その音階から湧く和声達は、行く末を限定的に強く示すような力を持ちにくい。
実際にはメイジャーと同じ構成音ですが、ひとたびリディアンの主音を主音と思い込んだ途端に、そうした特性を持つようです。
逆に言えば、立ち止まりつつ景色を愉しむような音楽を造りやすい。

ちなみに、メイジャーの4度から始まるリディアンと、5度からのミクソリディアンは、
ひとたびその主音を主音と思い込んだら、それを主音と思い続けやすい特徴があります。
それは、それぞれの主音を 1 とすれば 3(長3度)と 5(完全5度)を含むからです。
つまり「メイジャー系」のモードです。
マイナー系モードの 2度(ドリアン)3度(フリジアン)6度(エオリアン)7度(ロクリアン)と比べて、その安定度は高い。

その安定度の程度は倍音列の仕組に依ります。
完全5度と長3度は自然倍音列の、ごく早いうちに登場します。
ある音程が倍音列に登場する「早さ」は、
倍音列の基音とそこから立ちのぼる倍音群とに協和する程度と比例し、
それはまた、それら音程によって構成される和音が、あるモードの主和音である安定度の高さとも比例します。

あとでマイナーの話をする時に、また詳しく触れますね。

解りにくい書き方をしてしまいましたが、
旋法的音楽(モード音楽)を作ったり、その世界を測るモノサシとしては適してると言えます。

その意味では、ジョージ・ラッセルがリディアンをモノサシとして提唱し、その世界観を学んだギル・エヴァンスやマイルス・デイヴィスなどが、高度に複雑化した機能和声音楽となったビバップから離れてモードジャズを牽引したのは納得しやすいですね。

 

この項目、大きな結論としては、、
長い歴史の多数決で、
「西洋音楽での諸現象を測るモノサシはメイジャースケールだ」
ってことは未だに動かしがたいようだ、ってことです。

リディアン♭7th クロマチック理論

<この項目、ちょいと寄り道です>

わたくし「リディアン♭7th クロマチック理論」なぞ提唱すべく日々を悶々してます。

先程から云々してる「モノサシ」をリディアン♭7th って音階に設定すると、様々な和声現象が無理なく説明できるんでないかと思ってます。

ジョージ先生はリディアンをモノサシに選びました。
その選択はピタゴラスが「12回繰り返した果てにズレちゃった」に似た残念を孕み続けてしまうのでは?と気付いたからです。
そのズレが、晩年まで改訂版を出し続けた一因かとも思ってます。

空間に1つの音が鳴れば、それに伴って自然倍音列は存在します。
そこに含まれる音を聴き分けると、まず登場する7音音階はリディアン♭7th です。
その聴き分けがあるからこそ成立している音楽もあると筆者は思っています。

ある1音からの倍音群と、
また別のある音高 and/or 音高群との 協和〜不協和 の距離感が、
その音高 and/or 音高群(=モード)の色彩と安定度を決める、
と思ってます。

トーナル(調性)とは、
ある1音のことであり、
その1音から立ちのぼる倍音群のことでもあり、
その倍音群に含まれる1音1音の含まれ方が定義する「基軸の形」のことでもあり、
その基軸の形が呈する「引力圏の様子」のことでもある、

と思ってます。

トーナリティ(調性)とは…、
「ある1音」を主音=トーナルと定義した時、
それを基音とする倍音列という音群に含まれる1音1音は、
基音との協和度の大小をそれぞれに持ちます。
協和度の大小は、安定感・距離感・色彩の違いなどとして感じられます。
その有り様全体をトーナリティと呼ぶのでしょう。
次に、
倍音列に含まれる音群から幾つかを選び出して音階を作ると、
どの音を選んだか次第で、
基軸倍音列との協和度(距離感とも言える)が変わります。
それが音階の色彩や安定度を決めるのでしょう。
基軸とする倍音の基音と 音階の主音と が同じか違うか、
によっても結果は様々。

そんな風に思ってます。
はい、寄り道でした。話を戻しましょう。

モノサシたるペアレントスケールは4種類

メイジャースケールがペアレントたる存在感を持つのは御理解いただけたかと。
実は、ペアレントたる音階は他にも3種類あります。
何故これらがペアレントたり得ているかを次項で軽く説明します。

マイナーはなぜ暗い?

上記2つの音階の生い立ちに触れるつもりですが、その前に
マイナーはなぜ暗いかを考えます。

メイジャースケールの2度、3度、6度 にマイナー系のモードが在ります。
 (ドリアン、フリジアン、エオリアン)
7度(ロクリアン)もマイナー系と言えますがその第1音の上に完全5度の音が無いので、第1音が主音たる安定度に欠けます。なので、一般的には確固たる短調の音階とは扱いません。

 第1音から上に完全5度があると、
 第1音に主音としての存在感が安定するのは倍音列がもたらす特性です。
 それが無くて減5度だと、その音には主音を主音たらしめる作用は無い。

さて、
マイナー系モード(音階)、あるいはその第1音から積んだ主和音は何故、暗く(マイナーに)聞こえるのでしょうか?、、、

主音と完全5度上の音があるだけで、主音を基音とする倍音列が空間に湧き立ちます。
それが大きな安定感をもたらします。
おまけに、
実音として鳴っていなくても長3度の音(主音をドとすればミの音)を人は感知します。

そこに強いて短3度の音(ミ♭)を実音として鳴らすと、潜在的長3度との間で強い不協和=ウナリが生まれます。
それが人に不安感を与え、ひいては「暗い=マイナー」と感じるのではないでしょうか(筆者仮説)。

大雑把に言って音階全体で見ると…

 ・メイジャースケールの 3 6 7 2
 を
 ・マイナースケールだと ♭3 ♭6 ♭7 ♭2


変えると暗くなります。
4つ全部変えなくてもよいです。
その1つ1つに「変えると暗くなる」という働きを感じ取れます。

5を ♭5に変えるのも確かに暗い方向に機能しますが、
暗くする以上に、モードとしての安定感を揺るがせる、という衝撃こそ大きいのを解っておくべし。

ハーモニックマイナーとメロディックマイナーの生い立ち

さて話を本題に戻します。

メイジャーの中に3つのマイナーモードがありますが、いずれも、
節回しをしているうちに、素のメイジャーの第1音が主音としての存在感を強く示し易く、結局は素のメイジャーの節となってしまいがちです。

マイナーの第1音を主音と感じさせ続けるには一工夫が必要です。
マイナーの第1音から完全5度上の音を根音とする四和音を
「ドミナント=属七和音」
とするような臨時記号を付けるわけです。

そうすると2度・3度・6度、いずれもマイナーの主音であることを維持できます。
中でも6度を主音とするマイナーこそが最も効率良く機能和声の必要を満たしつつ、マイナーとしての雰囲気も充分だ、と昔の人は判断し、6度を主音とするマイナーこそマイナーの代表選手!
としたのでしょう。

・2度からのマイナー(ドリアン)は、その 6(主音から長6度上の音)が妙な明るさを呈す。

・3度からのマイナー(フリジアン)は、その ♭2 が主音の安定感を危うくしがち。

・6度からのマイナー(エオリアン)は、♭6 がマイナー感を巧く示し、♮2 は主音の安定感を邪魔しない。ちなみに「自然短音階 ナチュラルマイナー」としても知られる音階ですね。

もちろん地域によってはドリアンまたはフリジアンをマイナーの代表選手として選んだ所もあったようです。
アイルランドやスペインなどの民俗音楽を聴くとその雰囲気を味わえるように。

エオリアンは、その5度を根音とする4和音を属七和音とすると、主音が常に主音としての存在感を上手に示せます。

具体的には…
Aエオリアンだとすれば5度の和音は元々 E-7、その3度の音を半音上げれば
E7 となり A音が主音だと強く示すドミナントの和音となります。

Cエオリアンだとすれば5度の和音は元々 G-7、その3度の音を半音上げれば
G7 となり C音が主音だと強く示すドミナントの和音となります。

 

そんなわけで、短調の曲を安定的に短調であらせ続ける為に、

 ・マイナーの代表選手はエオリアン
 ・その主音が主音で在り続ける為には5度の和音をドミナントにするべし

…が定着したようです。

5度の和音をドミナントにするのは機能和声的楽曲での完全終止形の時。
「ドミナント→トニック」という解決の際、ドミナント和音で居る間に、です。

つまり、和声の流れの中で、ドミナント和音で居る間だけ、7度の音を元々の ♭7 でなく ♮7 とするわけです。
その時にふさわしい音階が「ハーモニックマイナー」なわけです。

主音が C だとすれば… (この場合、素のメイジャーは Ebメイジャー、その第6モードとして)

そんな大昔の発明はとてもよく機能し便利だったわけで、現在でも使われ続けています。

・メイジャーとは形も響きも明らかに違う
・7つの転回形のどれをとってもメイジャーの諸モードとカブらない

…なので、ペアレントスケールとして扱うべしなのでしょう。

ところがところが!!
昔のヨーロッパ人にとっては大変な問題が起きました。

 

ハーモニックマイナーの6度と7度の間にある「増2度音程」がメロディーの中に登場すると、昔のヨーロッパの人は嫌な感じがしたそうです。

十字軍の遠征はその数百年前でしたが、キリスト教会の中で中近東を連想させるメロディーが鳴るのは困ったのでしょう(筆者の仮説)。

そこで発明された工夫が「6度の音も半音上げちゃえ!」だったのでしょう。

メロディックマイナーなわけです。
ちゃんとマイナーでありながら中近東っぽい響きとなる心配は回避されました。

ただし、この音階の上半身を下降するような節回しだと、主音は主音として維持されつつもメイジャーに聞こえてしまうのが欠点でした。

そこで生まれた智恵が、
 ・旋律が上行する時はメロディックマイナー
 ・下降時はナチュラルマイナー(=エオリアン)

というルールです。
とはいえ当時の作品群に触れてみると、さほど厳密に縛られてたわけではないのも判ります。
なのに、
のちの時代の音階練習教則本の多くがカタクナにそのルールを守ろうとしてるのが不思議です。
練習時間の配分がアンバランスとなるだけなのに…。

ともあれこの音階も、歴史を経て一般性を得てるし、メイジャーやハーモニックマイナーと比べての独自性も確かです。
なので、ペアレントスケールとして相応しいと言えるのでしょう。

ハーモニックメイジャーってナニモノ?

たとえば、Cメイジャーの曲中に G7(b9) が出て来たとする。
ドミナントな5度の四和音に、9度のテンションノートが付加されるが、ダイアトニックな♮9 でなく半音下げられた♭9 。

そこだけ見れば、同主調の Cハーモニックマイナーに一瞬の転調をして、直前直後での Cメイジャーって調性との行き来の際に生まれるオセンチ感を狙ってるのだな、と思える。

ジャズ理論的に言えば一瞬のモーダルインタチェンジでそんな効果を、或いは
潜在的に期待される♮9 との不協和(心の中での)のもたらすブルーズを狙って、
ってことに。

その時、G7 に対しての6度の音は、転調先が Cハーモニックマイナーならば♭6(テンションとして書けば♭13)となるはず。
ですが、
そこで♮6(♮13)が使われることは多い。

E on G7 ってコードネームに代表される、なんともオセンチな響きとなりますね。
その時に想定し得る音階は、原始的にはまず↓コレでしょう。

これが Cハーモニックメイジャー(和声的長音階)です。

(「原始的には」と書いたのは…もし 5 が♭5 なら Gコンディミって発想が普通の現代だからです。
ちなみに Gオルタードはジャストフィットでないが、強いて Gオルタード♮6って強引な音階を使えばフィットします。E音が♮な限り。)

もう一つ別の例。
サブドミナントマイナーの響きを代表するコードは幾つもある。
その中には、上の例で言えば E音を♮とできるものもある。
その時に相応しい音階の1つが、やはりコレですね。

もちろん、B と E もフラットさせる可能性が他の可能性として考慮されます。
更には、D もフラットさせる場合もあります。

この音階だけを聞くと少し珍妙な印象
「メイジャなの?マイナなの?」
を受けますが、実は昔から多用されてた音階。
これもペアレントとして充分に一般性と独自性を保った形でしょう。

 

ところで、
ハーモニックマイナー(和声的短音階)での、
メイジャーの第6モード(エオリアンないしナチュラルマイナー)からの変形は、
機能和声でのケーデンス時の必要を満たすのが目的でした。

ハーモニックメイジャーでのメイジャーからの変形には、それほどの切実さは有りません。
チョコっと「マイナー色」を滲ます程度のモーダルインタチェンジの実現が目的です。

なので、両者の「ハーモニック」には意味深さの違い、は在ります。
けど、
本稿冒頭の「ヒンズー Hindu」をペアレントスケールの1つと捉えるって過ちほどの重大さでは無いでしょう。

さて、、

ここまで出て来たペアレントのいずれにも言える大切なこと。

・現代これらの音階を基軸とした楽曲造りや演奏が行われうる
・機能和声のトニックの位置に存在しえて、機能に則して変形された音階である

…ってのもペアレントたる所以でしょう。

どのペアレントにも7つの子

というわけでここまでに4種類のペアレントスケール(と呼んでよいだろう音階)を並べました。

大切な事、
どの親も7つのモード(様態)を持ってます。

それぞれの主音を主音としての作曲はできるし、コードスケールとしての応用もできます。

どのモードにも名前は付けられオツムの整理に活かせます。
その網羅的一覧をふくむ詳細は↓

『カエルとアラレで音階名人・第1巻』
 http://bit.ly/KT_kaeruarare1

メイジャー(長調)って名前を詳しく言うと…

4つのペアレントの名前を見ると「メイジャー(長調)」だけ短いですね。
はてさて、、
この次元での捉え方をするなら他の3つと同様な呼び方に統一できそうです。

そこでまずは観察してみましょう、というか、
先に結論を示してから説明しますね。

ブラケット(角張った括弧)は 全音
スラー(円弧型のカッコ)は 半音
ブラケットとスラーの合体型は 増2度

下半身・上半身の4音ずつに分けて見ます。

 下半身が「全全半」なら メイジャー
     「全半全」なら マイナー

 上半身が「全全半」なら メロディック
     「半 増2 半」なら ハーモニック

それらを組み合わせると4つの名前となります。筆者は、
MM、Mm、Hm、HM、という略称を日用してます。

組合せて遊ぼう!

「全全半」を上下に2つくっつけると MM になりました。
「全半全」もそうすると…

これは、Bb MM の第2モード C ドリアン。
MM という明かなペアレントに「内在」するモードなので、
これを強いてペアレントとするメリットは無いでしょう。

さて、研究的興味。
先項には登場しなかった「半全全」を組み合わせに使うとどうでしょうか?

…これくらいにしときましょう。
「半全全」を上半身に使えば、また沢山の… (^_^;

つまり、組合せは膨大無数なわけですが、
その多くは既に4つのペアレントに内在されてます。

色々と組み合わせると面白いので試してみましょう。
この挑戦について詳しくは↓

『カエルとアラレで音階名人・第2巻』
 http://bit.ly/KA_kaeruarare2

気付いておくとよいこと。

「全全半」「全半全」「半全全」「半 増2 半」
 は両端の音程が 完全4度。_①

「全全全」は両端が 増4度。_②

 

①同士の組合せなら接続部分を全音とすると、うまく1オクターブで完結する。
接続部を半音とするとオクターブには半音足りなくなるが、
できあがった結果は偶々巧い具合に8音音階として使えるものとなることもある。
接続部を「同一音」つまり、重ねて接続すると7音目と8音目の間は全音。
その接続法でも色んな音階が導き出せます。
全音ないし半音での接続を ディスジャンクト、重ねての接続を コンジャンクト と呼びます。

 

①と②の組み合わせは、接続部を半音とすれば1オクターブ完結。
ただし、半音の2連続が生じる組合せは、出来上がった音階の色彩の明瞭さを勘案し、
7音音階と捉える甲斐があるか吟味すべし。
2連続半音の真ん中の音が、単に経過音としてしか機能しないこともある。

 

ここまでに登場させなかった
「半全半」=「半音を2つ含み、両端が減4度となる連続する4音」_③
を使うなら、接続部を全音とすればコンディミができあがる。
7音音階としてのペアレントスケールには内在しない8音のシンメトリックスケール。

 

③と②を全音で接続すれば、オルタードないしリディアン♭7th。
いずれも Mm に内在するモード。

 

③をコンジャンクトで繋げればホールトーンスケール。
4つのペアレントには内在しない6音のシンメトリックスケール。

 

「半 増2 半」をコンジャンクトで2回くっつける(合計3つを)と、
シンメトリックオーギュメンティドスケール。

5つ目のペアレント?

これこれっ!

「半 増2 半」2つを全音ディスジャンクトでクッツケ。

ダブルハーモニックなどと呼ばれる、中近東的な響きを実現しやすい音階。
半音の2連続を含むが、タユタウような節回しを上手に作れればむしろ効果的。

この音階に含まれる7つのモードも充分に面白い。
それらも整理して利用可能とする甲斐はあると思ってます。

さてと、、、

なんの話でしたっけ?(笑

…てなわけで、

やっと最初の話に戻ります。
カクカクシカジカこういうわけで、和声的長音階とは…

↑ではなくて、↓だよね

なんですけどね、呼び名は呼び名でしかありませんから、
コミュニケイションの際に困った時には工夫する、
独りで考える時にはどんな名前でもイイ、
ってことでいいと思ってます〜♪

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