アルタス・フルートは「内吹き」推奨って記述をよく見かけますが、
そもそも「内向きな組立方」を推奨、であって、
誤読が一人歩きしてると思います。
だとしたら、
アルタスの笛は素晴らしいので誤解は残念に感じます。
メーカーならびに代理店はどう思ってるのかな?
近いうちに話を訊きに行きたいと思います。
2つの原因が考えられます。
・取説での記述の不親切
・紛らわしい用語、世の中でのその誤用
取説での問題
取説には「こうすべし」と書いてあるが、その理由を述べてません。
誤解が広まる最大要因かと。
簡単に言うと、
『他メーカーが標準的としてる「頭部管と本体の回転方向の位置」それより少し吹き口を奏者側(=内側)に向けて組み立てるとよい』
と書いてあります。
アルタスはスケーリング(音孔の位置とサイズの設計)にイギリスの2人の大先生ウィリアム・ベネット&トレヴァー・ワイの意見を大いに取り入れてます。
そのスケーリングの良い特徴を最も発揮できる構え方は、その2人のしてる構え方なはずです。
その点についてはトレヴァー先生から直接聞きましたから確かです。
彼らは「ロックストロポジションを基本に各自少しアジャスト」といった構えです。
その構えを「オールドフレンチ一派」の典型という記述も見かけますが、果たしてどこまで本当にそうなのか要取材です。
ロックストロ・ポジションとは?
↑に詳しく説明しましたが、掻い摘まむと
・頭部管は「内向き」に設置するが
・本体をその分「外向き」にする結果
・吹き口は普通の向きになる
…という構え方です。
つまりロックストロ・ポジションを知らない人がその組立方を見て
「頭部管がずいぶんと内向きだな~」
と言ってくれれば科学的に冷静で正しいわけですが大抵は、
「ずいぶんと内吹きだな~」
と言ってしまうものです。
内吹き・外吹きとは?
https://saxbaritake.com/flute-uchibuki-sotobuki/
に詳しく説明しましたが、掻い摘まむと、
・吹き口を上下の唇でどれだけ塞ぐか、それ次第で
・音質や音程バランスが変わる、
・どれくらいをヨシとするか、
…ということです。
風音が少なくミッチリと濃密な音色を望む人は、吹き口を閉じ気味にします。
それを内吹きと呼びます。
風音を含んでも、明るく軽やかな音色と遠達性を望む人は、吹き口を開け気味にします。
それを外吹きと呼びます。
古代のフルートだと内吹きを標準としてスケーリングなど設計されているものもあるようです。
現代のフルートは音圧と明るさを「先ずは」目指して作るので、外吹きで音程などバランスを取りやすく、それを「外」と言わず、もはや普通とする設計と思われます。
なのですけどね、
内と外は二律背反なことではなく、
その時々に必要な音色や飛ばし方などに応じて、シームレスに行き来して良いものと思ってます。
さて、
内吹きな人は大抵、頭部管をグッと「内向き」に組み立てるものです。
なので、頭部管の内向きな組立方を見て結果的に
「ずいぶんと内吹きだな~」
という上述の感想が出てくるのは仕方ありません。
ところがロックストロを知ってる人なら
「これだけ内向きってことは、内吹き或いはロックストロな人なのだろう」
という感想を述べるわけです。
組立方の違いと効用
普通というか多数決的な「組立方の説明」は、
・本体の音孔群が空を向くように
・その上で快適に演奏可能な角度に頭部管を差し込む
・キーカップ群の大体の中心が歌口の中心と揃う
…というものです。
ロックストロでは、
・ロッド群(長い棒状部品)が空を向くように
・その上で快適に演奏可能な角度に頭部管を差し込む
・ロッドのいずれかが歌口の中心と揃う
…となります。
素敵な副作用。
その角度にすると、Gis、左親指、Dトリル、D#トリルといった
普通なら地面を向くトーンホールに水滴が引っかかる事件は起きなくなります。
先生方の実際
トレヴァー先生の場合、本体回転方向角度の普通との違いは実際には「ほんのちょっと」です。
つまり取説にあるように「Cis キーカップの中心が吹口向こう側エッジと揃う」その程度です。
ベネット先生も写真で見る限りは同様。
取説は設計理想の根本をちゃんと反映してるわけですね。
☆後日追記_2019/08/03
トレヴァー先生の演奏動画を見て納得。
演奏中の顔面の向きが、ほぼ正面(=地面と鉛直)〜10度ほど上向き。
それゆえ、頭部管の内向け具合はアルタスの取説程度でよく、音孔群も空側を向いてるのでしょう。
結果的に、右手親指と管体の関係は「下・上」で、
上のリンクに書いた「逆Vの字」を作れるような位置関係ではない。
その親指の位置で、解放のC# の運指時に楽器がコチラ側に転がり込まないのがミラクルなミステリー。
___後日追記ここまで
提案します僭越ながら
さて、取説記述にある
・プレイヤーが最も演奏しやすい
…とは、どういうことなのか、を
基本的な設計思想とともに書けるなら誤解は減らせるのではないでしょうか?
・個人差がありますので
…も、それがどういうことなのか、を豆知識的にでも表示できれば誤解は減るでしょう。
もちろん取説の誌面は限られてるので他の手段でユーザに届くようにしてくれてもよいかと。
・アルタスは内吹きでないとちゃんと鳴らない
…といった書き方を、「わかっちゃいるのに」してしまう方も居るくらいです。
ありあまる慎重さで伝えないと妙な誤解ばかりが定着しかねません。
・高音域を低く感じる
…といった声も目にします。
他メーカーの楽器をなにげなく使ってる人達との合奏で、彼らが「うわずってる」のに対してアルタスユーザがマトモな音程だと、、、
「うわずらないでね」
と言ってあげられるといいですね。
他メーカー、特に古い時代のを長く使っていた人だと、
音程バラツキを調整する習慣が染みついてます。
アルタスに乗り換えてしばらくは、その癖のせいで思わぬ方向にズレるといったことも起こるのでしょうね。
色々と書き散らかしましたが、基本的に全て筆者が勝手に思ったことを並べてます。
ですが、
近いうちにちゃんとメーカーさんに取材して、もう少し確からしい内容としてお伝えできるようにしたいと思ってます。
欲しい
…と書いてる筆者はアルタスユーザではありません。
ですが、欲しいな~とは思ってます。
なのですが、、
本当に欲しいのはベネット・トレヴァー系でアルタスに次ぐ新たな逸品、
ゲマインハートの the Revolution
http://www.gemeinhardt.com/gemeinhardt-kgg-generation-therevolution-handmade-flute.html
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