それは、
非日常をアタリマエに切り換えるスイッチ。
筋力を鍛え上げる訓練などでなく、ただのスイッチ。
すでに管楽器を吹ける人や教える立場な人の殆どが忘れてる事がここにはあります。
さぁ、どういうことでしょうか?
楽器を鳴らす為の呼吸は当たり前ではない
・ある目的の為に
・ある程度の量や勢いの呼気を
・ある時間出し続ける
のは、吹奏楽器を奏でない人には非日常的行為です。
・その為に充分な空気を
・瞬時に吸い込み
・必要に応じて留めたり解放したり押し出したり
といったことも同じく。
全くの初心者に楽器の鳴らし方を体験してもらう時に、
・意外と沢山の吸気ができること
・意外と大きな勢いの呼気を出せること
・意外とそれを長く維持できること
などを初体験してもらうのから始めることが
意外と(笑)多いです。
そうしないと鳴り出さない場合がけっこうあるからです。
小学校の夏休みに早起きしたラジオ体操、
それ以来、深呼吸したことが無いって人は結構居るものです。
最近深く吸ったことはあっても、その息を
ゆっくりと吐き出し続けるのはしてない人も多い。
・そんなことが自分にもでき「た」んだ
・管楽器を鳴らすにはそれが必要なんだ
という気づきを得る為の練習なのです。
ひとたび気付いてしまえば、行いとしては容易なことなので
その後の継続的実現に苦労は無いはず。
だから、ただのスイッチなのです。
長さと強さ
生徒にやってもらう時には、解りやすいよう(数年後にでも)に、
極端に違う2種類に分けて伝えます。
口をすぼめてフ~っと息を紙に吹きかけるわけですが…
1)
鼻がつくくらい近づいてよい代わりに、できるだけ長く紙を落とさない
2)
数秒でもよいので、できるだけ離れるのに挑戦
1)は、
ある勢いの呼気を持続する、
そのイメージ獲得と、実際の身体操作の体験を狙います。
管楽器演奏以外に、長く々々息を出し続ける必要は日常生活になかなか無いものです。
それが自分に出来るのを思いだしてもらうことと、
それが管楽器演奏には必要だというのを解ってもらいます。
2)は、
意外と大きな勢いの呼気を出せるのを体験してもらう、のが狙い。
日常生活では誕生日ケーキの蝋燭を消す時くらいにしか使わない勢いです。
管楽器は上達すれば、極小さな勢いの呼気でも鳴らせます。
発音源の操作が精妙になり、効率良く振動させるようになるからです。
巧い人ほどピアニシモをまっすぐ伸ばせますよね。
初心者は、そのスキルは持ってないので大きな勢いの呼気でないと楽器は鳴り出しません。
なので、先ずは「音が出た!」を愉しんで貰うために、
大きな勢いの呼気、
そのイメージと身体操作を体験してもらいます。
ストローを使うなら…
ストローを使うと言う人も居ます。
その人の狙いがナニなのか、訊いてみないと判りませんが、、
私がレッスンでストローを使うとしたら、やはり2種類を使います。
1)
最初にユンケル(滋養強壮ドリンク)に付いてくるような極細のストロー。
2)
マックシェイク、ん、今ならタピオカティーか、に付いてくるような極太の。
1)は、
呼気への反作用としての抵抗が強いので、それに寄りかかるような感覚で、呼気を長~く、しかも真っ直ぐ(=一定の勢いを保って)伸ばすのが容易。
それで先ずは
「一定の量を出し続けている」
という感覚を体験してもらいます。
2)では、
自分の身体操作で、真っ直ぐの呼気を伸ばし続けるのに挑戦させます。
不思議なもので、太いストローを咥えさせると、
声帯を締めて呼気を抑制する、という動作はしにくいようです。
結果的に、呼吸に関する諸筋の「拮抗」を頑張って操作し、
ユックリと少しずつ出し「続ける」、
その実現を工夫するようになります。
仕上げはリコーダーで…
太いストローで体験したことに、未来へ向けて磨きをかけるアイディアです。
リコーダーは、入手しやすい管楽器の中では最も、
弱い(=ユックリとした ≒ 暖かい)呼気で鳴り始める楽器です。
微妙な呼気強さの差にも敏感に結果の音は変化します。
特に低音域の右手領域は、
「丁度よい、息の暖かさ」
よりも少しでも強い息を吹き込むと、すぐにオクターブ上にヒックリ返るか、とんでもない音になります。
発音の瞬間から、ある一定の「小さめな」音圧で伸ばしたいとします。
ユックリと吸気し、一旦留める(とどめる)ゆとりのある場合は、割と簡単にコントロールできます。
ですが、
素早く吸気して直後に鳴らし始めねばならない、とすると難しいものです。
ついつい発音の頭が大きくなってしまいます。
素早い吸気直後の「解放」は勢いの強いタメイキとなりやすいからです。
発音の頭から小さい音で、それ以降一定に伸ばそうとするなら、
・素早い吸気直後の一瞬に
・素早く一瞬だけ「とどめ」
・その直後に必要な量で呼気を始める
・その後、諸筋の拮抗を保ちながら真っ直ぐを保つ
…といった、素早さと緊張の連続が必要なわけです。
どの管楽器でも上達すると必要になる身体操作です。
初心者のうちに、イカニモ簡単なリコーダーでインスタントに体験できるのは良いことだと思います。
猛烈な強靱さではなくて…
これらの練習で体験できるのは、管楽器演奏に必要な身体操作の基礎です。
初心者がこれらの練習に触れた時には解らなくてよいが、上達すると見えてくることがあります。
・重たい楽器を持って立ち続ける以上には、相撲取りのように大きな筋出力は必要ではない。
・それよりも、身体の各地が演奏の必要に応じて「丁度よい位置」にあるよう、関わる諸筋の拮抗を精妙に操作できることが大切。
・その為には、柔らかさ・素早さ・微細さ、を目指して筋肉と神経の繋がりを育てる。
のがよいのでしょうね。
「チカラぬいて〜」に惑わないよ〜に〜
蛇足ですが、、よく耳にすること。
「チカラを抜いて~、チカラは要らないよ〜、チカラ抜けばなんでも巧くいくから~」
騙されちゃいけません。
チカラは、無いところからは抜けません。
在るから抜けるんです。
必要充分以上に育てた筋力があればこそ、
チカラを抜いて楽々と操作できます。
もちろん、それを一定時間維持する持久力も含め、必要充分であれば佳いわけです。
ある作業に必要な筋出力、その周辺で必要の無い筋出力が無意識に伴うと、
本来必要な筋出力の効果を損ねる場合があります。
その場合に言うべきことは、
「要らないところからはチカラを抜こうね~」
です。
詳しく言うならば、
「どこを抜いて、どこはどれだけ入れると丁度よくなるか、考えてみよ~」
です。
でね、「とにかく抜いて~」って人が口にしやすいことなんだけど、、
「楽器は、チカラを抜けば誰でも自然に操作できるようにできてるんだから…」
そんなことは無いので練習を重ねる、、のは皆さん体験済のとおり。
意外とその手の言説に惑わされて、練習にかける時間を信じられない人が発生するものですが、、
はい、それは各自の自由です。
入口の大切さ、バランスの大切さ
話を戻しますね。
「ただのスイッチ」と冒頭に書きました。
けれど、捉え方次第で実は意味深な練習なわけですね。
もちろん初心者自身がそれを理解出来なくてもよいです。
初心者にとっては、その時に必要なスイッチで充分。
数年後に「あぁ、そうか~」と思えれば、その時また上達のスイッチになります。
莫大な筋出力よりも、
関わる各方向の諸筋(必要充分な出力は備えたとして)の「拮抗」、
それを精妙に操作できるようにすること、
と、必要充分な持久力。
それらが管楽器演奏に必要なチカラなのでしょう。
そういった理解にやがて辿り着くのに大切な入口となる練習
とも言えるわけです。
といった心持ちで臨むか否か、で未来は変わるという練習でもあります。
殊に、指導者が如何に理解して伝えるか、は大切なのでしょう。
ツマラン、意味が無い
と言えば本当に無意味となります。
先人達が思いついて伝えてきた手法。
そこになにかしら意味を見つける探究心は、
彼らが意図した通りでなくとも、有意義とタノシミに繋がると思います。
**********
ところで、、
リコーダーね、アウロスのが一番安心、とは思ってるのだが、
ゼンオンの探究心というか冒険心も捨てたものではない。
昨年でた意欲的最新作が↓、、ん〜、、
設計的に素晴らしいのは体感できる。が、
製造的に難しいのか、個体差は大きいようで。
うむ、プラ製なのに個体差ってとこに挑戦的意欲を感じてしまう。。
あ、ケースはとにかくカッコいい!
その点1世代前の↓はとてもよくバランスとれてたかと。
↑と並行して出し続けてくれてもいいのにな〜
コメント
私はリコーダー専門ですが、アウロスよりもヤマハの方が好きです。特にバイオマス樹脂のがオススメです。
どのメーカーも機種もそれぞれに一長一短ですよね。
私もバイオマスの楽器はすぐに買いましたよ。
意外と硬質で明瞭な音は扱いやすくて佳いですよね。
ヤマハは基準ピッチがだいぶ高いので、かなり抜いて使うことになるのが居心地ビミョ〜って感じますが、気にしなければ問題無し(^^)v