ありきたりな音階練習を色々と改造するのを生徒と愉みました、ってなレッスンメモです。
ビバッピーでジャズっぽい旋律を思いついたり、難なく演奏できるようになるのを目指しての工夫です
原型の提示から始めて、少しずつ改造を深めていきます。
よくある音階練習パターン
こんなのよく見ますよね
ハ長調(C Melodic Major)の7音を順次進行と3度跳躍で行きつ戻りつベッタリ触るパターン。
単純ながら意外と運指のバラツキを見つけやすい。
書いてあるのは1オクターブだけですが、パターンをそのまま続けて自分の楽器の全音域で触ります。もちろん全てのキーに移調しても。
挟み込み型アプローチ、臨時記号=転調
最もシンプルな改造例。
1段目_
1&3拍目アタマをターゲットノートとして、その直前を
「ターゲットの半音下からのアプローチノート=導音」とします。
もともと半音下の所(赤色)は変更なし。
結果として、ターゲットに向かって
半音下と「音階内の2度(長短問わず)上の音」と
で挟み込む形でのアプローチとなります。
ちなみに、
「上から」のアプローチは、
全音(長2度)上でもアプローチの効果(不協和→協和への解決)は充分かつ明朗な響き。
ですが、
半音(短2度)はエグくてショッキングな事件を起こすことがあります。
けれど、
音階内音がもともと半音(短2度)上な箇所(緑色)は半音上でも明朗さに影響はありません。
※↓↓↓「音階内音」とは、↓↓↓※(文中注釈ハジマリ)
「その時を支配してる音階の中の音」のこと。
ダイアトニックって言葉をその意味で使ってもよいと筆者は思ってますが、それをクラシカルな長調のみを指すと思ってる人も多いので避けておきます。
※↑↑↑↑↑※(文中注釈オワリ)
「下から」だと、
長2度だとアプローチ感は幾分か弱まり、短2度と比べるならギクシャクと垢抜けない感じ。
短2度(=半音)に変えることでアプローチ感は強まり、聞こえ方もスムーズに。
※↓↓↓↓↓※
この「変える」は一瞬の転調を生みます。
それが洒落て聞こえる理由。
「臨時記号とは一瞬であれ一時的であれ転調を意味するもの」
と思ってよいです(調号が適切な限り)。
で、
拍のアタマかウラか、どっちに付くかでも影響は変わります。
それ、本稿ではけっこう大事かも。
※↑↑↑↑↑※
ターゲットな和声音に対して、
・半音下の非和声音からアプローチする場合の一瞬転調
と、
・半音上からな時の一瞬転調
この2つね、
傾向として、後者の方がショックが大きい(距離の大きな転調感)場合が多い。
より「妙な感じに聞こえやすい」ってこと。
前者は
・後続和音にとってのドミナントの3度
・後続和音をディミニッシュト化したものの3度か5度
として機能するケースが多い。
いずれも大抵スムーズで穏やかな転調感。
後者は
・後続和音にとってのドミナントの♭7度
の時は穏やかだが、
・後続和音にとって裏ドミナントの1or5度
の時には結構エグくなります。
なので、
「上から」は、
「全音であれ半音であれ2度上の音階内音」
で、
「下から」は、
「とにかく半音下。音階内音が全音下な時は半音に変更」
って組み合わせが先ずは安全で一般的。挟み込み型でなくとも。
話をもとに戻しますね、
2段目_
ターゲットの位置は同じ。
その1拍前(2&4拍目アタマ)を半音下からのアプローチとします。
赤色は、もともと半音下の音。
緑色は、もともと半音上の音で、その箇所では「上下とも半音での」アプローチングとなります。
3段目_
ターゲットの位置は同じ。
「下から」は音階内音のままに戻して、、
「上から」を「とにかく半音っ!!」に変更します。
赤色は、もともと半音上。
緑色は、もともと半音下。
「下から_とにかく半音」と比べるとこの場合は、
・転調感はより明瞭
・既聴感の少ない妙な響きの箇所も
妙な響きとなるのは緑色の音の直後です。
その気づきが次の奇妙な旅へ誘ってくれます。
奇妙な旅に出てみる
「上下とも、とにかく半音っっ!!!」
赤か緑は、もともと音階内音。
赤_自然
緑_ちょっと妙
赤も緑もなく上下両方臨時記号_けっこう妙
もともとの音階内音に居る時間がだいぶ減るので調性感が希薄に。
自分が何処にいるのか判りにくくなりがち、なので、
本来のキーの響きを想い続ける意志の力と勇気が不可欠。
だから旅なんて言ったわけ。
次は楽ちん滑り台に乗ってみましょう。
楽珍スベリ台、か!?
半音階的経過音、、クラシカルな非和声音の用語で言えば。
ジャズっぽい言葉だとクロマチックアプローチ。
隣接する音階内音の音程が全音の時、その隙間に半音を挟み込んで滑り台にします。
音階の中で全音の箇所をより滑らかに繋げるってぇな。
なのですが、、
音階の中でもともと半音の箇所は、隙間が無いので挟み込めません。
仕方ないのでそこは挟み込み型アプローチとします。
赤くした箇所。
ん~、、なんかモヤモヤしますね~
そこでっ!!
赤いとこで、アプローチノートの前に、それをターゲットとする新たなアプローチノートを追加するって発想。
「もともと半音上(下)の音」の前に更に半音上(下)のを追加。
もともと…な音は必ず音階内音なので、新たなアプローチの音に臨時記号が付きます。
他の箇所と違い、拍のアタマに音階外音が来るので、キコエも運指も慣れが要るでしょう。
とはいえ、
下降形の時その音は原始的なブルーノートと一致し、既聴感が高いのでさほど不自然には感じないでしょう。
ダブルクロマチック、ディレイドレゾルブ、、
って言葉があります。
Double chromatic approach
と
Delayed resolution
ディレイド・リゾリューション、ですね。
日本語ではレゾルブって言うようですね。
で、英語と日本語で指すモノは違うようです。
日本語の指すソレを英語では別の言葉で指してますし。
その言葉達、捉え方と実態にモヤモヤが多いので解き明かしを、、別稿でゆっくりしますね。
本当はココに書きたいのですが、練習法紹介に集中したいので機会を改めます。
タイムシフト的な…、と逆行・反転
ところで時系列的改造。
フレーズの始まる位置をズラしましょう。
テレビやラジオをリアタイじゃなく鑑賞するのをタイムシフトって言いますよね。
リズム上のズラしもそう言っていい、のかな?
8分音符を8分3連に置き換えてスリップさせるとかもタイムシフトって言いそうだから、「的な」程度にしときます(^_^;
先ずは8分音符ぶん&4分音符ぶん前倒し。
次にそれらを
2拍ごとのシェイプはそのままに下降形に。
上下ひっくり返して下降形にするよりも、2拍ごとのアタマで運指複雑度が上がる場合がある、ので試す甲斐あり。
これね、同じフレーズをズラしただけとはいえ、
ハーモニーをつけてみると変わるわけですよコード進行が。
だから「使える場所」の連想も変わってくる。
不思議なことに運指の難易度も変わる。
「難しいな~」って思ってたとこもタイムシフトすると簡単になったり。
で、素に戻してみると難しくなくなってたり。そんな効果もあります。
次に「逆行」シリーズ
2拍ごとに前後をひっくり返してみると…
(小玉はプロセス理解の助けとして。実際は無視してよいです)
「反転」シリーズ。
2拍ごとに上下をひっくり返してみると…
あ! 前後逆行の下降形 と 上下反転の下降形は同じですね。
なので後者は練習から省いてよし(^^)
「反転&逆行」
これは結局、原型と同じこととなります。
ん? 下降形でも同じ、かな?
おお、やはり固有な形が出ましたね、試してよかった(^^)
で、
タイムシフトと逆行・反転で作ったパターンそれぞれにもアプローチング改造を施せます。
どうぞ御自分で膨らませてみてください。
さてさて、
もすこし長めのフレーズでも実験を進めましょう。
よくある音階練パターン_4拍パターン版
ありきたりな素の形↓(括弧で囲ったのは跳躍箇所)
実を言うとコレね、タファネル・ゴーベール(フルートで皆やる音階練習)1番2小節目4拍目を、覚え間違えてこうやってましたワタクシ(^_^;
もともとこんな形↓
この形って意外とね、跳躍のとこよりも4拍目~1拍目「折り返し」が乱れやすいのが練習ポイント。
で、間違えてた結果の偶々ですが、
4拍目が次小節アタマの音を上下から挟み込んでるとこが練習の形としてイケてます。
そこを使ってジャズっぽい「アプローチング」の練習を作りやすい。
ためしに、跳躍ポイントをもひとつズラして↓みたいにしてみると
う~ん、所々面白いメロディーになるけど、練習パターンとしてはどうかなぁ、、
そんなモヤモヤって何処から生まれるかっていうと、、
1音ずつにハーモナイズしてみると、和声進行として魅力的かどうかってとこみたい、、ん~、、それ、長くなるんで別の機会にゆっくり書きます。
ともあれ、
次小節アタマをターゲットとして強い和声進行を感じさせるのは「A」でしょう。ビバッピーな選択と言えます。
それを改造の素材としましょう。1オクターブぶんを並べて、これ以降の原型とします。
まずは下から、そして上から
小節アタマの音をターゲットとして、直前の4拍目ウラを半音下の導音とするアプローチング。
そこに一瞬、セカンダリードミナント或いはディミニッシュトコードの響きを起こす気持で。
もともと半音のとこはそのまま。ソコが意外と頭の使いどころ。
素の形を上下ひっくり返す。これは単純。
小節アタマをターゲットとして、直前を半音上からのアプローチノートと。
なかなかコレは使わんだろって響きの箇所もあるが、頭の体操のつもりで。
むしろクロマチックな階名唱をイメージするとソルフェージュの練習としてイイ線いってるかも。
小節アタマのターゲットに向けて、4拍目アタマを「とにかく半音下」からのアプローチ
上下からとにかく半音!ってのも強いて書いてみると…
実際のメロディとしては、なかなか有り得なそうな箇所もありますね。
ま、そこはアタマの体操と割り切りましょう。いつかなにか役立つ時が来るかもしれませんし。
こんどは、
01 のパターン(1小節4拍が山形のシェイプ)をそのままに下降形にしてみると…
小節末尾から半音下降のアプローチングとすると…
ん~、悪くはないけど、、練習シーケンスの中での新鮮味に欠けるというか、挟み込みアプローチ練習ってとこを深めたいし…、
というわけで
「各小節は山形シェイプだけど降りてく」ってのを保ちつつ改良してみると↓
じゃあってんで、小節末尾をアプローチノートとして…、あ! ついでに2拍目ウラを半音上の刺繍音とかするってぇと↓
2拍目ウラの刺繍音を半音下に変えると、楽器の練習としてはいいかも↓
03abc を上下ひっくり返すと…↓
これね、まだまだいくらでもバリエイションを作れるわけですが、キリがないのでこれくらいにしときます。後半戦のでも半音階的経過音を適用してみたり…
どうぞ御自分でバリエイションを増やしてください。
作り進めるにあたって学んでおくべきこと。
アプローチノートってなんなのか、何種類どんな形があるのか。それはジャズな世界の言葉です。
非和声音ってなんなのか、何種…以下同文。それはクラシックな世界の言葉です。
両者は似てるようでだいぶ違うものですが、いずれもどんなジャンルであれメロディ造りで使えるものです。
そうした興味と勉強を通して、音階練習が単に楽器操作術の為でなく、作曲やアドリブの世界を拡げてくれます。
それはまた、誰かが作った旋律を演奏する場合にも、読解力と表現力を拡げてくれるはずです。
Wikipedia によく纏まってるんで御参照オススメ↓
Wikipedia 非和声音
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%9E%E5%92%8C%E5%A3%B0%E9%9F%B3
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