フルート運指のキモはホールトーンスケールに在り?_ダイアトニック・スケールってどういうこと?

運指スピードアップの壁になる諸要素を万遍なく含む音階。
仲良くすると爆速への近道が見えるんじゃないかな?

これは、子供の頃から順調にフルートと仲良くしてきた人には
「へ? ナニが難しいの?」
ってことだと思います。

筆者は長らくサックスばかりを吹いてきました。
運指が猛烈に簡単な楽器です。
歳とってからフルートの持ち替えを志すと、クロスフィンガリングと右手薬指・小指がどうしても壁になります。
中年以上からフルートを始めた人にも同じく壁となる所でしょう。

壁は何種類もありますが、そのうちの1つの克服策を考えてみましたので一緒にレッツトライよろしくです♪


ついでに「ダイアトニック・スケール」って言葉にありがちな誤解と思い込みを解きほぐすことにも筆を費やしたので是非ご覧下さい。

ホールトーン・スケール

はい、コレが「壁を万遍なく含む音階」です。
日本語だと「全音音階」ですね。

実はトレヴァー・ワイ先生に、この音階と仲良くしなさいと言われたがピンと来てませんでした。

ところが、バンドのメンバーがこの音階ばかりな曲を書いてきやがりまして…
もう七転八倒なわけですわ(^_^;

なぜ難しいんだろう?
分析するまでもありません。
見事に難所ばかりを万遍なく含んでるからです。

もちろん、トリル運指などを応用したズルッコをすれば簡単になります。
ですが、
よい音色と音程を出来る限り保ちたいものです。

正規運指でできるはずのところでズルをするとトレヴァー先生は走ってきて手の甲を叩きます。
それはもう厳然たる教えなわけで、壁には立ち向かわねばなりません。

というか、
より困難なことをできるようになっておけば、
より簡単なことはもっと簡単になるはずですから。
それはクラリネットの運指でも同じですね。

さて、ホールトーン・スケールとは?

全ての音程間隔が「全音」ばかりで並べられ、6音で1オクターブが完結する音階です。

12種の音高いずれから始めても同じ「形」になります。
いわゆる長音階・短音階(ダイアトニック・スケールと呼ばれる所の)のように、全音と半音を「ある順番に」組み合わせたものではないので。

実際にはたった2種類しかありません。
 ・A型(A音を含むから)
 ・B型(B音を含むわけでないが区別の便宜上)
と呼ぶ事にしましょう。

A型はとても簡単な運指ばかりでできてます。
B型が壁の塊です。

ダイアトニックという言葉の意味・語源

ここでちょいと知識の話に寄り道。

「全音音階」は「ダイアトニック・スケール」の訳語「全音階」と混同されやすく要注意。

「ダイアトニックスケール」とは…
簡単には「長音階のこと」と言われてます。
難しく言うなら
「全音2つと半音1つから成るテトラトニック(四音音階)を2つを、ディスジャンクト(分離型)接続で7音音階としたもの」
で、
「ある音や音群がダイアトニックである」とは
「ある長音階に含まれる音群に一致してる」と解釈されます。
が、
現代に於いては「その時に中核を成す音階や音群(長音階に限らず)に一致してる」こと、
として使われる場面が多く、そう受けとめてよいと筆者は思ってます。
厳密にダイアトニックの語意を尊重するなら
「その音や音群は、その時に中核を成す音階や音群にインナーである」
と言うべきなのでしょうが。

さてさて、その語源についてヒトクサリ…
 

ダイアトニックとは元々、ギリシャの4弦の竪琴の調律法の一つで、
完全4度の2つの音の間を埋めるもう2つの音が、
2つの全音(トノス)と1つの半音(リンマ)
を用いて配置されたものをそう呼びました。

4本の弦=テトラコルド、テトラコード
元々は「4本弦の琴」それ自体の名前でしたが、
完全4度に配置された4つの音程をテトラコードと呼ぶ語源となりました。
テトラトーンとかテトラトニックという言葉もありますね。
それはテトラコードに相当する4つの音高って意味です。

「トニック」と言うと「主音」的な意味合いも感じ易いですが、単に「音」あるいは「音高」という意味と筆者は捉えてます。

4弦琴の調弦法のバラエティを
ギリシャ的発音に近く書くなら…

 ・ディアトノン
  全音2つと半音1つで構成されたテトラコード
   実際には ラソファミ に近い
    邦訳すれば全音階的テトラコード

 ・クロマチコン
  半音2つと増2度(短3度では無いぞよ)で…
   ラ ソ♭ ファ ミ
    半音階的テトラコード

 ・エンハルモニオン
  重増2度(平均律の鍵盤上では長3度と同じですけど)と半音未満x2
   ラ ソdouble♭ 低いファ ミ
    四分音階的テトラコード

のちにディアトノンを2つ組み合わせたような7音音階の使用が一般的になりました。
ディアトノン(英語的に言えばダイアトニック)に由来した形なので、由来の名前をそのままにダイアトニックな音階と呼ぶようになったそうです。

そこら辺の経緯は↓に詳しいです
https://en.wikipedia.org/wiki/Octave_species

ちなみに「半音未満」の音程については、
トノス(全音)リンマ(半音)に対して「カンマ」と呼ぶ、
という説明を見かけますが、この3つの単語は本来ピタゴラスの音階探求を説明する時に使われる言葉です。
果たして、テトラコルドの説明にそのまま適用してよいか、筆者はまだ自信ありません。

ところで、

「2つのテトラコードを組み合わせたもので、ギリシャ語でダイアは2、つまり2つの主音があるからダイアトニック」
って説明を見かけますが、、、

ギリシャ語の「2」は
「δύο」(ディオ)
で、英語の「duo」の語源。
古代ギリシャではデュオと発音してたらしい。

ラテン語の接頭辞「2つの」は「duo-」か「bi-」。
後者は英語にもそのまま生きてますね。
ギリシャ語では「di-」。

なので、

ディアトノンの「ディア」に「2」という意味合いは無いと思われます。
全音を2つ含むってとこに落とし穴がありますね。

英語の接頭語「dia-」に相当する、その語源と思われるギリシャ語は同じく「dia-」で、
「…を横切って」「…を横断して」
「…し通す」「すっかり…し切る」
「完全な…」「完全に…」

といった意味合い。
その意味のギリシャ語を英語に置き換えれば through だそうです。

なので、昔の日本の音楽学者が訳語として「全音階」と当てたのは納得できます。
「2つの主音があるから」は間違いなのも明らかです。

ですが古代ギリシャ人が、2つのトノス(全音)を含むテトラコードを何故ディアトノンと呼んだか、筆者はまだ理解できてません。

ともあれ、ディアトノンに由来する7音音階「だから」ディアトノンつまりダイアトニックと呼ぶようになったという経緯が正しいようです。

というわけで、
全音音階と全音階(ホールトーン・スケールとダイアトニック・スケール)は別の言葉なので混乱しないようにしましょう、ってことです。

はい、寄り道ここまで。

音階練習のキモを確認

いざ練習っ!の前に音階練習の要点を確認しておきます。

 ・音高遷移の瞬間に雑音を含まないこと
 ・その際、音色・響きに大きな差を生まないこと
 ・順次進行でコロバないこと
 ・「折り返し」やその繰り返しでテンポ・リズムを崩さないこと
 ・全ての音域で均等に行えるのを目指すこと
 ・音階内の全ての音から平等にスタートできること
 ・先ずは順次進行、次に跳躍進行・アルペジオ
 ・順次進行練習の段階で様々な折り返し・繰り返しに習熟すること

これらを効率良く体験できるように練習パターンを組むのが賢い練習法です。
その結果、ナニの獲得を目指すのかってことはこのサイトでも何度も書いてるんで今日は省いておきます。

意外と盲点ですが、
「コロバないこと」はスピードアップにとても重要です。
その点の練習法については↓にまとめたので御参照ください『爆奏!速弾き速吹き名人』
 http://bit.ly/KT_hayabiki-hayabuki

いざ練習っ!

はい、お待たせしました、以下が本日の練習パターンです。

1.1 ~ 1.4
実はこれらは全て「同じこと」です。
が、不思議なもので、
同じことでも、リズムとの位置関係や「喋り始めの形」が違うだけで難易度は変わります。

同じ形でも「より簡単なもの」を、楽珍っ!と思いながら繰りかえすことで、いつのまにか「難しいと思える形」も簡単になります。
なので4パターンを書き出しました。

繰り返し記号の間は何回でも繰りかえしましょう。
左半分を、半音ずつ上げながら全音域で触ります。
右半分は「とりあえず」な音域で書いてあります。
自分の出せる最高音からこのパターンで半音ずつ降りましょう。

半音ずつズラしていくと、A型とB型とに交互に触れます。
それ重要です。
B型ばかりで練習を組むとストレスが溜まります。
身体にとっても。
腱鞘炎を招きかねないので、A・Bを行き来するのは健康的です。

『繰り返しは3回以上失敗しないのを目指す』

これも意外とキモです。
同じことを2回はできても3回目でツマヅクことが多いです。
つまり、3回以上続けてできれば、
「意識的操作を無意識化できた」
と言えますので。

先程のは、
隣り合った3音間の習熟を目指しましたが、今度は
隣り合った4音間を滑らかにしましょう。

見た目以上にイジワルです。
イジワルな動きほど練習する甲斐がありますね。

次は、隣り合った5音間です。

さて、もうお気づきかと…
ホールトーン・スケールは、ここまでくればそのパターンを更に拡げる必要はさほどありません。
なので、仕上げのパターンに進みます。

(あ、間違え発見、、4.1 の右半分、下行→上行になってますが、規則性からすると 上行→下行が正解です、、けど、どっちでもイイです(^_^; )

ここまでが順次進行の練習です。
この先、跳躍・アルペジオの練習に進むわけですが、
ホールトーン・スケールは

「順次進行こそ難しい」

ので、それをクリアする練習の紹介としてはここまでとしておきます。

なかなかイジワルな課題が並びましたね。
でも、こういった練習が好きでたまらない!って人は是非↓も覗いてみてください。
筆者のマニアックな音階練習本の数々を並べてますので。

「カエルとアラレで音階名人シリーズぞろりと御紹介」
 https://bit.ly/kaeruarareonmop

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